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比留川病院殺人事件  作者: 山本正純
第三章 証拠がなければ完全犯罪
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 午後三時三十分。有安虎太郎たちは比留川病院の院長室に戻った。院長室の中では吉永マミが鑑識作業を続けている。

 吉永マミは三人が院長室に戻ってきたのを知り、彼らに近づいた。

「須藤警部。待っていたよ。こっちは色々と進展があったからね」

「進展ですか」

 須藤涼風が聞き返すと吉永マミは彼女にコンセントの付いた機械を見せた。

「盗聴器だよ。これが院長室に仕掛けられていた。指紋は一種類のみ。盗聴電波の受信距離は半径一キロ程度。それと隠し通路のスイッチは勝部慶太朗の指紋がなければ作動しないことが分かった。裏を返せば勝部慶太朗の指紋があれば隠し通路を通過することができる。指紋シールでも作成すれば容易に密室殺人は可能だね」

「それだけですか」

「勝部慶太朗のノートパソコンを調べたらハッキングされた形跡が見つかった。遠隔操作ウイルスに感染していて、何者かが矢部雄一を殺害現場の倉庫の前に呼び出したことが分かったよ。第一の事件に関してもう一つ。死亡推定時刻前後の病院内に設置された防犯カメラの解析が終わった」

 吉永マミは自分のノートパソコンを三人に見せる。その画面にはエレベーターホールの映像が映し出されていた。

 早送りで再生される映像を凝視した有安虎太郎は手を挙げる。

「午後九時五十八分のところで一時停止してくれ」

 吉永マミはその指示に従う。その映像には茶髪のショートカットの女が映っていた。その女は走っているようで、すぐに画面から消える。

「この画像を解析して顔が分かるようにできるか」

「やってみるよ」

 吉永マミがキーボードを操作すると、画像が繊細になり、日野公子の顔が浮き彫りになった。

「この女は何かを持っているな。それが何なのかが分かるか」

「注文が多いね」

 吉永マミは画像に映った日野公子の両手の部分をドラックして、それを拡大する。もちろん画像が繊細になるように注意しながら。

 そこに映し出されたのは赤く変色した白衣だった。

 

 有安虎太郎と須藤涼風は防犯カメラの映像に満足した。だが彼らの脳裏には一つの謎が浮かぶ。

「有安君。日野公子が犯人の可能性が濃厚ですね。あの防犯カメラの映像が動かぬ証拠になります」

 須藤警部が有安の顔を見る。だが有安虎太郎は唸っている。

「だが日野先生が勝部慶太朗殺害後隠し通路を使って部屋を脱出して、部屋を密室にしたとしても、不可能犯罪に変わりない。隠し通路の出入り口は第一の事件現場の倉庫の近く。そこから病院内に入るためには、玄関から入らなければならない。死亡推定時刻日野先生は玄関から病院内に入らなかった。あの時間帯は病院内で診察を行っていた。つまり彼女には鉄壁のアリバイがあるということだ」

 有安虎太郎の推理を聞き須藤涼風は首をひねる。二人が悩むと三浦は第二の事件現場のことを思い出した。

「そういえば勝部慶太朗の遺体が発見された現場には数十枚の百円玉が落ちていたな。あれが犯人からのメッセージだとしたらもう一つ謎が増える」

 三浦の一言を聞き有安虎太郎と須藤涼風はお互いの顔を見合わせる。そして須藤涼風は吉永マミに聞いた。

「事件現場に数十枚の百円玉には変わったことがないのですか」

「床に散乱していた数十枚の百円玉の内一枚は輪ゴムがこびり付いている。床には微かに何かを引っ掻いたような跡もある」

 吉永マミの報告を聞き有安虎太郎と須藤涼風の頬が緩む。


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