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異界のストーリーテラー  作者: バルバダイン
第一部 「イダヴェル戦乱編」
22/65

第二十話 「一方その頃的なこと②」

二週間ぶりの更新です。


すっかり涼しくなりましたね。

ああ、こないだの釣りですが、ワラサとマダイが釣れましたよ。

ワラサもきっちり活締めして熟成させると旨いですねえ。

一の蔵(日本酒)がぴったりでした!

ジーベル・ヴィクセン伯爵の巻


 結局あのグレイエルフの御仁が大賢者を訪ねてきたのは王国の危機を察知してのものだったわけだ。

 幸か不幸か我が領はイダヴェルの侵攻ルートからははずれており、街道の警備、自衛兵力を除いた余力はサイカーティス殿のいう「王都決戦」に抽出される。

 あえて王都を決戦場に選ばず、被害の少ない場所で野戦を挑めばよいと思うが、大賢者の持つ「予言の書」とやらのしばりがあるそうだ。

 個人的にはまゆつばだと思う。

 しかし王が裁可を下し、万事その手筈で動いているのなら仕方あるまい。

 これがウイラード辺境伯のように自領が蹂躙されるともなれば文句のひとつも言いたくなるものだ。

 

 わがバルディスは貴族に反乱が少ないという歴史を持つ。

 王や大貴族に人格者が多いという誇らしい理由がある。

 無論これだけでなく、各貴族の権益と仕事を王家はほぼ保証しており、王家は直轄領の運営と各領主間の調整を主とした意思決定機関として、権益の拡大をあまり強く求めないことがある。

 たまには野心を燃やす貴族も現れるのだが、時に他の忠義の厚い領主に撃退されたり、王国最強の軍事力である宮廷騎士団によって討たれたりだ。

 変り種では王が少数の護衛を連れて単身乗り込み、とくとくと説得されついに兵を退いた、というおひとよしなこともあったそうだ。

 善人の国。

 そう呼ばれることもある。

 誇るべきことではあるのだが、反面権謀術数に疎い、情にほだされやすい、戦の見通しが甘いという欠点もある。

 こうした大戦(おおいくさ)は長く経験がない。

 ましてや相手はあのバシュトナークだ。

 ここ一年あまりで力をつけたように言われるが、そんなことはあるまい。

 イダヴェルから教会勢力を駆逐するために雌伏していたのだろう。彼の側近である、帝国剣術団のメニヒ、魔術師アシュケムあたりが心服していることからも、彼の力のほどがわかる。

 バシュトナークはおそらく歴史に残るような武王だ。

 陛下もそしてあの風変わりなサイカーティス殿もそれを正しく見抜いている。

 サイカーティス殿にいたってはバシュトナークを止める手段について見当をつけていそうな雰囲気さえあった。

 底知れぬ男。

 サラも随分と大物に目をつけたようだ。

 ヴィクセンの跡取りに良いかと思ったが、果たして地方領主で収まるタマかどうか。


 そういえば大賢者もそうだが、一般にグレイエルフといえば人との接触を嫌う。

 それは短命な人間種とのペースが合わないというのもあるが、知識や技術の蓄積も薄く、性急で好戦的な人間を見下しているところがあるからだ。

 しかし、サイカーティス殿は随分と印象が違った。

 見た目どおりの年齢の若者、しかも才気あふれる若者と話しているかのような感じだった。

 それなのに底が見えない。

 サラが気に入ったのもその辺があってのことだろう。

 見事射止めるかどうかは、まずこの大戦(おおいくさ)次第、そしてサラの頑張り次第といったところか。

 両方楽しみにさせて貰おう。


 しかし、この間の一件以来、騎士団長のマーレンがどうも元気がない。

 サイカーティス殿に一喝され、息子のグロウスがおかしくなってしまったのだ。

 素行に問題はあったが、剣はできた。

 次期騎士団長と少年時代からもてはやされ増長してしまったのか。

 なんにせよ軍務面を委任してあるマーレンがあの調子ではいろいろ影響が出る。

 

