15、小さなお客様
いつも読んでいただきありがとうございます。
誤字脱字が多すぎる作者は皆様の報告ですごく助けられています。
今作も楽しんでいただけると嬉しいです。
「こんにちは〜」
「あ、マチルダさん、ジャン、いらっしゃいませ」
4、5歳くらいかな。
小さな男の子を連れたお母さんがやってきた。
「こんにちは」
男の子は可愛い声で私に挨拶してくれる。
「こんにちは、ジャンくん。私はアニー。よろしくね」
ジャンは照れたようにお母さんのスカートの後ろに隠れた。
かわいいな。
この子がさっき言ってた常連さんの子供かな?
全然騒がしくないけど…。
「新しい子が入ったのね。良かったわ。私はマチルダ、お針子をやってるの。よろしくね」
「はい、よろしくお願いします」
その後もお客さんはひっきりなしに入ってきた。
私は昨日のように水のグラスをテーブルに置いては、できた料理をライラさんと提供していく。
マチルダさんのテーブルでは、ジャンが食事に飽きてキョロキョロし始めた。
「アニー、ジャンに気をつけて」
ライラさんが私にこっそり耳打ちする。
ジャンは一人で椅子から降りると店内をウロウロし始めた。
「ジャン、椅子に座りなさい!」
マチルダさんが言うもジャンは聞いてないようだ。
「あっ!」
ジャンが急に走り出し、帰ろうとして椅子を引いて立ち上がったお客さんにぶつかった。
ジャンはその場で尻もちをついたが、お客さんはよろけて、ちょうど熱々の鉄板ステーキを運んでいる途中のライラの背中にぶつかった。
「危ない!」
ジュージュー音を立てている熱々のステーキと、ステーキを乗せていた鉄板がライラの手を離れ、別々にジャンの方に向かって飛んで行った。
一瞬の出来事だ。
私はとっさに身体強化でジャンプすると、トレイで鉄板をキャッチし、さらに宙を飛んでいる肉も鉄板の上に収めた。
タンッと軽い音を立てて着地した私のトレイの上には、鉄板の上のお肉がジュージュー音を立てていた。
「今、何が…?」
呆然とする店内の空気をなんとかしようと私は大きめの声で言った。
「いやー、たまたま私の方に飛んできた鉄板とお肉を、運良く偶然キャッチできて良かったです」
ハッとしたライラも大袈裟に言った。
「すごーい、偶然ナイスキャッチしたのね。誰も怪我しなくて良かった。運が良かったわ」
何があったのか呆然としていたお客さん達も、そういうことと認識してくれたらしい。
店内はホッとした空気が流れた。
「大事にならずに幸運だったな」
「すごい、偶然だ」
マチルダさんは何度もすみませんと頭を下げて、ジャンに危ないからもう店内をウロウロしないようにとしっかり言い聞かせた。
こっぴどく怒られてジャンはしょんぼりしていたが、帰り際に私のところに来ると一言言った。
「アニー、助けてくれてありがとう」
「ふふ、なんのことかわからないけど、どういたしまして」
私はジャンに向かってウインクした。
少しはおとなしく座ってくれるようになるといいんだけど。
読んでいただきましてありがとうございました。
引き続き次回もお読みいただけると嬉しいです。
返事が返せないこともありますが、感想必ず読んでます。ありがとうございます。
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