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陽だまりの陽炎。~ちょっと幸福な異世界転生魔法エンジョイライフを目指す~  作者: 三月べに@『執筆配信』Vtuberべに猫
序章・転生少女の手抜きの魔法エンジョイスローライフ

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37 犯罪組織に目を付けられた領地。



 父が顔色を悪くする新しい住人は、あの家主一人ではない。

 ガラの悪い連中が街をうろつくようになったと、孤児院の子ども達も不安を口にする。

 街の住人とは、誰もが知り合いのような小さなコミュニティだ。孤児院の子ども達も、街の住人に親切にされて挨拶をし合ってきた。だから、街を出歩いて知らない人がいれば気付く。それがガラの悪い人達なら、怖がるのも無理はない。


「気を付けておいて」

「うん……」

「わかった」


 孤児院の最年長であるルジュに頼んでおく。同じ年のレフも頷いた。


「ベラもわからないんだ?」

「……ええ」


 ルジュの問いに、父から教えてもらえなかったとは言えなかった。


「まぁ、調べてみるよ。いつまでいるのか」


 一時的だと願う。偵察のために、私も街の様子を見に行こうか。


「街行くの? オレも行く」

「じゃあオレも」

「ミリーも!」


 いつもなら他の子どももついていくと言い出すはずなのだが、ガラの悪い新参者に対しての不安が勝っていてついてこなかった。

 孤児院を出て、広場の方に足を運んだ。


 すると、そこで騒ぎが起きていることに気付いた。ちょうど酒場の前で、領民に暴力を振るう男達を目撃する。その領民はもちろん、顔見知りの男性だ。暴力を振るうのは、ガラの悪い新参者達だ。


「何をしているんですか!」


 私は声を上げて、止めにかかる。

 しかし、連中は暴力を止めたが、こう言い放った。


「子爵様には許可をもらっている」

「……どういう意味ですか?」


 私が領主の娘だとわかっての発言らしいが、どういう意味だ。

 父の許可がある? わからなくて、顔をしかめた。


「ご令嬢様に手を出さなければ、好きにしていいって許可をもらっているんだ」


 あっけらかんと明かすニヤついた男に、私は面食らう。

 昼間から酒場の中から取り出したのか、酒瓶を呷って飲み干す。どいつも酒臭く、下卑たニヤつき顔。不愉快だ。


「私にさえ手を出さなければ……好きにしてもいい? それは暴力や盗みを見逃すと、私の父が許可したってことですか?」


 俄かに信じがたい。

 睨むように問い詰めても、痛くも痒くもないと言わんばかりに、男どもは嘲笑った。


「そうだ! この領地でオレ達は、何をしても無罪なんだよ!!」


 両腕を広げて、高らかに声を上げる男は、やっぱり酔っている。

 そして、暴力を受けて蹲っている領民に蹴りを入れた。


 私が領民を助けるために、踏み出したところで。


「ベラ!!」


 私を呼びつけたのは、父だ。どこかに出掛けていたのか、馬車から飛び出した父は、私の元に駆け付けると腕を掴んだ。


「関わるなと言っただろ! 帰るんだ。しばらく、外出は禁止だ」


 興奮している父は、暴力を振られた領民も酔った男達もそっちのけで、私を叱って連れ帰ろうとする。

 それを見て、男達が言っていることは事実だと思い知った。


「お父様。この人達は誰? 犯罪者なの?」

「っ……」


 この男達は、犯罪者。父は、犯罪者を領地に入れた。

 しかも、私の身の安全だけを守らせて、あとは全て許しているという。


「犯罪者だって知っていながら、領地に来ることを許したの!? 私の安全を守るためだけにっ、領民には好きに暴力を振っていいだなんて許可を出したの!?」


 私を馬車まで連れて行こうとする父だったが、私は踏み止まる。

 街の中で、すっかり注目を浴びているにもかかわらず、声を上げて父に問い詰めた。


「仕方ないんだ!! エラーナは守れなかった! ベラをっ! ベラだけでもっ! 守るためにはッ……!!」


 切羽詰まった父の悲痛な肯定。

 母エラーナを亡くした父は、残された娘の私だけでも守りたい。そう言ったのだ。


 初めての激怒で、目の前が真っ赤になった。


 激情に駆られるがままに後ろを振り向いて男どもに魔法を放とうとしたが、ソードンさんが手を掴んで止めてくる。


 頭ではわかっているのだ。

 父のようなしがない子爵では、力ある犯罪者相手には敵わないかもしれない。だからといって。



「ふっ、ざけんなッ!! お父様は領主でしょ!? お母様を亡くしたからって、遺された私を守るためって! それで領民を差し出すなんて、許されるわけがない!! 私が許さないッ!!」



