眼鏡の君へ
メガネ美少女、なんて言葉は私の隣で泣いている恭子のためにあると思っていた。
小さな体に、ぶかぶかの制服、そして、メガネ。しかも今の季節はマフラーまでしてくれている。
考える限り最高の組み合わせを揃えている私の友達は、今は泣いている。
「どうしよう、さーちゃん……」
登校中に恭子が転倒して、自分のメガネを壊してしまったのだ。
ツルの折れたメガネはかけることも出来ず、取敢えずメガネ無しで登校することになった。
ベソをかきながら腕にすがり付いてくる恭子の頭を撫でながら『大丈夫、大丈夫』と声をかける。
「……授業とかどうしよぉ」
「私がノートとってあげるよ」
「ごめんね……」
「いいからいいから、良かったら食事の世話に、トイレまでお付き合いしましょうか?」
「……それはやめてよぉ」
か細い声でそれを拒否する恭子の頭をポンポンと叩く。
空を見上げて、冬の風を頬に当てる。
『メガネ取った恭子って、こんなにかわいいんだ……』
声にしてはいけない言葉を心の中で叫んで空に放って、また、前を向いた。
「もう……こんなの嫌だからコンタクトにしようかな……」
「ダメだよ、恭子はメガネが似合うからメガネにしときなって」
「そうかな……ちーちゃんがそう言うなら、その方がいいかもね」
無言で頷いて、その言葉に同意を示した。
そうだよ、その方がいいよ。
だってさ、メガネ無しの顔、私以外に知ってほしくないじゃない?
そんな言葉が浮かんで、私はまた空を見上げた。




