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百合百景 ~二分で読める百合短編~  作者: 荒井チェイサー
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眼鏡の君へ

 メガネ美少女、なんて言葉は私の隣で泣いている恭子のためにあると思っていた。

 小さな体に、ぶかぶかの制服、そして、メガネ。しかも今の季節はマフラーまでしてくれている。

 考える限り最高の組み合わせを揃えている私の友達は、今は泣いている。

「どうしよう、さーちゃん……」

 登校中に恭子が転倒して、自分のメガネを壊してしまったのだ。

 ツルの折れたメガネはかけることも出来ず、取敢えずメガネ無しで登校することになった。

 ベソをかきながら腕にすがり付いてくる恭子の頭を撫でながら『大丈夫、大丈夫』と声をかける。

「……授業とかどうしよぉ」

「私がノートとってあげるよ」

「ごめんね……」

「いいからいいから、良かったら食事の世話に、トイレまでお付き合いしましょうか?」

「……それはやめてよぉ」

 か細い声でそれを拒否する恭子の頭をポンポンと叩く。

 空を見上げて、冬の風を頬に当てる。

『メガネ取った恭子って、こんなにかわいいんだ……』

 声にしてはいけない言葉を心の中で叫んで空に放って、また、前を向いた。

「もう……こんなの嫌だからコンタクトにしようかな……」

「ダメだよ、恭子はメガネが似合うからメガネにしときなって」

「そうかな……ちーちゃんがそう言うなら、その方がいいかもね」

 無言で頷いて、その言葉に同意を示した。

 そうだよ、その方がいいよ。

 だってさ、メガネ無しの顔、私以外に知ってほしくないじゃない?

 そんな言葉が浮かんで、私はまた空を見上げた。

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