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百合百景 ~二分で読める百合短編~  作者: 荒井チェイサー
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私だけのストーブ

 教室のストーブの前で暖をとっていた奈美を、霧江が後ろから抱き締めた。

「おはよう」

「おはよ、霧江」

「手袋忘れちゃってさ。手が寒いんだよね」

「いいよ」

「ありがと」

 横にずれようとする奈美を制しながら、霧江は手を奈美の頬に当てた。

 絶叫が廊下まで響き渡る。しかし、霧江は手を離さずにそのまま暖をとりつづける。

「いやー、ナミナミはあったかいなあ」

「離してー、寒いー」

 ジタバタと暴れる奈美を堪能しながら、霧江は明日から手袋をせずに学校に来ようと強く思った。

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