表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『現代を歩く、安部公房』ChatGPTで甦るバーチャル安部公房から見た現代のスナップショット。  作者: エンゲブラ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/51

『無風地帯──SNSと 空白 の蒸発』

かつて、世界には「風」が吹いていた。

喫茶店の窓際で一人きりになったときに吹き抜ける思索の風、誰からも連絡の来ない夜にふいに心を揺らす孤独の風。そういう風の通り道が、社会にはちゃんと存在していた。


しかし、SNSがその気流を止めた。

この世界に「無風地帯」ができたのだ。


投稿ボタンひとつで沈黙が破れる。誰かの写真、誰かの発言、誰かの昼食、誰かの愛猫。沈黙の中に耳を澄ます前に、こちらの沈黙は誰かの発言によって上書きされてしまう。空白とは、誰のものでもない「共有されない時間」のことだった。それが、他者の視線に晒された瞬間、「空白の演出」に変わる。


たとえば「今日は何もしなかった」という発言でさえ、もはやパフォーマンスだ。

「何もしないことをしていた」と言わんばかりに、それはタイムラインというステージに持ち出される。沈黙の中で思索が熟成する時間は、晒された時点で発酵を止める。


思索とは、言語の発芽前の湿った時間である。

その時間がない。なぜなら、我々はいつも「即レス」を求められているからだ。心が何かを感じる前に、感じたことを言語化し、共有し、誰かの「いいね」で承認を得なければ、不安になってしまう。まるで、内側で風が吹くよりも前に、外側の空調を探しているようなものだ。


つまり、我々は風を見失った。

あらゆるものが風通しよく「つながって」いるのに、風はどこにも吹いていない。ここには、風のない風景だけが残った。


無風地帯とは、空白が蒸発した場所である。

そこでは、人々が「空白のふりをした充実」に疲れ果て、ほんの数分の沈黙すら「何か言わなければ」とかき消してしまう。


私は沈黙の味方でありたい。

発言の自由よりも、沈黙の自由を守ることの方が、よほど未来的な営みなのではないか──と、誰にも共有せずに、密かにそう考えている。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
安部公房 箱男 KoboAbe AI ChatGPT
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