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百合百景 ~二分で読める百合短編~  作者: 荒井チェイサー
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こたつガリバー

「こたつガリバーがやりたい」

 私達仲良し4人組の中で、おバカ担当の千春がそう言った瞬間に、彩がため息をついた。

「また千春の意味不明な謎語が出たよ……はい、加賀美さーん訳して」

 人を指名する時に変な癖のある英語教師の真似をしながら、彩が加賀美を指さした。

「えーと、多分ここにあるコタツに入って何かしたいってことじゃないかな?」

「流石ですね、加賀美さん。依織はどう思う?」

 このままいくとそのこたつガリバーとやらをやる羽目になるのがわかってた私は、視線を千春にやって顎で彼女をさした。

 そこには、説明する気が満々な千春が立っていた。

 誰も説明を求めていないのに、彼女は話し始めた。

「こたつに入ってさ、頭だけ出す人と、左手だけ出す人、右手だけ出す人、足だけ出す人ってわけて出してさ、写真撮ればガリバーみたいに大きな人がいるみたいに見えて面白くない?」

 千春以外の全員が、なんでこいつはこんなにおバカなんだろうと思いながらも……じゃんけんが始まった。

 そう、誰しもが頭の役をやりたがったのだ。


 結果は、頭を彩が、手の部分は私と加賀美、言い出しっぺの千春は足だった。

 結果に地団太を踏んでいた千春だったが、彩に「ガキね」と言われて一瞬で黙った。

 不満気に頬を膨らませてはいたが。



 狭いこたつにみんなでワイワイ言いながら入り込む。

 中の、嫌になるような暑さのせいで、外に出した片手が心地よい。

 全員が配置についた瞬間、何かが達成できたと思った。

 放課後にこんな風におバカなことができるのは今だけ、そう思うと千春がかわいく思えてくる。


 ねえ、千春……。

 本当は一つだけ言いたいことがあるんだ。

 多分、あなたも気付いてると思うけど……。

 だから、黙ってるんだよね?

 今すぐでも……伝えたいな。








 誰がこの姿写真撮るんだよっていう、この気持ちを。

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