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百合百景 ~二分で読める百合短編~  作者: 荒井チェイサー
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近くて遠い

「好き」も「嫌い」も言ってもらえるだけ、いいなと思う。

「好き」と言われて嬉しいのはわかる、とよく言われ、反対の「嫌い」に関しては、否定されてしまう。

「嫌いなんて、言われたくないよ」

私の友達である亜美はそう言ってくる。


そうかなあ、なんて言いながら私は天井を見て、後は適当にお茶を濁す。


私の好きな人は、遠い。

2学年も違う先輩は、私のことを知らない。

それに、接点もない。

廊下ですれ違うだけでドキドキする。

あの人は遠い人。

悲しくなるほどに。

先輩にとって、私は砂つぶのような存在でしかない。

好きも嫌いもない。

感情の波を起こすこともできない。


天井に向けていた視線を前に戻すと、亜美が私をじっと見ていた。

視線が合うと、パッと目をそらして、


「帰ろ」


とだけ言って、鞄を持ってスタスタと教室の扉に向かって歩いていく。


近くても、遠い存在なのかな……。


なんて、少し自意識過剰なことを思いながら立ち上がり、私は彼女を追いかけた。

遠くで聞こえる吹奏楽部の音が、やけに耳に残った。

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