表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百合百景 ~二分で読める百合短編~  作者: 荒井チェイサー
91/137

冬は嫌い、だって……

「冬は嫌い、だって寒いから」

と、シンプルな言葉で自分の冬嫌いをまとめた千佳は出していた頭を毛布の中へと引っ込めた。

「こーら、千佳。そんなこと言ってたら起きられないよ」

 まるでお母さんみたい、なんて思いながら毛布の中に逃げ込んだ彼女に片足を乗せて踏みつける。

 先程まで自分も毛布の中にいたというのに、素足でフローリングを歩いたせいで足の裏がすっかりと冷たくなっていた。

 足の裏から伝わる温かさが、心地いい。

「いいです、私は虫なんです、このまま春まで冬眠しますさようなら……」

 言いたいことを全て言った後、わざとらしくイビキをかいてみせた愛おしくもバカな存在である彼女に少々のイラだちを覚えた私は、毛布の中に入り込んだ。

「おやおや、美恵も一緒に冬眠ですか?いいですよいいですよ、春まで寝ましょう寝ましょう」

「そうね」

「ですよですよ」

「ああ、本当にここは温かいのね。まるで天国……」

「でしょうでしょう?美恵まで来てくれて本当に天国ですよ」

「なら、地獄を見せてあげるわ」

「へ?」

 彼女が驚いた声を出した直後、中から布団を蹴って剥がし、彼女を正面から抱きしめ、背中から冷たくなった手を入れ、パジャマのズボンの裾をずらして彼女の脛に足の裏を添わせた。

「ぎゃあああああああ!寒い!冷たい!鬼!悪魔!」

「あー、あったかい」

「鬼!鬼です!ここは地獄です!ああああああああああああああ!」


 寝室に響く彼女の絶叫を聞きながら、私は彼女の温もりを楽しんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