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整いすぎた儀式
中央庭園は、朝の空気ごと磨き上げられたようだった。
白亜の仮設ステージは、陽光を跳ね返す鏡のように輝き、そこに立つ者の運命をも照らし出す。
澄んだ空を切り分ける旗の羽根飾りが、風に合わせて規律正しく揺れる。
貴族子弟たちは整列し、胸元のブローチは一糸の狂いなく統一されていた。
魔法演算により統制されたスピーカーからは、言葉の雑音が一切排除された音響が流れる。
水晶音のようなアナウンスが響くたび、庭園の空気はさらに研ぎ澄まされる。
すべてが、誤差ゼロを前提に組まれた儀式機構の一部であった。
王立アルコル学院の入学式。
この国の未来を担う若者たちが、予定通りの成長曲線に乗せられる祝祭。
血統、教育、政治、婚姻——あらゆるルートがここから分岐する。
整いすぎたステージは、まるで世界そのもののプロトコルであった。
そこに乱数は不要。
興奮も恐怖も、予定にない波形は削られる。
——ただ一人を除いて。
その名が呼ばれるべき瞬間は、まだどこにも存在していなかった。




