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マチガイデイズ
「別れようよ」
カナはそう言ってきたミキを抱き締めると、耳元で『ありがと』と呟いてその場から離れた。
後ろから『待って』と言われるのを、ほんの少しだけ期待している自分を振り切るかのように、早足で歩いて行く。
私達は、何を間違えたのだろうか。
手を繋ぎ、キスをして、互いを求めあっただけなのにどこかが間違って……いたのだろうか。
窓の外に目を向けると、目線の高さに桜の花弁が舞っていた。
散り逝く花弁は、もう二度と花に戻りはしない。それは、わかっている。誰も時間を戻す事はできないのだ。
でももし、出会った頃に戻れたなら。私達は間違いを犯さないだろうか。
カナは、そう思いながら空へと視線を移す。
多分、間違える。
何度も
何度でも
それすらも楽しんだから。
潤んでいく空の青さをごまかすために、カナは更に上を向いた。




