35、警備隊オリバー④
今日も読みに来ていただきありがとうございます。
今回少し長めです。
誤字脱字が多すぎる作者は皆様の報告ですごく助けられています。
楽しんでいただけると嬉しいです。
次の日、食堂ひだまりの猫に出勤すると、早速マリーさんが昨日のデートのことを聞いてきた。
「アニーちゃん、昨日のデートはどうだったの?楽しかった?」
「デートは楽しかったんですが、実はその後…」
私は昨日の帰り際の女性のことをマリーさんとマスターに話した。
ライラには昨日帰ってすぐに話したのだ。
「え?何それ?」
「ですよねー、めちゃくちゃ怪しいですよね」
「俺は最初っから胡散臭いと思ってたんだ」
3人が否定的な意見だが、私はまだオリバーさんを信じたい気持ちもある。
「でもオリバーさんの言う通り、人違いってこともあるかも」
私がそう言うと、ライラも少し考えて言った。
「まあ、その可能性も全くないとは言えないわね。何しろ警備隊だし」
「その女性に話が聞きたいわね」
「そうですね」
その日の夜営業、冒険者の依頼から戻ってきたガイアスとディルックが久しぶりに店を訪れた。
「アニー、聞いたぞ!あの怪しい警備隊の男とデートしたらしいな。俺と言うものがありながら」
「いや、ディルックとは付き合ってないから」
いつものやりとりが落ち着く。
今日はオリバーさんは来ないみたいだ。
正直オリバーさんの事はどうしていいかわからないので、今日来なくて少しホッとしている。
「あのさ…その警備隊のオリバーだけどさ」
ガイアスが言いにくそうに、口を開く。
「何?ガイアス?」
「実は俺、この街の警備隊のオリバーって友達がいるんだ」
「え?お前そんな友達いたのか?」
ディルックが驚く。
「アイツだよ。あのいつもこの店が休みの日に酒場で声をかけてくるガタイのいい男」
「ああ、アイツか。いいやつだな」
2人で盛り上がってて話が見えない。
「で、その別人のオリバーさんがどうしたんですか」
「話が逸れたな。それで友達のオリバーに、警備隊に他にオリバーって名前のやついるかって聞いたんだ」
「うん、それで?」
ディルックが先を促す。
いつの間かライラも近くに来ていた。
「そしたら、オリバーって名前は警備隊には自分一人だって言うんだ。自分と同じ名前のやつがいたらさすがにすぐわかるって」
「え?」
私が呆然としていると、ライラが昨日の出来事をディルック達に言った。
「ふざけた野郎だ!とっ捕まえてやる」
「でも、まだ証拠が…」
その時、ドアベルがなって若い女性が入ってきた。
昨日の夜、オリバーさんにくってかかっていた若い女性だ。
「こんばんわ。って、良かった見つかった!あなたを探してたのよ」
「あなたは昨日の」
女性は私に歩み寄り、頭を下げた。
「昨日はいきなりごめんなさい。それと今日も突然やってきて」
「いえ、それはいいんです。私も話がしたいと思ってたので。でもどうしてここがわかったんですか?」
「昨日アイツが私を振り切って逃げた後、色んなお店の人にあなたの容姿を聞き込んでやっとここに辿り着いたの。アイツはいないようね」
「ええ、今日は来てないです」
「ゆっくり話がしたいんだけど、大丈夫かしら?」
私はマスターに視線を送る。
「今日はもうお客もディルック達だけだし少し早めに店じまいだ」
「店閉めてくるわね」
ライラが店を閉めに行き、マリーさんがお茶をみんなに入れてくれた。
「この人達にも話を聞いてもらっても大丈夫ですか?」
私はその女性にたずねた。
「ええ、大丈夫よ。私はステラ。ここから少し離れたルーダという街で小さな雑貨店を経営していたの」
ステラの話によると、こうだった。
あの男はルーダの街で偶然を装い、突き飛ばされたステラを助けた。
その後、よく行く店で偶然を装い再会し、さらにステラの店と知らずにやってきたと言って警戒心を解かせた。
ルーダに彼は警備隊のジャスパーと名乗った。警備隊という事ですっかり気を許して仲良くなり、その後何度かデートするようになり交際が始まった。
初めはとても優しく、色々ご馳走してくれたりと羽振りが良かったが、ある日を境に急に落ち込んだ様子になった。
彼に訳を聞くと、警備隊の仕事で失敗をしてそれが原因で大きな商会の取引をダメにしてしまったという。
その商会から賠償金を払えと言われているが、警備隊の給料は故郷の病気の妹のために使ってしまったというのだ。
幸い妹の病気はかなりよくなり、今からは自分のためにお金を貯めようと思っていたところだと言う。
「その金額は一体いくらなの?」
ステラさんが聞くと、なんとかステラさんの蓄えでまかなえるくらいの金額だった。
「これからお金を貯めて君と結婚したいと思っていたが、それも叶わない。すまない、ステラ」
彼の涙ながらの演技にステラは言ってしまった。
「自分の貯金があるから、それで払って。あとから少しずつ返してくれればいいわ」
…ひだまりの猫のテーブル席で、ステラさんは心を落ち着けるようにお茶を一口飲んだ。
「本当に馬鹿だったわ。今思えば、最初に私にぶつかってきた男も仲間だったのよ」
彼はお金を受け取ると、すぐに支払いに行くと言った。
次の日も連絡が取れない彼を心配して家に行ってみると、家は引き払った後だった。
驚いたステラは警備隊に行ったが、ジャスパーはいるかと尋ねると、全く別人が現れたらしい。
「なんて事!」
思い当たる節がありすぎる。
読んでいただきましてありがとうございました。
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