エンディング
=== 終幕 ===
ある日、日本中に「ダンジョンが発生した」。
悪質なトラップがダンジョンへの侵入を阻み、数多のモンスターが徘徊する。
ダンジョンでは少なくない数の命が散った。
安全なはずの拠点で諦観のままに潰える者もいた。
そんなダンジョンの発生にある者は喜び、ある者は驚き戸惑い、そしてほとんどの者は何もしなかった。
何がダンジョンだと。
普通に日常生活を送れるじゃないかと。
だが。
一部の者は、立ち上がった。
ダンジョン攻略の先駆けとなる者がいた。
共通点があればと自身が体験したダンジョンの情報をネットにアップする者がいた。
動画を配信する者がいた。
たがいに励ましあって攻略する者たちがいた。
誰に求められなくとも、理解されなくとも、彼らは立ち上がり、自ら「勇者」と名乗った。
やがてダンジョン攻略へのうねりは大きくなって、幾人も、幾つもの組織を動かした。
ダンジョンに挑む人々をサポートする「冒険者ギルド」ができた。
「勇者ギルド」と名乗らなかったのは様式美らしい。よくわからない。
最深部だと名指しされて目的地にされたコンビニは、迷惑がるどころか来客が増えることを喜んだ。
CSR活動の一環として「勇者の証」というバッジ配布キャンペーンもはじめた。悪ノリともいう。
店舗数がトップではないことで選ばれたと知っているのか。懐が深い。深いといいなあ。
攻略情報を交換し、励まし合い、サポートを受けて、日本中で立ち上がった勇者たちはダンジョンに挑む。
難攻不落のダンジョンに、何年も足踏みする勇者もいるだろう。
真の勇者となったものの、別階層で跳ね返されて拠点に戻ってくる勇者もいるだろう。
けれど勇者よ。
真の勇者よ。
勇者となったことを、ダンジョン攻略に挑んだことを、真の勇者となったことを、誇ってほしい。
ダンジョンは日本中に存在する。
すべての勇者に、光あれ。
=== 終わりに ===
ダンジョンに挑む勇者よ。
ダンジョンをダンジョンと認識しない者から嗤われても聞き流せ。
ダンジョンがあふれる日本は、悪意だけでできているわけではない。
勇者となることを決意した勇気は、それだけで誇っていいことだ。
嗤われても、理解されなくても、攻略がなかなか前に進まなくても。
勇者であることを誇って、ダンジョンに挑んで欲しい。
そして、ダンジョンをダンジョンと認識しない者たちよ。
勇者の足取りは頼りなく思えることだろう。
鼻で嗤いたくなることもあるかもしれない。
何が勇者だ、何がダンジョンだ、当たり前にできることじゃないかと。
手助けしてくれなくていい。
心の中で嗤ってもいい。
けれど、願わくば。
何も言わず、生暖かく見守ってほしい。
貴方にとってなんてことのないその扉は、危険なダンジョンへの入り口なのだから。
(了)





