40、商人ロッソ②
今日も読みに来ていただきありがとうございます。
誤字脱字が多すぎる作者は皆様の報告ですごく助けられています。
楽しんでいただけると嬉しいです。
「ロッソさん、お待たせしました」
私が注文のステーキを持って行くと、ロッソさんは周りにいた女性達に言った。
「素敵な皆さんと食事したいのは山々だけど、そうすると君たちに見とれてせっかくの美味しい食事が冷めてしまうからね。悪いが席に戻ってもらえるかな」
「「はーい」」
いつもながら見事なあしらい方だ。
きっと慣れているのだろう。
「ふう。アニー、ありがとう」
私にも微笑みとお礼を忘れない。
「どういたしまして、ロッソさん。熱いのでお気をつけくださいね」
そして今ロッソさんは貴族のように優雅に肉を切り、口に運ぶのだ。
「はあ、食べてる姿も美しいわね」
女性達はうっとりしてロッソさんを見守る。
ロッソさんがこの食堂に初めて来てから2週間ほどだ。
初めは女性なのか男性なのか街の人もソワソワしていたが、シーラさんが思い切って聞いた。
「あのー、こんな事聞いてとても失礼なのは分かってるんだけど。あんまり綺麗なもんだから気になって…。女性ですか?男性ですか?」
不快になっても仕方のない質問に店内は緊張が走ったが、ロッソさんは優しく答えた。
「綺麗と思ってくれたのに、失礼とは思わないですよ。こんななりですが、性別は男です」
その途端店内にキャーとという興奮した声が響き渡った。
「ほらほら、やっぱり男性よ」
「笑顔素敵…」
「目の保養だわ」
ロッソさんはまたにっこり笑って女性陣に言った。
「ありがとう。しばらくこの街にいるからよろしくね」
女性陣は頬を染めて頷いた。
そしてそれからは度々ロッソさんは食堂ひだまりの猫に来てくれるようになった。
おかげで女性客も増えて、うちの食堂は賑やかだ。
男性客は日に日にロッソさんへの風当たりがきつくなりつつあるが。
「アニーちゃん、ライラちゃん、マリーさん美味しかったです。マスターごちそうさま、また来ますね」
ロッソさんはお会計をしてそう言った。
「別に無理に来なくていいぞ」
マスターの返事にマリーさんが前に出る。
「いやね、この人ったら。ロッソさん、また来てね」
「はい、それではおやすみなさい」
ロッソさんが帰ると、いつもの食堂の雰囲気に一気に戻る。
「アニーちゃん、そう言えば、聞いたかい?大通りのカフェの髪の長い店員の女の子、どうやら誰かと駆け落ちしたらしいよ」
シーラさんがいつもの様子で噂話をするが、今日の内容はいつもと違う感じだ。
「え?また、駆け落ちですか?」
ついこの前も、農家の娘が駆け落ちしたと言っていた。
「それで相手はわかってるんですか?」
「それがさ、また相手がわからないんだって。駆け落ちするから探さないでっていう手紙が置いてあったようだよ」
またか。
駆け落ちなんでよくある話だ。
なのに、そう思えないのは何故か。
そもそも駆け落ちというのは、好き合っている2人を親や周りが交際や結婚を認めないので、やむなく2人で新しい土地にいくというものではないのか。
それが誰も反対していないし、そもそも付き合っていることすら知らなかったそうだ。
よっぽど人に言えない相手との秘密の恋だったのだろうか。
それも立て続けに。
「なんかちょっと妙な話ですね。相手は誰かわからないんですか?」
私は少し考えて言った。
「そうなんだよ。普通誰かに相談くらいしそうなもんだけどね。2人とも器量の良い子だったから余計に心配だね。最近また変な奴らも多いし、アニーもライラも気をつけるんだよ」
「そうですね。まあ私は、付き合ってる人はいませんが」
私は誰とも付き合ってないし、ライラはライオネルさんとの付き合いを反対されているわけでもない。
単なる偶然が重なったんであればいいが。
読んでいただきましてありがとうございました。
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