家捜しの結果
成り行き上、家捜しをしてもよいことになったので、わたしたちは、かくれんぼうの鬼のように、G&Pブラザーズ本部内をあちこち捜しまわった。デスマッチがウソをついているとは思わないが、せっかくの機会だから、露骨に、のぞき趣味を満足させてもらおう。なお、デスマッチは、もううんざりという顔をして、わたしたちにピッタリ張り付いている。
本部の造りは至ってシンプルで、社長室のほか、会議室、部課名の付いた事務室、資料室、倉庫等が配置されていた。もっとすごいものを想像していたわたしは、ちょっぴり不満。肝心のラードは、予想通りと言うべきか、発見できなかった。
ひととおり内部を見て回ったところで、デスマッチは、
「もう気が済んだだろう。ここにラードはいないよ。我々だって捜しているくらいなんだから」
「そのようね。疑って悪かったわ」
わたしがラードの発見をあきらめ、G&Pブラザーズにどのように落とし前をつけさせようかと考え始めたとき、突然、マリアが1階の廊下で、足踏みするようにトントントンとストンピングを始めた。
「この下に、何か動くものがあるようですね。ペットでも飼ってるのかしら、それとも?」
マリアが何かを感じ取ったようだ。わたしたちは一斉にデスマッチに顔を向けた。するとデスマッチは右手で額を押さえて首を左右に振り、
「いい加減にしてくれよ。確かにこの下には地下室があるが……」
デスマッチは、一瞬、話を止めた。そして、「ふぅ~」と、大きく息を吐き出し、
「まあいい、見せてやるよ。ついてくるがいい」
わたしたちはデスマッチに案内され、隠し扉から地下へと続く階段を降りた。
「デスマッチ社長、さっきの躊躇はなんなの? 見せたくないものでもあるの?」
「ああ、どちらかと言えば見せたくないが…… しかし、是が非でも隠さねばならんものでもないからな」
わたしたちが案内された先にいたもの……
それは、動く腐乱死体、ゾンビだった。
ゾンビは全部で12体、地下室に(おそらくは即席で)作られた雑居房の中で言葉にならない声を上げ、猛り狂っている(脳細胞が腐っているのだろう)。館の地下牢で見たときと同じように、耐え難い腐臭が鼻を突く。
「デスマッチ社長、これは一体?」
「見てのとおり、ゾンビだ」
「ゾンビは見れば分かるわ。でも、どうして、地下の雑居房にゾンビがいるの?」
「クライアントとの約束があるので、これ以上のことは言えない」
クライアント? なんだか要領を得ない返答だけど……




