表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百合百景 ~二分で読める百合短編~  作者: 荒井チェイサー
5/137

傷口

『血は一番汚いモノ』

 今日の保健体育で、私はそう習った。

 それが誰の血でもそうなのだ。

 どれだけの金持ちも、どれだけの無垢な少女も、どれだけの卑怯者も、全員が汚い血を体に巡らせながら生きている。

 その話を聞いて私の好きな彼女にも、その汚いモノが流れているのだと思うと、背筋に言いようのない寒気を感じた。

 外見から、穢れとは無縁に見える智にも、そんなモノが流れている。そんな現実に耐えられないのかもしれない。


 けれど、それは違っていた。


 その日、彼女の家に行き、いつものように制服を脱いで行為を始めようとしたその時、指に傷があるのを見つけた。

 理由を聞くと、休日にカッターナイフを使っていた際に誤って、自分で自分の指を切ってしまったとのことだった。

 私はほっとすると共に、その傷に惹かれた。

 汚いモノが溢れ出ていたであろう、その傷跡に。

 彼女の手を取り、傷のある指を口に含んだ。

 裂けている場所を犬歯で噛むと、生暖かい感触が舌の上に広がり、やがて鉄の匂いが口内を満たした。

 息を荒くする彼女の顔が、いつもよりも赤い。

 血が出ているであろう場所を奥歯まで入れると、私は甘く噛み始める。

 とめどなく出てくる血を飲みながら、私は背筋の寒気と、彼女の痛みの顔を楽しみ始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