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百合百景 ~二分で読める百合短編~  作者: 荒井チェイサー
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永遠の答

「なんで……?」

 私がそう呟くと、目の前に置いた花束から、1枚の花弁が空へと放たれた。

 花束の周囲には、お菓子やジュース、そして同級生からの寄せ書きが置いてあった。


 ここで、同級生の瀬野薫と逸見利華は死んだ。


 私の大好きだった2人。

 お互いがお互いを慈しみあいながら、特別になった2人。

 傍でそれを見ていた私は、至って普通に彼女たちが愛し合っていることを許容した。

 その寛容さが2人には心地よかったのか、3人でよく一緒にいた。

 女の子が女の子を愛すことを何もおかしいことだとは、思わなかった。

 そして、そのうちに私も恋をした。

 自分が誰かを好きになるとは思っていたけれど、こんなにすぐに恋をするとは思わなかったし、同時に2人の人を好きになるとも思わなかった。


 けれど、好きになったその2人は逝ってしまった。

 繋いだ手をセーラー服のスカーフでぐるぐる巻きにして、薫の住んでいたマンションの上から飛び降りた。


 死ぬ前日まで笑ってた2人の顔を、今でもはっきりと思い出せる。

 2人で笑いあった後で、私の方を向いてまた笑う。

「由紀もいい人見つけなよ」

 薫はいつもそう言って、のろけていた。

 その言葉を呆れるようにため息をついて聞いている利華、だけど顔は笑ってた。

 笑う2人がたまらなく愛おしくて、私も笑った。


 そんな日常があったのに。


 なんで私を連れて行ってくれなかったのだろう。



 なんで、なんで、なんで。



 この胸に秘めた2人への感情が、今は『永遠』になってしまった。

 もう書き換えることのできない『永遠』に。


 風で揺れる花を見ながら、

「2人はひょっとして、私の感情を知っていて3人が永遠になる方法を選んだのかもしれない」

なんて、考えた。

 風がやんだと同時に、その答えにたどり着いた私の目から、大粒の涙が零れ落ちた。

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