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百合百景 ~二分で読める百合短編~  作者: 荒井チェイサー
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その手の窪み

「ねえ、一番強い感情はなんだと思う……?」

 奈々美が私にそう聞いた時、笑っていたのを思いだす。

「『好き』じゃないの?」

 私の言葉を聞いて、真っ黒な前髪を揺らしながら、彼女は笑った。

 やっぱりね、と言っているかの様で、少しムカッとした。

「違うよ。やっぱり仁美は乙女だねえ」

 嘲笑うかの様な言い方がムカついて、彼女の手を取って手の甲に爪を立てた。

「……仁美、それが正解」

 立てていた爪に力を込めるのをやめると、彼女は窪んだ手の甲に指を這わせた。

「どういうこと?」

「人間の中でね、一番強い感情は憎しみだよ。ほら、今さっき瞳が私に付けたこの窪みなんか、素晴らしいぐらいに憎しみの塊だよ」

 うっとりとした顔で手の甲を撫でる彼女には、惚気たような空気が纏わりついている。

「変態」

 冷たくそう言い放つと、彼女は顔をパアッと明るくさせた。

「いいなあ、仁美の言ったその言葉、最っ高に憎しみが籠ってていい!もう一回、もう一回言って!」

 いつもおしとやかな空気を醸し出してる彼女が、自分のイメージを崩して私にすがりつく。

 どうしよう、ほんとに変態さんだ、この人。


 どうしよう、ほんとに。




 もう一度言いたくてたまらなくなってる自分が……一番の問題な気がした。

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