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Vさんの場合

 ……怨霊の……背景を探る……。

 あなたも無念、ありませんか……?

 その無念や恨み、膨れ上がってしまったら……もしかしたら、怨霊になってしまうかも、しれませんよ……?

 このコーナーでは、怨霊の方々にインタビューを行い、なぜ怨霊になったのか? どんな無念があるのか? をうかがいます。

 人のふり見て我がふり直せ、他山の石にしようという企画です。

 本日はゲストに、怨霊のVさんをお呼びしております!


「こんにちは……」


 本日はよろしくお願いいたします。

 例によって、私パーソナリティには、霊界通信を通じて、Vさんのお姿が見えております。

 Vさんはお若い女性ですね。ロングコートを着て、青白い顔をして……ちょっと震えていらっしゃいますね。

 空調の温度、上げますか?


「いえ……寒いわけではないので……。Vです。30代前半、女性、生き霊です……」


 自己紹介ありがとうございます。

 それで、Vさんはどういった無念を抱えていらっしゃるのでしょうか?

 おおお!? いきなり、黒く歪んだ顔らしきものが、いくつも私に向かってきています……!

 まさに怨霊! って感じですねー。うめいてる! うめいてるー!


「どうどう……。落ち着いて……」


 あ、Vさんに戻っていきます……。

 ……なんか、結構な恨みを抱えていらっしゃる?


「はあ。まあ。そうですね」


 では、Vさんの恨みを聞かせてください。


「男の人が、すごく嫌いなんです……」


 えっ。


「パーソナリティさん、男性の方なので……つい……」


 つい!? ついで呪わないでくださいね!?

 しかしVさんが男性嫌いになってしまったのにも、理由があるはずです。

 いったいどのような無念があったのでしょうか?


「世の中、女性への負担が大きすぎます……」


 なるほど?


「結婚してたんです」


 あら。男性がお嫌いなのに?


「はい。その当時はそんなに苦手じゃなかったので……。夫は地元が同じなんですが、就職で少し離れた場所に住んでいました。それで私、仕事を辞めて、嫁いだんですよ……」


 そうですか……。


「どうして私が仕事を辞めなきゃいけなかったのかなって……。夫には、自分が仕事を辞める選択肢が最初からなかったように見えて……。まずそこが、悔しいです」


 うーん……。まあ……。

 そういう場合、どこか妥協しなくてはいけないところは、ありますよね……。

 単身赴任になるか、どちらかが仕事を辞めるか……みたいな。


「結婚して引っ越した後、仕事を探したんですが、見つからなくて……。面接で『ご出産の予定は?』と必ず聞かれるんです。妊娠したら、仕事ができなくなるから……と」


 んーんんん!

 雇った人がすぐに妊娠出産で仕事を辞めてしまうかもしれない……それを心配するのは、わからなくもないですね。


「それで、結局仕事が見つからないまま、妊娠と出産をして……。産後、また仕事を探したんですが……」


 ああ……。今度はお子さんの発熱などで休むから……みたいな話でしょうか……。


「そうですね……。『保育園はどうなってますか?』とか……」


 あー! 保育園問題!

 保育園に預けられるかどうか、わからないってこと、ありますね。

 競争率が高かったり、保育園に入れたとしても、すごく遠くの園に通わせることになったり、きょうだいで違う園に……なんて話も聞きます。


「それで結局、仕事も保育園も見つからなくて……。仕事するには、子供を保育園に預けなくてはいけない。でも子供を保育園に預けるためには、仕事をしなくてはいけない……という」


 卵が先か鶏が先かじゃないですけど、保育園と仕事、どっちが先かみたいなことになったと……。


「はい……。パートでしたけど、なんとか仕事を見つけて、保育園にも入れたんですけど……。子供の病気で呼び出されるのは私ばかりで、結局肩身がせまい思いをして……」


 はいはい。働いているお母さんはよくあると聞きます。

 おおおお!? また怨霊の顔が……! ぐいぐい来てます……!


「落ち着いて……。まだ話は、ほんの入口なんだから……」


 ……。怨霊が、Vさんの背後に戻っていきます……。

 でも噛み付かんばかりの勢いですね……。

 まだVさんの怨念がほんの入り口だということなので、一旦CMに入りましょうか。

 CMのあと、Vさんの無念についてうかがっていきます! 続きはCMのあとで!

 ……いや、おっかないなーこれ。いつこっちに怨霊が向くか、わかんないじゃないですか……。


***


 はい。本日の『怨霊の背景を探る!』のコーナーは、Vさんにお越しいただいております。

 Vさんは結婚による引っ越しや、妊娠出産育児というライフスタイルの変化の中で、女性が負担を背負い過ぎではないか、と思うことが多かった……と。

 その結果、男性が苦手になってしまった……ということで、よろしいでしょうか?


