表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百合百景 ~二分で読める百合短編~  作者: 荒井チェイサー
104/137

手の甲の冷たさは。

『私達、結婚します』

 そう書かれたメモが、こたつの上に乗っていた。

 こたつの中に足を突っ込んで寝ている香澄の顔を足で軽く蹴ると、むっくりと起き上がった。

「……おはよう、多恵」

「この紙、どういうこと?」

 目の前にメモ帳を突きつけると、彼女の口の端が上につりあがっていく。

 ああ、やっぱり悪戯だ。

 どうせ、言い出すのは……。

 予想をつけて、彼女が話すのを待つ。

「多恵……よく聞いて。私、この人と結婚することになったの……。彼ってばすっごく暖かいんだよ……」

「ほう、こたつはいつの間に人になったのか」

 間髪入れずにそう言うと、さっきまで笑っていた口が尖り始めた。

 明らかにバレたのが面白くないという顔をしている。

「まだオチ言ってないのに先取りするとか……」

 ブツブツ言っている彼女を抱きしめる。

 さっきまで極寒の外にいたせいで、私の服には寒気がまとわりついていた。

「あーっ!寒い寒い寒い!死ぬ!死にます!!死んでしまいます!!!」

 知ってる言葉を全部並べている彼女をもっと強く抱きしめた。

「香澄ってば暖かいなー、結婚するー?」

「するするする!するから離して!」

 とにかく離れようとする彼女の首筋に、右の掌をあてる。

「いやあああああああ!鬼いぃぃぃぃぃぃぃ!」

「暖かいなぁ……結婚する?」

「します!させてください!!」

「んー……聞こえないなあ」

 左手も首筋に当てると、彼女はまた叫び声をあげた。

 まだ手の甲には冷たさが残ってるな、と考えながら、私は彼女の『結婚する』という言葉をまだ聞けるのが楽して仕方ない、という顔をした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