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百合百景 ~二分で読める百合短編~  作者: 荒井チェイサー
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花と手

「写真、撮らせてほしいな」


私が園芸部の佐和子にそう言うと、彼女は今植わっている花を見てブツブツと言い出した。

しばらくして


「ヒマワリが一番きれいに咲いてるから、これがいいと思うよ」


グンと伸びた茎に、太陽と見間違えるような活力ある色を帯びた花。

確かに写真に撮れば栄えそうなものだった。

けれど、私が求めているのはそういうものではなかった。


「確かにきれいだよ、だけど……私が欲しいのは美しいものなんだ」


佐和子は首をかしげる。


「由奈の言うことって、たまに意味わかんない。ゲージュツカって感じ」

「そうかな、私としては普通に説明してるつもりなんだけど」

「つもりなだけなんだよ」

「んー……私が撮りたいのは花じゃないの。佐和子の手なんだよね」

「手?」

佐和子が自分の手を見る。

「なにも美しくないよ?泥だらけで、何も面白みがないし」

「そう?泥と白い肌が栄えて、すごくきれい」

「そうかな……」

「うん、だから撮らせてくれる?」

「別に、手だけなら」


佐和子の両手の上に今から植える花を乗せて、写真を撮った。


家に帰り、カメラをチェックする。

両手に乗せられて空を見上げている花、そしてそれを支える土まみれの無垢な手。

汚れた手を見て、彼女を穢した事実に興奮した。

そして、自分の穢れを自覚して……少しだけ死にたくなった。

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