「はい……」


 ではお話の続きをお願いいたします。

 Vさんが男性嫌いになった理由について。


「夫は、えらそうなんです。誰のおかげで暮らしていけると……って。何を言ってるの? と思いました。結婚したまではよかったんですけど、退職とか引っ越しとか妊娠・出産・育児って……全部私が負担を背負ってますよね。家事もしないし……」


 ああー……。

 社会って、男性に有利なようにできてる部分、ありますよね……。

 最近ではそれも少し、変わってきてはいますが、まだ根強いところもあります。


「私がサポートしてるから、夫は結婚前とあまり変わらない暮らしができてるんだってことに、気付いてるのかなって……。家庭の状況が変わるのって、本来夫婦両方に関係あることじゃないですか。腹立ちますよね……」


 なるほど。それが男性嫌いの理由に?


「離婚したんですよ」


 あら。


「子供の学費もかかるし、すごく大変でしたけど、がむしゃらに仕事をして、必死に生きてきました。でも離婚したら、今度は急にあちこちから言い寄ってくる人たちがいて……」


 えっ……そうなんですか。


「はい……。必死に仕事をして、家事や育児をして……至らないところも多かったとは思いますけど、懸命にがんばっていました。そんな私を口説こうとする……意味わからなくないですか?」


 ああー……。

 怨霊の叫び声が大きくなってきました。うおおお、と叫んでいますね……。


「子供は女の子だったので、余計に気になりますよね。連れ子に性的虐待を加える男性の話って、よく聞きますし」


 はい……。よくニュースにもなっていましたね。

 虐待事件として……。

 ぐすっ……すみません、ちょっと以前インタビューした女の子のことを、思い出してしまって。


「いえ……。だから本当に、がむしゃらに働いたんです。そのときに雇ってくれた会社には、本当に感謝しています。おかげで家計もそんなに苦しくはなかったし、子供の学費もなんとかなりました」


 それはもう、Vさんの根性の賜物……って感じですね。


「なのに、男の人は言い寄ってくる。離婚したから生活が苦しいだろうとか、心の支えが欲しいだろうとか……そういうの、偏見ですよね。足元見られてる感じがして、すごく嫌で」


 生活が苦しいシングルマザーも、心の支えが欲しいシングルマザーも、実際世の中にはいますからね。

 でもVさんの場合は違った。


「はい。弱みにつけこもうとしてない? 下に見てない? 見くびってるんじゃない? と……。疑心暗鬼だったのかもしれません。……助けになってくれる男性もいましたよ。でも、私に恋愛を求めるのは、おかしくないですか? 引っ越しや退職や妊娠出産育児で負担を押し付けたのは、元夫や男性主体の社会なのに、また恋愛しろって……。私からしたら理解できないですよ」


 うおおお!? 怨霊がものすごく荒れ狂っていますね!? 落ち着いて!

 ……恋愛や結婚によって、Vさんの生活が大きく変わってしまったのに、またそれをしろと言う……。

 そこにVさんは疑問を持たれたわけですね。


「そうですね。なんか……シングルマザーだから、俺でもワンチャン! みたいな、恋愛に劣等感があるっぽい男の人もちらほらいて」


 ああー。恋愛弱者というか、あまり恋愛がうまくいかなかった男性……ですかね。


「そこは相手の事情なので、くわしくはわかりませんけれど。……私はライフスタイルの変化による負担が対等でないことに疑問を持った。なのに、私を下に見ている人たちが口説いてくる。なぜ? って……。私としては、それどころじゃない……そんな感じです」


 そうですか……まあでも、生活費とお子さんの学費を稼ぐとなると「それどころじゃない」となるのもうなずけます。


「どこかで、元夫に対してNOと拒絶できていたら、違ったのかもしれません。……言ったけど聞かなかったから、離婚したわけですけど……」


 あははは! まあ……選んだ人が悪かった……ってところですかね。そこを間違うと、ずっと後にまで引きずる問題になってしまう。

 怨霊が! 怨霊が暴れています!

 うめき声というか、叫び声というか……とんでもないことになってますね。

 怨嗟の渦……そんな感じがします。

 後ろで男性スタッフも正座しています……。怖いよねぇ。私が最前列なわけですが! わっはっは!


「男性の中にも、いい人がいるのはわかっています……。でも言い寄ってくる人は……。疑心暗鬼かもしれませんけど、やっぱり、あまりいいようには見られません。ごめんなさい。怨霊がパーソナリティさんに向かって荒れていて……」


 いえ……ちょっとおっかないですが、Vさんが止めてくださってるので、大丈夫……ですよ。

 Vさん、本日はお話を聞かせてくださって、ありがとうございました。

 さて、それでは本日の『怨霊の背景を探る!』のコーナー、まとめです。

 ……『家庭は、共同経営をするようなもの!』……負担が片方に偏ってしまうと、いずれ熟年離婚……なんてことにもなりかねません。

 今回のVさんは女性でしたが、男性に負担が偏ってしまうことだって、十分ありうる話です。

 結婚するなら、そういう相談や歩み寄りができる相手とにしましょう!

 Vさんのように、恋愛や結婚をしないという生き方も認められるべきではないかと、私は思いますね。


 さて。この『怨霊の背景を探る!』のコーナーでは、今後も怨霊の方々の恨みつらみについて、お話をうかがっていきます。次回もお楽しみに!

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