 そうだ。最近ご挨拶も遠のいていることだし、使者を立てて大賢者殿にお知恵をお借りしてはどうだろうか。

 手土産に新鮮な魚や最近隊商から手に入れた美術本などを持たせよう。

 きっとなにかいい考えがあるに違いない。




 マーレン・ドロアー ヴィクセン騎士団長の巻


 グロウスはほぼ廃人になった。

 悲しくはある。

 ただ仕方ないと思う。

 妻は毎日泣いている。

 それを宥める日が続く。

 

 育て方を間違ったのはわたしも妻も同じだ。

 最初の子は流行り病で1歳の誕生日を迎える前に死んでしまった。

 その後10年も子に恵まれず、ようやく授かった子がグロウスだ。

 大事に育てたつもりが、いつしか甘やかしてしまったのだ。

 気がつけばすっかり小悪党だった。

 それでも我が子だ。愛情を注いでいた。


 息子の悪事を聞くたびに夫婦で胸を痛め、厳しく言ってきたが功を奏さず、ついに破滅を招いてしまった。

 多少なりは剣の才もあったというのに残念なことだ。

 これではドロアー家は廃れ、ヴィクセン騎士団の行く末も怪しくなってしまった。

 領内にはあまり武芸に秀でた人材はいない。

 東の国境を接するのは友好国であるヒヤルランディとヤーヴェイ妃殿下のお生まれになったドロームンだ。

 領内での怪物や魔物の発生も少ない。

 平和で安定した土地柄なのだ。

 武術もあまり発展せず、開墾の技術や算術、商工業の発展にもっぱら注力されてきた。

 騎士団と言っても警備が主な任務であり、治安維持以外では有事の際に動員されるくらいだ。

 かといって不要なわけはない。

 ヴィクセン家がこの地に根付いて以来、伯爵様をお守りし、父の代からは我々ドロアー家が騎士団長に任じられてきた。

 わたしが騎士団長を務められなくなった時は、果たして誰がそれを継げるものなのか。

 情け無い話ではあるが、王都から新たな騎士団長を招聘するよりほかにないのかもしれない。


「あなた、お客様です」

 妻が部屋に入ってきた。

 やや興奮している。

 珍しいことだ。メイドではなく妻が呼びにくるとは。

 これはよほど珍しい客に違いない。

「どなたがお見えになったのだ?」

「そ、それが・・・大賢者様が」

「なんだと!?」




 大賢者オーベイ・ファスハンディルの巻


 失敗した。

 あのボケなすの弟子・・・名前をもう忘れてしまったの、アレでもいるといないでは大違いじゃ。

 新着の本の整理がまったくできん。

 正確には面倒臭くてやる気がまったくせん。

 アレが来る前に逆戻りじゃ。

 あのエルフの皮をかぶったロクデナシが来ることはわかっておったが、こうも面倒ばかり押し付けられるとは思わなんだ。

 人間どもの切った張ったなんぞ知ったことか。

 どうせあの下等動物は何年かに一回は殺しあわないと収まらん性分なのだ。

 滅びない程度に適当にやらしときゃいいんじゃ。

 むしろ滅びても困らん。


 とはいってもアイツは中身は人間であるし、どうやらあまり荒事を好まぬ国から来たらしい。

 平和主義、というよりお花畑なんじゃろうな。

 さっきまで話してた仲間の首が今はすっとんでるようなことは珍しくない、ということがうまく納得できんのじゃろう。

 ま、やがて慣れるか。

 その一方でワシに物騒な魔術の構築手順を聞いてきたり、面白半分に若いのをびびらせたりとどうも行動に一貫性がない。

 それが人間の悪いところだ。

 考えが足りんのだ。


 ヴィクセンの今の当主はなかなかにいい男で、ワシが煩わしがることをちゃんと理解していて、無駄な相談を持ちかけることもなく、森を荒らすこともない。

 三代くらい前にいた馬鹿者は最悪じゃったな。

 ワシのことを市井の占い師かなにかといっしょくたに考えおって、宣伝した挙句に森への通行税などで儲けようなどと浅ましい考えをした。

 儲けるのは構わん、どうでもいい。

 ワシに何の断りもなく、ワシのところへ来る馬鹿が前の100倍にもなって家の前に行列でも作られてみろ、いかな温厚なワシとて赤竜でも呼んで一気に消し炭にしたくもなろう。

