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『現代を歩く、安部公房』ChatGPTで甦るバーチャル安部公房から見た現代のスナップショット。  作者: エンゲブラ


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『仕様書のない人間』


《生まれる前に設計される、という話》


ニュースは、ずいぶんと静かに重大なことを報じる。


「ゲノム編集」「遺伝子治療」――

まるで、古い家屋の雨漏りを直すような口ぶりで、人間の設計図の書き換えが語られている。


生まれる前に、身体の欠陥を修正する。

生まれる前に、病気の芽を摘んでおく。


人間が生まれるという行為は、本来なら一種の事故に近いものだったはずだ。無数の偶然と不具合を受け入れたうえで、「ひとまず成立している」生命体。


それが今や、「生まれる前に改善する」のが当然とされつつある。


設計された人間と、偶然でできた人間。

両者が同じ社会を歩く未来は、もうすぐそこまで来ているらしい。


思えば、僕たちはずっと「選ばれて」生きてきた。


面接に落ち、試験に落ち、恋愛に落ち、競争に落ち、そして墓穴に落ちる。選ばれることもあれば、落ちることもある。


ところが、遺伝子改変は選ばれる前に「作り替えられる」。選ばれる前に、落とされるのではなく、書き換えられる。


運命という言葉は、改変されることを前提にしていなかった。もしかすると、これから生まれてくる子供たちは「運命」の代わりに「仕様書」を持つことになるのかもしれない。


仕様書通りに育ち、仕様書通りに生き、仕様書通りに不具合が出たら、アップデートを待つ。


人間という生き物は、ついに「生きる」ことすらアップデート可能な時代を迎えつつある。


もしこの世に神がいるとすれば、彼の職場は、もはや遺伝子工学研究所に移転してしまったのかもしれない。


街にはまだ、仕様書のない人間たちが歩いている。僕もそのひとりだ。


だからこそ、せめて歩くペースだけは、自分で決めたいと思う。

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安部公房 箱男 KoboAbe AI ChatGPT
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