表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百合百景 ~二分で読める百合短編~  作者: 荒井チェイサー
107/137

薄墨の雲と梅

 私は桜よりも梅の方が好きだ。

 派手さがなく、ひっそりと咲いて朽ちていく花。


「やっぱり桜よりも梅だよね」


 隣を歩く恭子の言葉に、軽く相槌をうつ。

 同じことを考えていたようだ。

 彼女が私の手をとり、梅の花を見つめる。

 私達の目の前から数百メートル先の丘の上まで続く梅の並木道を、ゆっくりと歩いていく。

 彼女が私の手をとったせいか、梅の花弁の色がいつもよりも濃く見える。

 空に浮かぶ薄い炭の色を含んだ雲が太陽を遮っているせいで、そう見えたのかもしれない。

 晴れの日には太陽の明るさに飲み込まれてしまい、地味になってしまうひっそりとした花の色が、今日みたいな曇りの日には栄えて見える。


 恭子の手の温もりを感じながら、彼女へのひっそりとした思いが色濃くなっていくのを感じる。

 曇り空のような私の人生に咲くこの秘めたる恋が朽ち果てぬようにと願いながら、私は彼女の手を強く握った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