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異界のストーリーテラー  作者: バルバダイン
第一部 「イダヴェル戦乱編」
24/65

第二十二話 「ジレコ伯爵という人」

久々更新です!

仕事はまだまだ忙しいですが、ペースつかめてきたので頑張ります。

見捨てないでください^^;

 サレイマン伯爵領は無人に近かった。

 避難は順調で、主に東に移動し領内の東部、一部はヴィクセン伯爵領に避難したらしい。

 一部寒村で遅れているところがあったので、準備されていた予備の馬車を渡して避難指示をした。

 道中の糧食に加え、路銀も支給する。

 冬の移動になるので衣服や暖をとるための燃料も充分渡す。

 バルディスは比較的温暖な気候なので助かった。

 これが北部のバンディオルフやロガランドならば厳しかったかもしれない。

 でもあれか、北国に冬侵攻してくるバカはいないな。

 特にイダヴェルは年間平均気温にすれば20度近いのではないだろうか。

 もし、バルディスを陥落させてマガニア、そしてバンディオルフやロガランドまで攻めたとして冬期反攻されたらきっと兵がもたない。

 稀代の戦略家として聞こえるバシュトナークは、そのあたりどう考えていたのだろうか。

 彼の覇業が成ることは結局なかったのだが、単純に興味はある。

 このメルレンという人物は果たしてバシュトナークと邂逅することはあるのだろうか。

 おそらくはないだろう。

 それならば作中で語られるはずだし、皇帝陣頭指揮の戦、または直接まみえるほどのイベントならば何かしらの事件にはなるだろう。

 まああんな恐ろしいヤツと直接会うなんて事態は全力で遠慮したい。

 弱いと見れば斬り捨てるだろうし、強いと思えば真剣勝負のうえで倒そうとするだろう。

 どっちにしろ死にエンドしか思い浮かばない。


 さて、バシュトナークの話が出たところで、ちょいとグランドストーリーに触れよう。

 このお話は基本的にイダヴェルのバルディス侵攻とそれに付随したいくつかの戦いが主な舞台だった。

 それと前後する時代のそれぞれの国の人物の物語を通して大戦が描かれた。

 だいたいは大戦数年前から勃発直前が多く、たびたび語られるダルタイシュ・セルワーの登場をもって大戦の狼煙があがる。

 バシュトナークは主人公として登場することはないので、彼の目線で語られることはほとんどない。

 強烈なカリスマと圧倒的な武力という以外は謎が多い。

 彼は他国に向け大々的な侵攻をするのだが、これについての動機は実はよくわかっていない。

 イダヴェルはもともとは肥沃な黒土を抱える豊かな農業国であり、穏健なバルディスと国境を接し、近隣のミクラガルド、コルベインとも良好な関係を続けてきており、武力侵攻をもって解決すべき課題や危機などは存在しなかった。

 なぜか。

 結局語られることはなかったのだが、ダルタイシュはこう推測していた。

 曰く「強いからじゃないのか?」

 

 どういうことかというと、大人しく王様をやるには能力が高すぎ、能力に見合った野心も相応に持っていたからだ、と。

 ダルタイシュはバシュトナークに対抗した理由を「最強って名乗ってみたい」と語った。

 バシュトナークも同じだというのだ。

 要は腕試しだと。生まれてきたからには持てる力を振り絞って生き抜いてみたいと考えるのはある意味自然だ。

 そういう考えを持った奴がたまたま有力な国の玉座についただけだ。

 だから自分の武力、知力、勇気、運、地位、財力といった全てを駆使してみたくなった。

 ただそれだけのことだと。


 過去戦乱を起こした者はもう少し欲望と危機感があった。

 財政の傾きや領土への野心、民族や宗教による対立など。

 バシュトナークにはそれが感じられなかった。

 純粋に覇業へと邁進する子供のようだったとも言われる。

 それは動機があまりにも単純で幼稚だったせいかもしれない。

 真実はわからないのだが。


 いずれにせよ彼らが華やかに活躍するのは今より少し未来の話。

 そしてここで駆けずり回っている僕にはいまいち縁遠いことに思えてしまう。

 作者なのにね。


 

