53、S級冒険者ハリソン②
今日も読みに来ていただきありがとうございます。
誤字脱字が多すぎる作者は皆様の報告ですごく助けられています。
楽しんでいただけると嬉しいです。
昼営業が終わり、私達は店を閉め、休憩時間に入った。
「で、あれは誰なの?」
ライラが店を閉めるなり、私に詰め寄った。
「どうかしたの?大丈夫、アニー?」
マリーさんが心配そうに私の肩に手を置く。
「大丈夫か?また変な奴が来たのなら俺が追い返してやろうか?」
マスターまで気遣ってくれる。
「はい、大丈夫です。ご迷惑かけてすいませんでした」
私は皆に頭を下げる。
「そんなことで謝らなくていいんだから。それよりあれは誰なの?話せる範囲でいいから教えてほしいわ」
ライラはこの前の誘拐事件を気にしているのだろうか。
「もちろん全部話すつもり。私も聞いて欲しいから」
と、私はここに来た原因の元パーティメンバーが彼ハリソンであること、ガレリアの友人からの手紙によるとハリソンは彼女と別れて私を探しに来たと言う事、そして何故か私と結婚するといえば私がガレリアに帰ると思っている様子だと言う事を話した。
「なんなの!男はいつだって女はいつまでも自分のことを好きだと思い込んでるんだから!」
「ホント勘違いもいいとこよ」
ライラとマリーさんは世の中の男に対して怒り出したが、マスターは肩身が狭そうだ。
「男が皆そうではないと思うぞ…」
と小さな声で反論していた。
「あともう一つ、言いたい事があるんですが、できればディルックに先に伝えたいと言うか…ディルックがいる時に伝えたいと言うか…」
こんな事ならディルックに私が元S級冒険者だと言うことを先に言っておけばよかった。
「そうよね!ディルックにもあいつが来たことを伝えないとね。ちょっと私、ディルックを探してくるわ。アイツがまた店にくる前にディルックに話した方がいいわよね」
「あっ、私が行こうか?」
私は慌ててライラに言った。
「いいの!アニーが行ってあのハリソンって男と鉢合わせたらまずいし。行ってくるからちょっと待ってて」
なんて優しい友達だ。
「おう、ライラ行ってこい!こっちは気にしなくていいからな」
「ライラちゃん、お願いね」
マスターとマリーさんもそう言ってくれる。
「…皆ありがとう」
私は胸がジーンと熱くなった。
「大事なアニーを連れて行かせないんだから!」
そう言ってライラは店の外へ走って行った。
それから1時間ほどたったころだろうか、ライラがディルックを連れて帰ってきた。
ライオネルさんと何故かガイアスもやってきた。
「なんか面白そうだったからついてきた」
ガイアスのいつもの調子が逆に安心する。
「ライラから少しだけ聞いたんだが、ガレリアから知り合いの男が来たんだって?」
ディルックには少し話しにくいが仕方がない…私はハリソンが何者で、私を連れて帰ろうとやってきたことを話し始めた。
「何だって?アニーをガレリアに連れて帰るだって?相手がS級だろうと関係ない。絶対にアニーを連れて行かせるなんて許さないからな」
「ディルック…」
そう言ってくれて嬉しいな。
しかしまだ言わなければならない事がある。
「それと…皆に言ってなかったんだけど、私、実は元S級冒険者なんだ」
言ってしまった…。
食堂に沈黙が落ちる。
拒否されたりしたらどうしようと何度も考え、なかなか言い出せなかったが、いずれ伝えようと決めていた。
食堂の床をじっと見ていた私だが、皆の沈黙に耐えられず顔を上げた。
「それでどうした?」
ディルックがたずねる。
「もしかして言いたいことがあるってそのこと?」
ライラも不思議そうだ。
「え?皆驚かないの?」
「えーと、アニーちゃんは隠してるみたいだから言わなかったけど、結構皆気づいていたと言うか…」
「日頃の行動見てたら只者じゃないのはわかるしな」
マリーさんとマスターまで。
「俺たちも冒険者だから、戦ってるところを見たら大体わかるしね」
ガイアス…。
私は何のために散々悩んでたのか。
「皆、私がS級冒険者って聞いても引かないんですか?」
私の問いに、ディルックが答えた。
「S級冒険者だろうと、食堂の給仕係だろうと、アニーはアニーだ。俺たちはアニーが何者であっても気にしない。今、目の前にいるアニーを信頼している」
今まで私は、この地で生きていきたいと思いながら、隠し事がある自分を後ろめたく、不安定な気持ちを奥底に隠していた。
それが今、霧が晴れるように消えてなくなった。
「ありがとう、ディルック。皆もありがとう」
その時、食堂のドアが叩かれた。
「すいません、昼間アニエスを訪ねてきた者です」
ハリソンが来たようだ。
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