14:00 知らない鳥
外を一緒に歩くと『姉妹みたいだね』と言われる。
ほぼ毎日一緒にいるせいか、顔も行動も似たようだった。
でも、どれだけ体を重ねても一緒にはなれない。
私達は、二つの体に分かれた別々の『何か』でしかない。
その事実が、歯がゆい。
遠くで知らない鳥が囁くように鳴く、午後2時。
私は、彼女を求めた。
5月だというのに、外は夏のように暑く、部屋の中に入ってくる風も温い。
そんな中で、求めた。
けれども、彼女はそれを拒否した。
「ごめんね……今日は旦那と」
「そっか、痕が残るとまずいもんね」
妙な間が流れた後、彼女の左手をとり、人差し指を噛んだ。
「んっ……あっ……」
彼女の甘い吐息が漏れ出るのと同時に、口の中に鉄の味が広がった。
いつもなら、私を満たしてくれるこの指に、呪いをかけた。
これは、私の物であるという……ワガママで傲慢な呪い。
「今日は帰るね……」
「うん……ごめん……ね?」
「いいよ、大丈夫。それに、傷をつけたのは私だから『ごめんね』は、私の方」
「本当は、そんなこと思ってないくせに」
不敵に笑う彼女の言葉に、微笑み返して玄関を出る。
私も、今日は夫に抱いてもらおうか……?
そんな考えが、頭をよぎった。
目を閉じて、想像して、抱いてもらう。
彼女に抱いてもらってるのだと、意図的に錯覚して。




