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3-2  情報源

 3階建て煉瓦造(れんがづく)りの屋上のオープンテラスで、ランプの()と星空に見下ろされつつ、ワインで乾杯、インテロちゃんはパエリアのようなものを注文する。


「アーモ・クラーレさんて20歳で私と同い年なんだけど、なーんか、つい1年前ぐらいかな、ギルドに登録してきて、あっという間にプリマムギルドの有名人」


「ミス・コンテストってイベントで?」


「そう! あの、くだらないイベント! でも、マスターがようやく廃止にしたけどね。とにかくさ、アーモ・クラーレさんとパーティーを組んでいる人なんてNGでしかないし。だって、コンテストで優勝した途端、あの人にはパーティー志願者のランカーが群がってきたんだもの」


 さすが、ギルドで受付業務をしているだけあって、登録者たちの細かな動きまで把握(はあく)している。


「ちなみに、クラーレさんは、何人でパーティーを組んでいるの」


「全員で4人。女の子1人、ちょいイケメンのCランカーが3人。パブリースさんの話だと、クラーレさんを3人で取り合いしているんだって。個人情報だからあんまり言っちゃダメなんだけどね」


 まさしく、パーティーのマドンナ。想像通りのくだらないオンナだ。


 ワインをグラスで2杯空けてほろ酔いのインテロちゃんは、


「このあとは私の家でどう?」


 酔っているわりに瞳が綺麗に定まっており、あけすけとしているところが、心地のいいオンナだ。


 ところが、インテロちゃん宅に向かう道すがら、運ぶ足を躊躇(ちゅうちょ)させる事柄(ことがら)が発覚した。


「ママがゴハンを作っちゃうかも」


 母親と2人暮らしだった。さすがの俺もそれはチョット……。親子を相手にするにはまだまだ俺のLvが足りない……。


「2軒目なんて、私の家のほうが安上がりで済むよ?」


 酔っているせいか、元からそういう性格なのか、インテロちゃんは一度言ったら聞かなかった。


 もっとも、俺は家なき子だから、都合のいい宿泊先が数あっても困りはしない。ということにして、住宅街の端っこにあるインテロちゃん宅の玄関をくぐる。


「えー? どうしたの、インテロ? こんなイケメンのお兄さん連れてきちゃってえ。私に紹介してくれるの? ねえねえ。私の彼氏候補?」


「なわけないじゃーん。私のト・モ・ダ・チ」


「じゃあ、ママともト・モ・ダ・チ」


 インテロママは俺の腕をぐいっと胸に抱き寄せてき、


「どうぞ、上がって上がって」


 積極的な力で俺を連行していく。思いのほか若く見えるオバサンである。インテロちゃんにそっくりで、インテロちゃんを大人にさせただけのようなママである。


 ただ、ママは予想外の世話焼きで、パエリアを食ってきたと言っているのにメシを作り始めた。インテロちゃんが止めているにも関わらずにだ。


「ごめんなさい。ママは料理が得意だから、すぐにふるまいたがるの」


 そして、出されてきたものは、貝や肉、野菜などと一緒にコメを炊き込んだ、パエリア……。


「あーんな、お高いだけのお店よりさ、私のほうが美味しいんだから。ヴァーバさん、どうぞ、好きなだけ食べてね」


 インテロママの自己中心的(ジコチュー)極まりなさに唖然(あぜん)としてしまったが、「オンナに出された物は嫌いな物以外は残さず食べる主義」の俺は半ベソぎみでパエリアを平らげる。


 インテロちゃんの部屋で2人きりになっても俺は死亡寸前であり、やる気などまったく失せてしまう。


 腹が風船になって膨らみ、破裂するという夢にまでうなされた。


 まあいい。メシつき屋根つきフレンド親子を手に入れたのだ。1日ぐらい我慢する。


 それはともかく、インテロちゃんをフレンドにしたことは、大きな財産となることが予見できた。なにしろ、登録者のことからマスターのことまで、ギルドの内部事情をペラペラと話してくれるのである。


「マスターが来たのは3年前ぐらい。それまではマスター職はなくて、名誉職のプレジデントがいるだけだったみたい。実質的なトップは事務局長だったって」


 ギルドの始まりは、仕事斡旋の協同組合だったので、その名残で今も、13人の理事を選出しており、半年に1回の理事会で物事を決めていた。


 ところが、13人の理事のほとんどすべてが現役を退いた貴族の老人ばかりで、ミス・コンテストのようなわかりやすいイベントを計画するぐらいのゾンビ組織と化していた。


「いろんな問題があったから、マスターが来るようになったの。クエスト契約の内容とか冒険者パーティ内のトラブルとかいろいろあったし。殺人事件とかたくさんあったもの。マスターが調停するようになってからそういうのがほぼなくなったけど」


