55、冒険者ハリソン④
今日も読みに来ていただきありがとうございます。
誤字脱字が多すぎる作者は皆様の報告ですごく助けられています。
楽しんでいただけると嬉しいです。
ハリソンはディルックの言葉を聞いて鼻で笑った。
「ハッ、口では何とでも言える。お前がアニエスの地位や金目当てじゃないと証明できるのか?」
ディルックは尚も食い下がる。
「アニーの為なら何だってできる。証明だって何だってしてやるよ」
ハリソンがディルックの言葉を聞いて椅子から立ち上がった。
「度胸だけは褒めてやる。表に出ろ」
「わかった」
待って待って、本当にハリソンとやり合うつもり?
「ちょっと…」
「ちょっと待ったあ!!」
その時、食堂のドアが開いて私の声を遮るように2人を止める声がかかった。
ドアの方を振り向くと懐かしい2人の人物がいた。
「ユーリ、モーリス!!」
モーリスはゼイゼイと肩で息をしている。
「何とか間に合ったのか?」
モーリスが私に問う。
「アニエス、遅くなってごめんなさいね」
私は椅子から立ち上がってユーリの胸に飛び込んだ。
「ユーリ、ユーリ!会いたかった!」
ユーリは優しく私を抱きしめた。
「私も会いたかったわ、アニエス。で、今どういう状況かしら?」
「ハリソンがいきなり来て、私を連れて帰って結婚するって言い出して。ディルックに表に出ろって…」
私は2人が来てくれた安堵のあまり涙を流して言った。
「ハリソン!!アニエスを泣かせるなんて一体どういうつもり?そもそもどうして一人で先に行くの!少しは人の話を聞きなさいよ」
ハリソンはユーリの声が聞こえたのか聞こえてないのかぼんやりと私を見ている。
「アニエスが…泣いてる…?俺のせいなのか…?」
確かに冒険者時代の私は滅多な事では感情を表に出す事はなかった。
特にユーリ以外の前では尚更だ。
「とにかくハリソンは今日のところは一旦宿に連れ帰るから。マスター、店の営業の邪魔をして悪かったな」
モーリスはそういうところにも気が回るいい人だ。
「いや、問題ない」
マスターがモーリスに言う。
「ハリソン!行くぞ!」
モーリスが呆けたハリソンを引っ張って食堂から出て行った。
「皆さん、ごめんなさいね。ユーリ、私たちは近くの宿に泊まってるから、詳しい事はまたね」
バタン。
食堂のドアが閉まって静かさが戻った。
「マスターお騒がせしました」
私が頭を下げると、マスターは笑顔で言った。
「アニーのせいじゃねえから気にすんな。さ、早くメシ食って夜の仕込みするぞ。お前らもついでに食ってけ」
ガイアスが嬉しそうに言った。
「やった!じゃあ俺、仕込み手伝うよ」
「俺も手伝う」
ライオネルさんもそう言ってくれた。
「お前らありがとな」
ライラとマリーさんは厨房で何やら話し込んでいる。
そして、ディルックはドアの外をじっと見つめていた。
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