 問題のジレコ伯爵領に入る。

 領の境界には一応物見が立っていたので、伯爵への伝令をお願いしておく。

 開戦前とはいえ準戦時なのでいちいち表敬訪問しないけど許してね、という内容のご挨拶を添えて。

 基本礼儀さえ弁えとけばそんなに問題のある人物ではない。

 謹厳な武人という風格のある人だった。

 ただ今回はイダヴェルによって自領がほぼズタボロにされてしまうのがまずい。

 これはウイラード辺境伯も同じなのだが、王様からいかに戦後の速やかな復興に対して全面的な協力と支援を確約されていたとしても、伝来の土地が酷いことになるというのに何もせずに撤退というのはどうにも承服しかねる。

 領民の手前もある。

 戦災に対して一番の被害を直接蒙る民衆にとって、領主が見捨てて尻尾を巻いたように思われては面目が立たない。

 よくわかる。

 しかしあきらかに無駄死にになる。

 ゆえに僕は無い頭で必死に練り上げたのだ。

 大軍のイダヴェルが侵攻上、全軍をもって攻めなければならないポイント。

 それはやはり王都ヌクレヴァータ以外にありえない。

 ここに持てる限りの戦力を一挙に投入するという基本戦略は揺るがせない。

 そのためには無駄は極力省く。

 両諸侯の戦力に壊滅的なダメージがあっては仕上げに支障を来たす。

 うーん、やっぱ伝令より直接行って説得した方がいいかなあ。

 なるべく早く国境付近の会敵予想ポイントで準備もしたいんだが・・・


 しばし悩んで再度伝令を出す。

 『陛下の』御意志をお伝えするため、やはりお伺いしますと。

 隊はそのまま進行して、少数で駆ければ問題ないと思ったのだ。

 ただし、新参のエルフはなめられてっからなあ。

 誰か印象の良くなるヤツを連れていかないと。

 ダナードは自分が離れている間の隊を統括するから無理。

 バクスターは品はいいんだが、王都騎士団の千人隊長ではややインパクトに欠ける。

 ダンスタンやテスカはまずい。見た目ほぼゴロツキだし。

 と、なると・・・

 やはりサラか。

 ヴィクセン伯爵令嬢となれば充分ネームバリューはある。

 ジレコ伯爵、ウイラード辺境伯も無碍にはできない。

 いくら僕が『陛下の名代』と気張ってみても、なかなか新参のエルフの話なんかまともに聞かない。

 あとおっさんになっても自分よりイケメンは本能的に忌避する傾向があるのだ!(実際は知らん)

 そして同じく本能的に美人には甘い!

