60、報復
今日も読みに来ていただきありがとうございます。
誤字脱字が多すぎる作者は皆様の報告ですごく助けられています。
そろそろ完結に向かいますが、楽しんでいただけると嬉しいです。
「ハリソンはまだ元気が余っているようだから、次は私と手合わせしてもらおうかしら?」
私は木刀を手にハリソンに近づく。
「え!?」
膝をついていたハリソンが私の怒りのオーラに気がつき、瞬時に立ち上がった。
さすがS級だ。
「待て待て、俺の負けだ。悪かった。だからその殺気を収めてくれ」
ワタワタと木刀を持っていない方の手で私をなだめようと手を上下に振るが、もう遅い。
「何言ってるの?私は久しぶりにハリソンと手合わせがしたいだけだよ」
「いやそんな殺気纏ったまま笑顔で言われても…」
そりゃあそうだ、ディルックにあんな大怪我させておいて普通にしてられるわけがない。
「構えないならそのままいくよ」
私の言葉にハリソンは渋々剣を構えた。
「くそ、やるしかないのか…」
「じゃあ引き続き俺たちが審判をやるぞ」
モーリスが前に出て、ガイアスを見る。
ガイアスもコクコクと頷いて前に出た。
私の周りの空気が重くまとわりつく。
「では両者構えて。始め!」
モーリスの掛け声と共にハリソンが私に瞬時に切り掛かる。
私はハリソンの打ち下ろす剣の下を潜り抜け、振り向いた。
「剣技!百花繚乱!」
私が素早く剣を振るうと、ハリソンが宙に跳ね飛ばされその体に華が咲き乱れるように技が飛び散った。
「うわ、容赦ねえな」
ガイアスが呟く。
ドサリとハリソンが地面に落ちる。
「勝者、アニエス!」
モーリスの声に私はその場で剣を下ろし一礼した。
ユーリがゆっくりとハリソンのところにやってくる。
「もう、アニエスったら。怒るのは当然だけど、私の仕事を増やさないでよ」
「ごめんね、ユーリ。後でこの街のおすすめスイーツ奢るから」
私がユーリに言うと、しょうがないわねと笑って許してくれた。
ハリソンは丈夫だからあばらが数本折れた程度だろう。
ちなみにガレリアでは私達の元パーティではリーダーのハリソンが一番強いと思われているが、剣の腕だけなら私の方が上だ。
「ん…」
ディルックがどうやら気がついたようだ。
「ディルック!大丈夫?」
私はディルックに駆け寄った。
「イテテ…?あれ?痛くない」
ディルックは首を傾げている。
「ユーリが治してくれたんだよ。痛いとこない?」
私が訊ねるとディルックはゆっくり立ち上がった。
「すげえな。どこも痛くない」
「良かった」
ユーリの事は信頼してるが一安心だ。
「それで勝負はどうなったんだ?」
ディルックが心配そうに聞く。
「もちろんディルックの勝ちだよ!おめでとう!」
「そ、そうか。ちゃんと一本取ったのは夢じゃなかったんだな」
「夢じゃないよ。かっこよかったよ」
「そ、そうか。ありがとう」
私達が照れながらそんなやりとりをしていると、ガイアスの声がした。
「お2人さん、イチャイチャしてるとこ悪いけど、そろそろ帰るよ」
見るといつのまにかハリソンも立ち上がって、気まずそうにこちらを見ている。
「そうだな、アニー。帰るか」
「うん、帰ろう」
私は差し出されたディルックの手に自分の手を重ねた。
読んでいただきましてありがとうございました。
引き続き次もお読みいただけると嬉しいです。
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