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百合百景 ~二分で読める百合短編~  作者: 荒井チェイサー
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14:00 知らない鳥

 外を一緒に歩くと『姉妹みたいだね』と言われる。

 ほぼ毎日一緒にいるせいか、顔も行動も似たようだった。


 でも、どれだけ体を重ねても一緒にはなれない。

 私達は、二つの体に分かれた別々の『何か』でしかない。

 その事実が、歯がゆい。


 遠くで知らない鳥が囁くように鳴く、午後2時。

 私は、彼女を求めた。

 5月だというのに、外は夏のように暑く、部屋の中に入ってくる風も温い。

 そんな中で、求めた。

 けれども、彼女はそれを拒否した。


「ごめんね……今日は旦那と」

「そっか、痕が残るとまずいもんね」


 妙な間が流れた後、彼女の左手をとり、人差し指を噛んだ。


「んっ……あっ……」


 彼女の甘い吐息が漏れ出るのと同時に、口の中に鉄の味が広がった。

 いつもなら、私を満たしてくれるこの指に、呪いをかけた。

 これは、私の物であるという……ワガママで傲慢な呪い。


「今日は帰るね……」

「うん……ごめん……ね?」

「いいよ、大丈夫。それに、傷をつけたのは私だから『ごめんね』は、私の方」

「本当は、そんなこと思ってないくせに」


 不敵に笑う彼女の言葉に、微笑み返して玄関を出る。


 私も、今日は夫に抱いてもらおうか……?

 そんな考えが、頭をよぎった。

 目を閉じて、想像して、抱いてもらう。

 彼女に抱いてもらってるのだと、意図的に錯覚して。

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