51、手紙
今日も読みに来ていただきありがとうございます。
誤字脱字が多すぎる作者は皆様の報告ですごく助けられています。
楽しんでいただけると嬉しいです。
しばらくは冷やかされたりもしたが、数日で常連さん達は私達を普段通りに扱い始めた。
私も少しずつディルックの彼女として慣れ始めたような気がする。
何より国が違えど冒険者のことはよく知っているので理解があるつもりだ。
ただひとつ問題があるとすれば、ディルックに元S級冒険者だと言う事を伝えるべきかと言う事だ。
そういえば、食堂の皆にも、冒険者をしていた事は打ち明けているがS級という事は言ってなかった気がする。
ディルック達にも色々な場面を見られているから、私が元冒険者だという事は薄々わかっているんじゃないかと思うが、さすがにS級だとは思っていないに違いない。
「うーん、言うべきかどうか…」
「何を言うべきだって?」
声に出てた!?
ディルックが帰り道送ってくれているところだった。
最近は、ライラが仕事の帰りにそのままライオネルさんの所に行くことが増え、その時はディルックが送ってくれるのだ。
「いや、食堂のメニューの事だよ」
「そうか…俺の意見が参考になるかわからないが、できることがあったらなんでも言ってくれ」
うん、相変わらず真っ直ぐな人だ。
いつものようにだわいない話をして、私のアパートの前に着く。
なんだかいつもの帰り道が、すごく近く感じる。
「着いちゃった…ね」
「ああ、そうだな…」
もじもじしている私の肩に、ディルックが手を置いた。
「いいか?」
「うん」
そして軽く唇を触れ合わせるキスをする。
「そ、それじゃあ、おやすみ。またな」
「う、うん、気をつけて」
照れた様子で帰りの挨拶をし、ディルックが帰るのを見送ろうとした時、ディルックが言った。
「そうだ!あの…俺、今度B級冒険者のランクアップ試験を受けられることになった」
ディルックが誇らしげに言った。
経験者だからこそわかる。
ランクアップ試験を受けられることの喜びを。
もちろん試験に合格しなければランクアップはしないのだが、その試験を受けることすらギルドの許可がないと受けられないのだ。
ちなみにA級以上だとギルド本部の会議で通過することがランクアップ条件となる。
「え?すごいじゃない!やったね」
「試験を受けても合格しなきゃ変わりはないんだけど、受けられることが嬉しくてさ。一応報告」
「うん、頑張って。応援してる」
ディルックも冒険者として頑張っているのだ。
私が元S級と伝えるなら、最初はディルックに伝えたい。
せめて伝えるとしてもランクアップ試験が終わってからにしよう。
その判断が良かったのか悪かったのか。
ある日、食堂ひだまりの猫に私宛の一通の手紙が届いた。
それはガレリアで同じパーティだったユーリからの手紙だった。
ユーリとはたまに手紙のやりとりをしていたので、いつものように姉のように慕っていたユーリの手紙を開けた。
「親愛なるアニエス。
ソレイユで相変わらず元気にやっているかしら?
食堂の皆さんとは仲良くやれてる?
こんなことあなたに伝えるべきか迷ったんだけど、こっちは大変混乱しているの」
どういう事だ?
「実は結婚を前提に付き合ってると言っていたハリソンと受付嬢のモナだけど、実は別れたの。原因はモナがハリソンの預金の半分近くを使い込んで、それをハリソンが怒ったら、モナが逆ギレしたらしいのよ。モナはさっさとハリソンと別れるとA級冒険者のローレンスと付き合いだしたの」
何ですって!
ハリソンの預金は一生働かなくても食べていけるくらいあったはず。
「それで、ハリソンがアニエスにパーティに戻ってくれるよう説得するって言いだして…。もちろん私達はアニエスの居場所は言わないわよ。でもすごい勢いで人脈を使って探しているからいずれソレイユのアニエスのところに行き着くかも」
何だって!?
「アニエス。もしハリソンが私達より先にそっちに行ったとしても、流されず、きちんと自分の意見を伝えてね。ハリソンってほら、思い込みが激しくて人の意見を聞かないところがあるでしょ。ハリソンがあなたの居場所を突き止めるようなら、私達もそちらにすぐに向かいます。
愛を込めて、ユーリ」
た、大変だ!
ハリソンがどうか私を見つけませんように。
読んでいただきましてありがとうございました。
引き続き次もお読みいただけると嬉しいです。
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