52、S級冒険者ハリソン①
今日も読みに来ていただきありがとうございます。
誤字脱字が多すぎる作者は皆様の報告ですごく助けられています。
楽しんでいただけると嬉しいです。
私の願いは神に届かなかったようだ。
いや願いのひとつは神に届いた。
数日後、ディルックが無事にランクアップ試験の課題の討伐に成功してガイアスと共にB級冒険者になった。
とても嬉しくて私は次の店の休みに、ディルックと一緒にささやかなお祝いをすることにした。
そんなある日、昼営業中に突然彼がやってきたのだ。
彼と言ってもディルックではない。
最初は街の噂だった。
「ねえ、聞いたかい、アニーちゃん。この街にガレリアのS級冒険者が来てるらしいよ」
情報通である道具屋のシーラさんが私に教えてくれた。
「えっ!ガレリアから?」
「何でもものすごいイケメンらしいよ。誰かを探してるって話さ」
やばい!ハリソンだ。
もう私がこの街にいる事を嗅ぎつけたのだろう。
ハリソンは思い立ったら即行動の脳筋だ。
見つかったら面倒だな。
「へ、へ〜え。ソウナンデスネ」
少し動揺が出てしまったがしょうがない。
「一体誰を探しているんだ?犯罪者じゃないだろうな」
肉屋のマーカスさんが心配そうに言った。
「どうやらそんなんじゃないみたいだよ。花嫁を迎えに行くんだって言ってたらしいよ」
花嫁だって!?
どう言う事?
ハリソンじゃないのか?
頼む、別人であってくれ。
そう神に祈ったが、祈りも虚しく彼は現れたのだ。
昼営業のピークタイムにドアベルがカランとなった。
「いらっしゃいませ!すいません、只今満席なので少しお待ちいただけますか?」
そう言って振り向くと、そこにハリソンが立っていた。
「アニエス!ここにいたのか!探したぞ!」
げっ、一体何しにこんなところまで来たんだ。
「どちら様ですか?ここにはアニエスなんていませんが」
何とか帰ってくれないものか。
「何言ってるんだアニエス!オレがお前を見間違うわけないだろう。それにしても、すごく綺麗になったな。今まで待たせて悪かった。さあ、俺と一緒にガレリアに帰ろう」
はあ?本気で何を言ってるかわからない。
「何を言ってるのかわかりませんが、見ての通り他のお客さんの迷惑なので帰ってくれませんか?私、忙しいので」
後から来たお客さんが困惑している。
「あ、ああ。すまない。それではまた出直すとしよう。俺はしばらくこの街に滞在するから。夜にまた来る」
ハリソンは後ろのお客さんに謝って、そう言った。
「夜も忙しいのでこないでください」
私が冷たく言うと、ハリソンはわかっていると言うように頷いた。
「アニエスが怒っているのも無理はない。だが、もう何も心配いらないぞ。俺はお前と結婚する事にしたからな」
「はあ?」
ハリソン、こんな人だった?
「では夜に出直すとしよう」
そういうとハリソンは店を出て行った。
私は無言でこめかみを押さえた。
頭痛がしそうだ。
ライラが心配そうに私を覗き込む。
「アニー?今の人なんなの?大丈夫?」
今は仕事中だ、とりあえずハリソンのことは後回しだ。
「大丈夫だよ、後で休憩の時に話すね」
私はライラにそう言うと仕事を再開した。
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