 激高なんて、生まれて初めてかもしれない。


 母はこの領地のために尽くした。領民も母に感謝していた。

 そんな領地に犯罪者を入れた。領民に手を出していい許可を出した。


 残された娘の私を守るためだけに。

 許せなかった。私のために、領民を捧げるなんて。

 怒りでどうにかなりそうだった。


「許さないって。力ない貴族の当主様の娘に、何が出来るんだ」


 お腹を抱えて笑う男を振り返り、睨み付ける。


「ゴミクズを潰す」


 私は挑発の言葉を低く吐き捨てた。


 挑発に乗って警棒を振り上げる男を、魔法で吹き飛ばすなんて、簡単なことだ。

 魔法で叩きのめすなんて、私には簡単なことなのに。


 なのに、横から突っ込んできたソードンさんが抱き締めて止めたのだ。


「落ち着け! ここで暴れたら被害がマズい! 何より、ここで暴れて、解決出来るわけじゃないだろ!?」


 きつく抱き締めて耳打ちして、私を説得してくる。その両腕で、私を拘束をして。


 確かにここで暴れたところで、解決するとは限らないと、冷静さを取り戻す。


 この男どもはいわば手下。きっとあの屋敷であった壮年の男が、リーダー格だろう。

 魔法という強い武器を持っていても、犯罪者全員を倒せない。そこまで魔力は、きっと持たない。


「なんだよ、来ないのかよ?」


 警棒を回す男が挑発を返してきても、私は唇を噛み締めることしか出来なかった。

 男どもは酒場に戻っていく。


 見ていた領民は、隠れるように散った。暴力を受けていた領民も他の人の手を借りて去っていく。


「ルジュ達も、孤児院に帰るんだ」


 ソードンさんは、ルジュ達に帰ることを促す。

 私は誰の顔も見られなかった。私のせいで、領民一同は危険にさらされている。合わせる顔がない。


 馬車に乗せられて、家に帰った。家に帰っても、父とは口を利かない。互いに無言だった。

 ピリピリと、空気は張り詰めいている。屋敷中、そう感じた。


「ベラお嬢様……」


 ジェラールの息子であり、父の補佐官であるタシュルが部屋に入ってきた。


「どうかお父様のことを誤解なさらないでください」

「……誤解って?」


 機嫌の悪い私は、机に頬杖をついたまま、聞き返す。


「きっかけは、ドルドミル伯爵様が差し向けた視察官です……。その者が、あの犯罪組織を呼び寄せたのです」

「ドルドミル伯爵……?」


 伯父様が差し向けた。この領地のために、視察官を送ってきたのは聞いていた。

 私は頭を抱えるように、額に手を当てる。

 この領地を助けるために差し向けた視察官なのに、犯罪組織が目を付けてしまったのだ。


「犯罪組織は人身売買に手を染めているらしく……母似で美しく育ちそうなベラお嬢様を売るような脅迫を匂わしたのです。イザート様は苦悩をした結果、受け入れるという選択をしたのです。他に手はなかったのです」


 人身売買。思った以上に大きな組織のようだ。ドルドミル伯爵がきっかけ。

 チッと、大きな舌打ちをする。この場にはソードンさんも同席していたが、そんな私をこの状況では咎められないようだ。


 保守的な領地経営で領民を守ってきたはずの父が、娘だけの安全を選んだことにイライラし、こめかみを押さえる。


「どれほどの規模の犯罪組織でしょうか? 街の戦力で対抗出来ますか?」

「保安騎士団に務めていたオレの経験と知識からすれば……人身売買も行っているあの組織と戦うには、圧倒的に不利です。屋敷には少なくとも二十人以上はいるでしょう。それにその滞在人数だけじゃない。他にも他所に仲間はいるはずです。人身売買をしているなら、関与している人間の数は計り知れないですから……」


 ソードンさんに尋ねると、そう曇らせた顔で答えてくれた。


「一番近い保安騎士団に情報を流しながら、捕縛してもらうことがいいと思います」

「……保安騎士団、ですか」


 マラヴィータ領地にいるのは、狩人くらいだ。魔物などの害獣駆除で、領地の治安を守ってくれている。

 警察機関とも言える保安騎士団は、この領地にはいない。一番近くと言っても、馬車で何日かかるか。


「その間、領民がさらわれないとも限らない……。特に孤児院の子ども達が心配」


 一番に手を出しやすいだろう。売り飛ばされかねない。


「そうですね。避難した方がいいと思います」

「アシュリー叔母様宛の手紙を持たせて、一時的でも安全を守れるように、孤児院の皆を王都に向かわせます」


 便箋を取り出して、私はペンを走らせた。

 子ども達の安全のためだ。院長に引率してもらって、避難させよう。

 タシュルには、朝に子ども達が隠れて乗り込む荷馬車の手配。ソードンさんには、夜の街の状況を探るように頼んだ。

 ハク達には、例の屋敷にいる敵の数や見張りの位置を探らせに向かわせた。

 一人になった私は、脱出計画を伝えるために夜道を進んで孤児院へ。

 忍び込むと、一同は昼間に遊んでいる部屋で一ヶ所に集まっていた。


「何しに来ただよ」


 敵意を剥き出しに睨み付けるルジュに、私は面食らう。

 その真っ赤な瞳が睨みつけてくるなんて、初めてのことだ。


「孤児なんて、簡単に生贄に差し出せるんだな。流石は、貴族のお嬢様だ!」


 軽蔑を込めて怒鳴りつけるルジュ。

 あれを見て自分の身を可愛さに、領民すなわち孤児院の子ども達を犠牲にした。そう思われていることに、こちらも怒りが沸く。こっちだって許せないというのに。


「一番付き合いが長くて、よくわかり合っている幼馴染だと思っていたのは、私だけなんだ。別にいいよ。お前が、そうやって私を思い込んでも。それまでの仲だったんだろ」

「はっ!?」


 冷たく吐き捨てて、私はルジュとバチバチと殺伐の睨み合いをした。



 


幼馴染と険悪……!

筆が乗っているうちに書き進めたいですね!

今月中に1話冒頭のシーンの回収を目指したいです!


続きが気になる。

ルジュとベラの仲直りが見たい。

などなど、リアクションください!

ブクマとポイントも、励みになります!


よろしくお願いいたします!

2026/02/06

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