表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ユーフェミアは今日も眠い。  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/115

無意味の幸福

ユーフェミアの思考は、哲学でも分析でもなく、ただいま目蓋の裏を通過する感覚の実況だった。


鳥の影が、薄い皮膚をなぞる。

片眼の端に落ちた黒い線は、太陽に墨を置いた誰かが、

気まぐれに指でこすって滲ませたかのように広がっていく。

その揺れを追うのが、きわめて愉しい。


芝生の葉は一本一本が、王家式典の兵士よりも律儀に整列していた。

色は緑、背丈は均一、光の反射すら統制されている。

踏みつけるのは申し訳ない、と一瞬思う。

だが疲労の前では礼儀も忠誠も敗北する。

この世界で最も偉い神は、眠気だ。


誰かに見せるための仕草も、意図的な侮辱もない。

ただ目蓋を通過する影や、背中で分解される草の弾力に身を委ねる。

それらは構造を持たず、意味を形成しない。

制服の皺のように、ただそこにあるだけの断片。


——期待に対して、無意味で応える。

それは沈黙の皮をかぶった知的な反逆であり、

喧騒から逃れた少女の、もっとも純粋な幸福でもあった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