 すんでのところで思い留まり、赤竜は行列のやつらをほんのちょっぴり焦がして蹴散らした後、伯爵の屋敷を全焼させただけにしといた。

 仏すぎるな。

 ああ、ホトケというのはあの似非エルフの国の神らしい。

 人間が修行してなったとかなんとか。

 嘘つけ。


 なんの話じゃったか。

 そうだ、あの似非エルフが畜生以下だってことだったわい。

 今のヴィクセンのとこは騎士団のやりくりが大変だってことを知ってるはずなのに、面白半分にドロアーの馬鹿息子に追い込みをかけておかしくしおった。

 ヴィクセンは騎士団の補充に王都から騎士でも回してもらうつもりだったところへ、この戦さわぎじゃ。

 結局ある程度の戦力の拠出を求められたからには、唯一つかいものになるドロアーを出してやるしかない。

 後に残るのは雑魚ばっかりじゃ。

 中規模のオークの集団でも流れてきたら、壊滅するな。

 で、ヴィクセンに泣き付かれてワシが尻拭いじゃ。非常にいい迷惑じゃ。だいいちわしにキ○ガイの治療なんぞできるもんかよ。

 知らん、知らんぞう。

 とか言いつつ出かけてやるワシの広大無辺の慈悲深さよ。


「邪魔する」

 街を歩いてる最中もそうだが、今もワシとしては初対面のはずのドロアーの奥方は驚きのあまり硬直しておる。

 どうも一目でワシだとわかるらしい。

 なんでだ。

 魔術師のはしくれとして、もう1000年も同じローブを着まわしておる。

 古代魔法王国から伝わる魔術師の常として、自分の系統を衣装で表すことが決まっていた。

 ワシは書物の魔術を主系統とし、時、空間、召喚等が副系統となる。

 書物の魔術のローブは橙色。

 時は星の紋を衣装に施し、空間は副系統の場合は帽子が三角帽に、召喚は副系統の場合は衣装のパーツのどれかを紫にする。

 よってワシの格好は紫色の三角帽に橙色のローブ、星の模様があしらわれている。

 ・・・ダサイって言ったらコロス。

 これは伝統と格式に則ったものだのじゃ。

 どうやらここに3000年も住んでおると、子供むけの絵本から寓話にいたるまで様々なところにワシは登場しているようだ。

 丁寧な挿絵つきで。

 それで皆はワシがオーベイだとわかるらしい。

 ワシにはギャラが入っておらんぞ。

 いや、金はいらんのだが、何の断りもなく商品化されてるのが腹が立つ。

 肖像権の侵害じゃ。

 保証されておらんがな!