 例え中身がおっかないねえちゃんでも。


 はーいみんな集合。

「後発の伝令が着いた頃を見計らって出発します。隊の指揮はダナードに任せます」

「了解っス」

「人選ですが、サラを連れていきます」

 サラは伯爵令嬢なので、様をつけるかは微妙だが、部下でもあるし呼び捨て。

「あとはそれぞれのお付でもある、アルタイとランベールも同道させます」

 まあいつものメンバーだ。

「残りは予定通り進軍し、敵侵攻ルート上にある村や街はできるだけ避難の確認と誘導を続けてください」

 するとはしーっこの方からリュタンがおずおずと手を挙げる。

「あのぅ、わたしはいけませんか?」

 人間爆弾(セルフボマー)のお披露目はしてしまっているので、いまさら連れていっても驚かれはしないだろうが、いい顔はしないだろう。

「そうですねー、少数での移動になりますし危険がないわけではありません。隊と行動をともにしたほうが安全だと思います」

「はい・・・そうですよね・・・」

 なにやら消沈している。

 輜重隊の馬車の連中は結構気にかけてくれているようだったので安心していたけど、うまくいっていないのかな。

 とりあえず明朝出発に決定して解散し準備にかかる。

 準備といっても細かい申し送りをダナードにするくらいで、パッキングなどはほとんどない。

 せいぜい一泊二日だ。


 リュタンのところに行ってみる。

「あ、メルレンさん」

「様子がおかしかったので来てみました。なにかありましたか?」

「いえ・・・」

 力なく返事するリュタン。ふむ。

「ここの連中が冷たくあたるとか?」

「いえいえ!皆さんよくしてくれます」

 となると・・・

「ひょっとして寂しいとか?」

「えっ!?えええ?はい、いえ・・・」

 図星か。参ったな。

「わたしはどうしても迷惑な人間だという印象がついてまわります。自業自得なので仕方ないのですが、分け隔てなく接してくださるのはメルレン様達くらいなのです」

 そうか、こいつも苦労してんだよなあ。設定考えたの僕だけど。

「あとですね、誠に言いにくいんですが・・・」

「なんでしょう?」

「その隊の皆さん、とてもいい方なんですが、そのなんていうか」

「?」

「怖いんです!顔が!」

 あああ、言っちゃった。

 輜重隊は補給を担当する部署だが、決して非戦闘員が任についているわけではない。

 どちらかといえば戦闘状態に入った場合、狙われる可能性が本陣に次いで高い。

 自然と兵は精強な者になる。

 ここメルレン隊でもテスカ百人隊のとりわけごついのが輜重隊になっている。

 まとめ役の隊長なんか食人鬼(オーガ)と格闘戦できそうにすら見える。

 えーと日本語訳すると、コワモテの集団に取り残されるのはイヤだから連れてけと。

 仕方ない。


『リュタンが暴走した時に止められるのはわたしだけなので』

 安全のために連れていく、ということにした。

 コワモテの輜重隊が若干ほっとしてたのを僕は見逃さない。

 ううむ、爆裂どじっ娘キャラって需要あるかと思ったんだが、実際爆裂されると無理ってことか。

 勉強になるなあ。



 びっくり魔物遭遇イベントなどもなくジレコ伯の屋敷に着く。

 そう街道にモンスターが登場することはない。

 日本で言うとクマに遭遇する程度か?

 ゴブリンの出没情報や、襲撃があると近隣ではお茶の間の話題になってしまうレベルだ。

 ましてドラゴンとかいうと・・・ええと・・・ツチノコ?いやなんか違うな。

 それぞれの魔物にだいたい生息域があり、人里に近く襲撃やその危険性がある場合は、おなじみ冒険者によって駆除されるが、それ以外は財宝だの素材を狙う者が命を張って挑戦するくらいだ。


 ジレコ伯の屋敷はなかなかに立派で、質実剛健な家風をよくあらわしていた。

 真面目な人柄で、領民の信望も厚く、ここに留まりたいという理由も正当なものだ。

 誠実な人間の正論を否定するというのは、それだけで自分が悪党に思えてしまう。

「お会いくださってありがとうございます」

 深々と頭を下げる。

「構わん。ヴィクセンのお嬢様もお久しぶりです」

「お久しぶりです、ジレコ伯爵」

 サラも実にお嬢様っぽく礼をする。ちゃんと貴族の人だ。

 他3人は家来として別室待機。

「準戦時だ。時間もない。無駄な前置きも好かん性分だ。用件に入ろう」

 う、苦手だ。こういう人。

「貴公は私の騎士団を王都に移動したい。私はここで一戦交えたい。この齟齬を埋めるのがこの会談の意義だ」

「無論それだけではなく領民の避難もお願いしたいと思っております」

「それに関しては反対する理由はない。事実ほぼ完了している。問題は一部残った者達だ。命など惜しくないから先祖伝来の土地を守りたいという者達をどうして立ち退かせられよう」

 そう言われるとなあ。

「おっしゃる通りですが離れるのは半年から一年の間となりますし、戦火によって荒らされた地を早急に復興する手はずも進んでおります」

「戦う手だてがあるのなら何故打ってでないのか。予言の書とやらがあるということであったが、なぜそれを信用してみすみす国土を荒らすことをせねばならぬのか。これはわたしの言葉ではあるが、心ならずこの土地を離れた者、そして頑強に土地に残る者達の言葉でもある」

「しかしながら陛下のご裁可をいただき、作戦は動き始めております。ジレコ伯爵の軍が欠けるとなれば全軍に影響を及ぼしかねません」

「わかっておる、わかってはおるのだ」

 ジレコ伯爵の高潔な人格が災いしている。

 王と領民の板挟みになっているのだ。

 しこりを残しかねない。

「伯爵」

 サラが言葉を発した。

「いまだ敵が見えぬうちに退けと言われてもなかなか承服できかねる心内お察しいたします。領主は領民の心の支えでなくてはなりません。民を率い、導き、繁栄と安寧を約束するのが領主です」