「マスターって何者?」


 全身甲冑野郎の不気味さが気になって訊ねたが、インテロちゃんは首を振る。単なる受付事務にすぎない彼女は、ギルドマスターの姿すらお目にかけていないらしい。


「パブリースさんもよく知らないみたい。どこの誰なのかも。でも、王国の指示で来たのは間違いないよね」


 ちなみに、PBを知っているかも訊いてみる。


「ジョー・ノヌーさんのとこにいた若い人? うーん。あそこは入れ替わりが激しかったからなあ」


 記憶にないらしい。納得できなくもない。あいつはスパイの怪しい奴だ。受付事務のオンナに身元を知られるほどバカじゃない。


 王国の指示でやって来たらしきギルドマスター。


 ギルドマスターに接触してしまったので、イセエビは「大人の事情」で逮捕された。


 逮捕するか否かを決定したのは、おそらく、元王立騎士隊員ロイヤルナイツを自称するPB。


 推理小説ばりに探偵行動をすれば、謎はすぐに解決するだろう。しかし、俺に危害が及ばないのであれば、興味はゼロだ。


 俺のもっぱらの興味は、おしゃべりのインテロちゃんから聞き知った情報だが、イセエビが騙していた相手に貴族がいたということだ。


 病院ボランティアに付き合わされたときも、院長のババアが言っていた。「名誉会長に伝えておく」と。おそらく、それも貴族だ。


 町でナンパしているだけだと、貴族の娘とは接触できない。


 しかし、イセエビのように、冒険者としてRankが上がれば(ハク)がつく。ギルド理事をやっているような暇人(ヒマジン)貴族や富豪をタニマチにすれば、セレブパーティーにも招かれるらしい。


「Rankアップをするには、どのクエストが手っ取り早そうか調べろ」


 フィアダイル山にてGG狩りの休憩中、ピンギとメシスに命じた。白磁板(ホワイトボード)のギルドサイトにて、クエスト情報を確認させる。


「明後日には2週間に一回、新しいフリーランククエストが掲示される日ッスよ。サイトに掲載されているのは古いものしかないッス」


「朝早くから並ぶやつか?」


「まあ、フリーランククエスト目当ての人たちは、先生みたいにせっかちな人が群がるので、すぐに攻略されてしまうみたいですが」


「だったら、クエストが掲示された瞬間に、周りの奴ら全員を罵って麻痺させて半殺しにしていくか。そうすれば俺たちが一番乗り間違いない」


「そんなことしたら訴えられるッス!」


「チッ」


 イラつきを押し殺すようにして、奥歯でビーフジャーキーを噛みしめる。やはり、もう少しはイセエビの元で我慢するべきだったか。いや、あいつとツルんでいたら王国に捕まっていたのだった。


 にっちもさっちも行かねえぜ……。Lv42の俺がいまさら地道にやるだなんてゴメンだし……。


「それはそうと、先生――。昨日って、あのう、受付の女の人と、どこまで――」


 メシスは体育座りで両膝を抱えている。気色悪い上目遣いで俺を見つめてくる。


「そんなこと聞いてなんなんだ。お前のハートがブレイクするだけじゃねえのか」


「先生があの子とどこまで……」


 心なしか、メシスの瞳孔が開いているように見える。こいつは気に入ったオンナを目の前で搔っ攫われたガキだ。なのに、詳細を聞きたがっている。


「まあ、とりあえず、こうだな」


 と、俺は右手を持ち上げ揉み上げる仕草をしてみた。


「ええっ!?」


 メシスの瞳孔はさらに拡大した。鼻の穴も膨らんでいた。


「そ、そ、それで、その次は」


 俺は不穏なものを覚えた。さすがのピンギも察したらしく、冷ややかな視線をメシスに向けている。


 俺は腰を上げると、顔を紅潮させているメシスのまたぐらに右手を突っ込んだ。悲鳴を上げたメシスだが、俺が掴んだものはギンギンだった。


「なんて性癖してやがる。お前のご期待に沿えず、昨日は何もしてねえぞ」


「う、ウソばっかり! ボクがキャバレー通りで座っていたときも、先生は美人な女の人を連れていました! あの人は、どうだったんです!? ああ――、でも、ボクは受付の子のほうがいいな。あの人がどうやって先生にめちゃくちゃにされたのか、ああ――、先生みたいな傲慢な男にめちゃくちゃに……、教えてください!」


挿絵(By みてみん)


 どさくさにまぎれて余計な言葉を付け加えていたので、青髪変態野郎の頬をビンタした。


「そんなことより、適当なクエストを見つけろ。もう、なんだっていい。とにかく今はRankアップが先決だ」


「これなんかどうスか?」


 ピンギが差し出してきた白磁板には、ドブサライの日雇い仕事。


「やるわけねえだろうが。ナメてんのか、コラ」


「先生、これはどうです?」


 興奮冷めやらない様子のメシスが差し出してきた白磁板には、貴族の娘(6歳)のお守り及び隣町に行くための護衛仕事。


「お前、鼻息が荒くねえか? いいか? 俺はそんな趣味はねえ。お前みたいな変態と一緒にするな」


 情報収集もろくにできない下僕どもに愛想が尽き、自らの手で白磁板をタッチ&スワイプしていく。


 やはり、Rank:Hのクエストはしょうもない。ダンジョンの地下12Fから希少な石を採掘してくるというクエストもあるが、あの、オンナの色気のないところには二度と行きたくない。


 やはりフリーランククエストか……。ひとまずは、古いクエストが残っているか確認してみる。


 すると、ゴミの山のようなフリーランククエスト依頼の中に、宝石のような仕事が埋もれていた。


「これだ! これにしよう!」



 フリーランククエスト


 実質必要Rank:F 実質必要Lv:10~15


 内容:ププンデッタ村の殲滅


 報酬:100,000G


 資格:パーティー構成3人以上


 備考:

 

 攻略確認は依頼主が実際に現地視察のち、


 当ギルドからMAILで結果通知するものとする。


 なお、虚偽の報告はペナルティ10,000Gとする。





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