 なんの話じゃったか。

 どうも年のせいか話が逸れるわい。

 そうじゃ、ドロアーの家に着いたら驚かれた話じゃ。

 ヴィクセンめ、前もって話をしとかんかい。

 つうか迎えもよこさんとは・・・あ、ワシもつい思い立って出てきたんじゃったか。

 年じゃのう。


「大賢者様!」

 マーレン・ドロアーはでっかい体を縮こませて平伏した。

 おーリアル土下座ひさびさに見たわい。

 しかし別にこいつに土下座されるような覚えはないぞ。

「なんでお前は土下座しとるんじゃ?」

「いえ!森の守護者たる大賢者様にここまでご足労させてしまいましたことに恐縮しまして!その!」

 これじゃワシはどうみてもいじめっこじゃ。

 『おもてもあげーい』とか言ってみたいがやめておこう。それでツッコんでくれるのはあの似非エルフくらいじゃ。

「土下座などされても一銭にもならんわ。邪魔だからとっとと立つがよいわ」

 いや、金なぞいらんのだが。

「伯爵殿から頼まれてな、おぬしの息子の様子を見に来た」

 するとマーレンはガバっと立ち上がった。劇的な反応じゃのう。バカでも息子はかわいいってことじゃなあ。

「グロウスの!・・・大賢者殿にも伯爵様にもご迷惑をおかけして・・・なんと申し上げてよいやら」

「ああ、予め言っておくがワシに治療師の才能はないし、心の病は治療師にも治せんぞ」

「それは承知しております。あの馬鹿の自業自得。そしてこのわたしの不徳のいたすところですから」

「まあよい。ワシなりの方法でちょいと息子をいじるが構わぬか?」

「いじる・・・ですか?」

「うむ、万が一元通りになっても親不孝なままじゃ仕方ないじゃろ。お前の言うこともよく聞き、伯爵殿のために働く息子のほうがいいじゃろ」

 マーレンは驚いて目を見張る。

「そのようなことが可能なのですか!?」

「まあ、近いことはできる」

「是非!是非にお願いいたします」

 マーレンは再び平伏する。部屋が狭く感じて鬱陶しい。

「ああわかったから、早速息子のところ案内せい」


 うわあ、あの似非エルフ腐っておるの~。

 魔術の形跡はあるものの、それで障害を残したわけではなく、完全に脅しだけで精神をおいつめてあるわい。

 まあ、簡単な脅しだけでここまで追い込まれる、この馬鹿息子も弱すぎるがな。

「大賢者様・・・」

 心配そうなドロアー夫妻。

「心配ないわい、ワシの手にかかればたちどころじゃ」

「ありがとうございます!」

 まあ、術式組み込むだけなので、正直脳が動けば元の人格なんぞ関係ないわ。記憶だけは残せるが。

「ひいっ!」

 ワシが近づくと馬鹿息子は怯えてベッドの上で逃げようとする。

 おお、いい勘しとるじゃないか。

 そうじゃ、ワシはお前を治しにきたわけじゃない。どっちかというと危害を加えにきたわけだしな。

「押さえといてくれ」

「はい!」

 哀れ馬鹿息子は実の親に押さえつけられて、ワシの魔術の餌食となる。

 さて今回の魔術じゃが、某弟子に組んだものの応用じゃ。

 あっちは条件づけして発動するパッケージだったわけだが、今回は常駐プログラムじゃ。

 この馬鹿息子の基本情報を抜き出して、取り込み、ワシの用意したまったく新しい人格に置き換える、というか完全に上書きする。

 要は精神的に完全に死ぬわけじゃな。

 構わんじゃろ。

 こいつ誰にも必要とされておらんし、親も素直な子のほうがよかろうて。

 まさにワシって神!という感じであろう。


接続(アクセス)

 無限図書館に空間をつなげて、必要な書籍を呼び出す。

 あとは予め用意しておいた術式が勝手にこいつの脳内を書き換えていく。

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」

「グロウス!」

 異変を感じたドロアー夫妻。しかしもう遅い。

 もうすぐこいつはお前たちにとって理想的な人形へと変化するぞ。

 

 書き込みが終わり、グロウスは気絶した。

「だ、大賢者様・・・?」

 不安そうな夫妻。

「なあに心配いらん。きっかり2分後に目を覚ます」

 そう現在は再起動中なのだ。


 2分後。

 弾かれたようにグロウスが立ち上がる。

 再起動完了したようじゃな。

 虚ろな目。よし成功のようじゃ。

「自律型試験AIシステム。バージョン1.00。プログラムドバイ オーベイ・ファスハンディル」

 ロゴも完璧じゃ。

「大賢者様?」

「大丈夫、これはお約束じゃ」

「???」

 グロウスは背筋をピンと伸ばして、手足もピンとしたまま行進するように歩いて夫妻のもとへ行く。

「父上様、母上様、これまでの人生で大変ご迷惑をおかけしました。これよりわたくし文字通り心を入れ替え、大恩あるヴィクセン伯爵様、領民の皆様、父上様、母上様のために粉骨砕身勤める所存であります」

 平板な抑揚。

「大賢者様?」

「うむ。心を入れ替えた。昨日までの迷惑ばかりかけておったグロウスはどこにもおらん。今日からは勤勉で忠実で親孝行な次期ヴィクセン騎士団長にふさわしい男、グロウス・ドロアーじゃ。尚、サービスで現在の肉体で耐えうる限り剣術や体術の技能を解放してある。毎日6時間は剣術や肉体の鍛錬をするように言い聞かせてあるので、数年後には王国屈指の武術家になっておるよ」

