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散リユク煙
「タバコ、臭い」
部屋の中で煙草を吸っていた私に向かって葵はそう言うと、部屋中の窓を開け始めた。
「寒いんだけど」
目の前で赤々と燃えている煙草の先端を目の端で見ながら、抗議をする。
「なら、早く消せばいいじゃん」
「まだ、吸い始めたばっか」
「そんなに何本も吸ってるくせに」
机に置かれた灰皿に溜まっている吸い殻に視線を寄越しながら、彼女はこちらへと歩み寄る。
「制服に臭いつくし」
まだ吸う部分が大量に残っている煙草を取り上げ、灰皿に押しつける。
「じゃあ、近付かない方がいいんじゃない?」
意地悪くそう言うと、私に背中を預ける体勢で座った。
「近付きたいし」
顔を後ろに反らしながら、葵は目を閉じた。
自然に唇を合わせる。
「臭いんじゃないの?」 もう一度意地悪を言うと、彼女は視線を逸らした。
「別に……嫌いとは言ってないし……」
もう一度唇を合わせる。
窓から入る風の冷たさを忘れさせるぐらいに、葵の唇が熱くなっていた。




