24、農夫マルコス④
いつも読んでいただきありがとうございます。
本日2度目の投稿です。
誤字脱字が多すぎる作者は皆様の報告ですごく助けられています。
今作も楽しんでいただけると嬉しいです。
私とマルコスさんは、郊外のマルコスさんが育てている畑にやってきた。
「ここが俺の畑だよ」
そこには真っ赤なトマトをはじめ、レタスきゅうりと美味しそうな野菜達が沢山実っている。
「わあ、すごい!どれもすごく大きくて美味しそう」
マルコスさんは饒舌にどのような世話をしているのかを話してくれる。
「すごい愛情を込めてるんですね」
「ありがとう。是非採れたての野菜を食べて行ってくれ」
マルコスさんは真っ赤に完熟したトマトや瑞々しいきゅうりを採るとカゴに入れた。
「井戸で冷やして食べよう」
桶に井戸の冷たい水を張り、きゅうりやトマトを冷やす。
さあ、どうぞ。
渡されたトマトにかぶりつく。
口の中に爽やかな酸味と甘みが弾けてとても美味しい。
「美味しい!甘くて濃厚な味ですね」
マルコスさんはうんうんと頷きとても嬉しそうだ。
「アニーなら俺の育てた物の良さをわかってくれると思ってたよ」
マルコスさんとの未来を思わず想像してしまった。
畑仕事をしているマルコスさんに、私が声をかける。
「あなた、夕飯ができたわ。手を洗ってきてくれる?」
「ありがとうアニー、今日のメニューはなんだい?」
「今日は野菜のポトフよ」
「うちで作った野菜のポトフだね。ジャガイモは特別な肥料を使って何度も試行錯誤した品種で、人参は甘みの強い北方のものをランベルの気候に合うようにしたもの。玉ねぎは…」
えっ、めんどくさ…。
あれ?私の想像のマルコスさん、こんなだったっけ?
目の前のマルコスさんはきゅうりについて熱く語っている。
なんか…ちょっと違うのかも。
マルコスさんには悪いが、勝手な想像で少し冷静になってみると、ずっと野菜について話し続けているマルコスさんの目が少し怖いような気がしてくる。
「あ、ありがとうございます。マルコスさんもお忙しいでしょうから、これを食べたらそろそろ帰りますね」
私がジリ、と後退りするとマルコスさんは私の手を掴んだ。
「そうだ、そうだよ。君になら見せてあげる。俺のとっておきの畑を!」
「え?とっておきの畑?」
私が聞き返すとマルコスさんは嬉しそうに笑った。
「そうだよ、まだ誰にも栽培してるところを見せたことのない特別な作物なんだ。きっと驚くよ」
こっちこっちと、腕を引っ張られ、つい好奇心に駆られてついて行ってしまった。
マルコスさんは、外からは見えないように木の塀で覆われた一角の扉の鍵を開けた。
え…、畑に鍵…?
「見て、アニー。俺の秘密の畑だよ」
そこは一面に背の高い草が生えていた。
よく見ると濃い緑の葉はギザギザして見覚えがある。
「これは…、まさか」
確か以前、パーティで依頼を受けた時に見た。
盗賊団が攫った女の子達を薬漬けにするために麻薬を密売していて、そのアジトを潰して欲しいという依頼だ。
「知ってるんだね。すごいよ、アニー。これは麻薬の元になる植物だよ。僕はこれを売って大金持ちになるんだ。決して君に苦労はさせないよ」
……。
アジトで麻薬漬けにされていた女の子達は酷いものだった。
その中毒性に我を忘れ、虚な眼差しでもっともっとと薬を強請っていた。
「ひとつ教えてください。マルコスさんは、麻薬が何かわかっててこれを作ってるんですよね?」
マルコスさんは私に向かって得意げに言った。
「ああ、もちろん分かっているよ。違法だということもね。でも心配いらないよ、アニー。僕自身は決して薬をやらないし、これを売ってもお役所は知らんふりをしてくれるという確約があるんだ。捕まることなんてないから安心してくれ」
「そう、わかっててやってるんですね…」
私の頬を一筋涙がこぼれた。
私はそばに置いてあった、畑を耕す鍬を手に取った。
「では、さようなら」
読んでいただきましてありがとうございました。
引き続き次回もお読みいただけると嬉しいです。
返事が返せないこともありますが、感想必ず読んでます。ありがとうございます。
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