「ええ、いや、ありがとうございます・・・?」

 なんか納得いかんようだのう。

 奥方がおそるおそるといったかんじで聞いてきた。

「あの大賢者様、今までの、というよりは以前の息子とはだいぶ違うようですが・・・」

「そんなの当たり前じゃ。『心を入れ替えた』と言っておろうが。あの妬み深く、小ずるく、小心な小悪党だったグロウスはもうおらん」

 言っててなんだか「小」が多くて気になった。

「ワシが考えた『よい息子で役に立つ騎士』という人格を作って、グロウスに突っ込んだ。よって端的に言えば以前のグロウスはもう死んだ」

「・・・え!?」

「考え方次第だがな。ここにおるのはグロウスと同じ肉体構造を持って、グロウスの記憶があるが、それを動かす行動原理は以前のような自制のきかない自堕落で欲望に引きづられる低級な人格ではなく、明確な目的意識と完全にコントロールされた欲望をもっている完璧な人格だ」

「死んだ・・・?」

「だから考え方次第だと言っておろうが。前の小汚い盗賊まがいの小悪党にもう一度会いたくてももう適わぬ、という点では死んだ。しかしこうして生まれ変わってお主らをきっと幸せにしてくれる息子になったのじゃ。ありがたかろう?」

 しばらく黙っていた奥方は急にふっと意識なくしたように倒れた。

 マーレンは慌てて抱きとめる。

「なんじゃ。ワシが悪者みたいだの。アレか?ここであの小悪党の残りカスのようなポンコツを看病して暮らすほうが幸せじゃったとでも言うのか?伯爵殿にはグロウスが立ち直って、ヴィクセンの騎士団長の跡目ができれば嬉しいと泣き付かれたから、わざわざこうして出張ってきたというのに」

「いえ!まさしく大賢者様のおっしゃるとおりです!しかし・・・妻からすれば不出来であってもかわいい我が子であったのもまた事実で・・・」

「はん!わからんな!」

 言葉なくうなだれるマーレンを前にしていると、ますますいじめっこ感が上昇するわ!

「おおかた木偶人形のようなとこが気に入らんのだろうが、それには学習型人工知能というありがたいものが積んである。だんだん人間の反応を学習してまともな受け答えになっていくから安心せい!」

「・・・」

「まったく感謝されこそすれ、なんでこうなるのかさっぱりじゃ」

 いや、本当はわかるんじゃが、できんもんはできん。

 そんな性根の腐った馬鹿を改心させるなんて都合のいい魔術なんぞ、あるわけなかろうが。


 すっかり覇気を失くしたように頭を垂れるマーレンに見送られドロアー邸を出たが、どうにもすっきりせん。

 ヴィクセンに相当額を請求せねばなるまいな!

 いや、金には興味なんぞないのだが。




 再びマーレン・ドロアー ヴィクセン騎士団長の巻


 そうか、死んでしまったか。

 仕方あるまい、本来ならサラ様に暴言を吐いたところでお手討ちにされて当たり前だったのだ。

 妻にはかわいそうだが、諦めるしかない。

 未来のヴィクセン騎士団長を育てていく。

 それがせめてもの罪滅ぼしだ。


 部屋へ戻ると、そのグロウスのようなものはソファに寝かされた妻の傍らに立ち尽くしていた。

「父上、母上を寝室にお連れいたしましょうか?」

 確かに・・・グロウスではない。

 こんな心遣いのできるヤツじゃなかった。

 これの方がよほどいいヤツじゃないか。

 慣れるしかないんだ。

「ああ、頼むよ」

 頼むよ、グロウス。とはとうとう言えなかった。

「かしこまりました」

 それは妻を軽々と横抱きにして連れていった。

 寝室のほうから妻の甲高い悲鳴が聞こえてきた。

 ああ、目を覚ましたのか。

 グロウスが自分を抱えることなどない、ということがわかっているから現実に引き戻されたのだろう。


 慣れるしかない。慣れるしかないんだ。

 

この話の書き始めはコメディっぽかったのに、書き終えてみたら軽く鬱でしたね。

まあ一人廃人になってるので仕方ないですが^^;


作者も予想外のグロウス君で一話つかってしまいました。

オーベイがダメだという内容でしたが。


お気に入り、感想、評価、などありがとうございます!

いつも楽しみです♪

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