 サラは自分に言っているのだろう。

「しかし領主は領民のあるじでありながら、陛下の臣下です。領民は伯爵の地に住まう一方、バルディスという国に住んでいるのです。国なくして領地は立ち行きませぬ」

 伯爵はむうといってうなだれた。

「ここで意地を通すのも大事かもしれません。しかしそれでも敵は同じように土地を踏み荒らしていくでしょう。そして意地を通したことにより、国が失われてしまうかもしれないのです。民は帰るべき地を失い漂泊するか、捕えられて奴隷となるか殺されるでしょう。陛下の身に万が一のことがあれば栄光あるバルディスは歴史から消え去ります」

「しかし、ここで退けば活路が見いだせるというのがどうにも信じられないのだ」

「わたくしは短い間ですが、このメルレンと旅をしました。その中でこの方の見せる勇気と知恵と力には結構驚かされました。このような小娘の言ではなんの足しにもならないかもしれませんが、わたくしはこのメルレンの言を信用するに足ると保証いたします」

 こうまで言わせてこのままでは男がすたるな。

 仕方ない、ジレコ伯爵の人物に免じてちょいとネタバラシをしておこう。

「サラ、ありがとうございます。ジレコ伯爵、ぽっと出のエルフなどを信用しろと言われてもなかなか難しいものもありましょう。本来秘策を事前に他人に伝えることは情報の秘匿という面からあまりよくないのですが、わたしは伯爵のお人柄を信用して、わたしを信用していただくための材料としてお伝えします」

 伯爵は難しい顔をして考えていたが頷いた。

「わかった。たとえ貴公の策に納得できずともわたしは騎士団を王都へ動かすことを約束しよう」

「ありがとうございます。きっと陛下も喜ばれます」

「単純に興味が出てきた。ヴィクセン伯爵とバルテルミ殿以外には心を許さんと有名だった、あのサラお嬢さんがここまで宗旨変えをする貴公にな」

「ジレコ伯爵!」

 サラは顔まっかだ。


「伯爵、まず最初に申し上げておきたいのは皆様のわたしに対する認識はほぼ間違っていない、ということです」

「どういうことだ?」

「結局わたしはグレイエルフですので550年を生きております。しかしこの間何をしていたかといえば庵に籠って魔術の研鑚や、剣の鍛錬ばかりで人はおろか同族との接触さえ嫌い森や山にいた筋金入りの粗忽者でございます。礼儀や風流も解さぬ田舎者とお考えください」

「ふむ・・・わたしには貴公が礼儀を解さぬとは見えぬが」

「いえ、なんとか取り繕っているだけです。それが類稀なる幸運に恵まれ陛下のお目に留まり、過分に遇していただくことになった次第です」

「何が言いたいのだ?」

「はい、わたしは騎士の誓いを立て騎士の身分をいただきはしましたが、騎士の教育も受けておらず騎士のなんたるかすらよくわかっておらぬような有様です。ですから、これからお耳にいれるわたしの策は騎士でもある伯爵の気分に障るかもしれません。しかしそこは何卒卑しいエルフが申した下劣な策だとご理解ください」

「それほどに卑劣な策なのか?」

 あーいやーどうだろう。だけどこの世界って孔明みたいな頭いってるような軍略家とかいないしな。

 あんまり奇手使うと反感買うかもしれないし、予防線張ったんだけど・・・。

「よい、話してみろ」

 黙ってたら肯定だと思われたかな。


 とりあえず話すことにした。

忙しいといいつつ釣りに行ってカンパチ釣ってきました。

活締め(現地でトドメ刺して血抜きすること)したカンパチを氷で冷やして持ち帰り、捌いて切り分け冷蔵します。

これを3日くらい寝かせるとアミノ酸が出てすごくおいしくなります。

保存が悪いと翌日くらいがピークなのですが、うまく締めると冷蔵庫で1週間はお刺身や漬けでおいしいんですよう。


よし酒のむぞ(これが執筆を妨げる)

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