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Qさんの場合

『怨霊の背景を探る!』……このコーナーでは、怨霊の皆さんにインタビューを敢行!

 なぜ怨霊になったのか? どんな恨みがあるのか? 

 それを知ることで、我々生きている人間が死後怨霊にならないように気をつけよう──という、大変学びのあるコーナーとなっております!

 本日はゲストに、怨霊のQさんをお呼びしております!


「こ、こ、こんにちは……」


 こんにちは。本日はよろしくお願いします。

 緊張してらっしゃいます?


「あ、いや、そうじゃなくて! ……あんまり、人と接するの、得意じゃないというか。たまに、どもることがあるかもしれません」


 そうでしたか。まあ、あまり気にせず、リラックスしてお話聞かせてくださいね。

 これまでのゲストさんには、怒って帰っちゃった人なんかもいますんで。あははは!


「はい……」


 例によって、私、パーソナリティには、霊界通信でQさんのお姿が見えております。

 割と現代の方ですね。まだお若くて──中学生くらいかな? そんな感じに見えます。


「そうですね。昭和生まれです」


 あ、昭和。では、早逝された?

 割と早くお亡くなりになられたんでしょうか?


「あ! そうではなく! ……僕、生き霊なんです」


 ……んん? でも生き霊の方で、昭和生まれだとしたら、令和の今なら、もうちょっと大人になってるんじゃないかって気がしますけども。


「そうですね。本体は、もっと大人です。もしかしたら、恨みを抱えた年齢で生き霊が出てるのかもしれません。鏡には映らないから、自分ではわかんないんですよね」


 あはは! 確かに怨霊は鏡に映らないから、わかんないですね!


「まあ、映る人もいるのかもしれないですけど……。ホラー映画とかで、たまにありますよね。鏡では背後に青白い女性や黒い影が映っているけど、振り返ると実際にはいない……みたいなシーン」


 ありますねー! 洗面所で顔を洗った後、鏡に──みたいな! ドキッとしますよね。

 では、Qさんは恨みを抱えた年齢が若かったから、お若いお姿で生き霊が出ている……と。

 どんな恨みですか?


「いじめですね」


 いじめ! ああー……それは……恨みに思うこともあるでしょうね。


 お話の途中ですが、ここで一旦CMをはさみましょうか。

 引き続き、Qさんのお話をくわしくうかがっていきます。続きはCMのあとで!


***


 はい。本日の『怨霊の背景を探る!』のコーナーは、Qさんにお越しいただいております。

 Qさんは昭和生まれの生き霊の方で、ご自身が受けたいじめについて、恨みを持っている……というところまでは、うかがいました。

 生き霊の年齢から考えると、中学生くらいのときですか?


「そうですね。中学でのいじめを恨んでいます」


 たとえば、どんな感じだったんでしょうか?


「うーん……教科書に落書きされるだとか、わざとぶつかられるとか、嫌味を言われるとか、噂をばら撒かれるとか」


 それは……なんともはや、定番のいじめって感じですね。

 でもすごくお辛かったでしょう。

 たとえば教科書が破られるなんてことがあったら、買い直しになるわけですし。


「そうですね。親にも言い出しにくいですし」


 学校や親御さんには話していたんですか?


「話してました。ただ……、学校はあまり対処してもらえなかったですね。調査自体はしてくれたんですが」


 そうでしたかー……。

 学校にとっては、被害者と加害者、どちらも生徒ですからね。

 建前として、どちらかに肩入れすることはできないでしょう。

 その上で、どちらの言い分を信じるか……という話になってくると、判断が下しにくい部分はあるのかもしれません。

 かといって、被害者の声を無視するのであれば、大問題になります。


「僕、あまり話すの得意じゃないので……そういうところで、あまり受け止めてもらえなかった部分があるのかな? とは思います。それでも、学校が対処してくれなかったことは、根に持っていますけど」


 親御さんはなんと?


「僕よりキレて、学校に怒鳴り込んで、大変でした」


 ははは! でもQさんにとっては、心強かったんじゃないですか?


「そうですね」


 今、スタジオで「くすくす……」みたいな笑い声が遠巻きに聞こえてきました。

 いじめのきっかけみたいなものは、何かあったんでしょうか?


「わからないです。『顔が似てるから』なんて言われたこともありましたが……、まさかそんな理由じゃないでしょうし」


 いやいや、わかりませんよー!

 いじめって、些細な理由で起こったりしますから。

 おおっと……天井から足音が聞こえてきます。だん! みたいな……足を何度も踏み鳴らすみたいな音です。

 ここってスタジオなんで、防音室なんですけどね……。


「僕の記憶が再生されてるのかな。……理由をいじめ加害側に聞いても、毎回違うんですよね。小姑みたいに、僕の気に入らないところをあげつらうだけで」


 それ、もう加害側にも理由がわからなくなってるやつじゃないですか?

 純粋に「気に入らない」って。


「僕自身が振り返ってみて、心当たりがあるとしたら……授業のとき、共同で色々作ったりしますよね?」


 はいはい。ありますね。

 班を作って作業するような。


「そこで僕、ちょっと浮いてしまって。こだわりが強すぎたのかなって、今になってみて思うことはあります」


 あー。そういうことって、よくありますね。

 中高生になってバンド組んだりすると、よく聞く話です。

 こだわりを理解できる相手とか、逆にこだわりがなくて合わせてくれる相手ならいいんでしょうけど、「めんどくさい」とか「なんでそんなにこだわるの?」とかいう相手だと、噛み合わないことがあります。

 それは、もうスタンスの違いですよね。見解の相違であって、良い悪いとかいう話じゃない。

 ……よく、バンドが「音楽性の違い」って解散するじゃないですか? あんな感じですよね。

 ただ、そこからいじめに発展するとか、嫌がらせがはじまるとかだと、加害者が悪いという形になるんですが。


「僕は、噛み合わないんだと思います。そういう趣味の話でも……。たとえば、アイドルの歌が好きな人と、容姿が好きな人では、ちょっと噛み合わない」


 ……すごーく、よくわかります。

 私はこうやってラジオのパーソナリティやってるくらいですから、音楽に触れる機会や、音楽好きとの接点も多いんですよ。

 自分の中で、好きな要素に順番をつける……みたいなものですよね。

 そのアイドルの歌が好きだとしても、容姿を否定する意図はまったくない。

「かわいくて、歌が上手い」なのか、「歌が上手くて、かわいい」なのか……その程度の違いです。


「そうですね。……でもそこ、否定しただろうって勘違いする人、案外いますよね」


 いますね。

 特にアイドルだと、ダンスや衣装、ステージングも含まれてくるじゃないですか?

 だから、その中で好きな要素に順番をつけるとなると、ファンの数だけ違う……なんてザラですよ。


「推しの魅力を再発見! みたいな捉え方をしてくれる人ばかりとは、限らないので……。僕もこだわりが強いから、『ん?』ってなっちゃうときがあります」


 最近では「同担拒否」なんて聞きますねー。

 同じアイドルを好きなファンとは仲良くできません、というファンのことです。

 そういう人もこだわりは強いんでしょうけど、SNSなどで明言してる人なら「関わらない」という選択もできます。


「まあ……そのあたりは、相手から関わってくることもあるので」


 あはは! そうですねー!


「そういうのって、お互いが『この人はそういう好みなんだな』って理解して流せていれば、特に揉めることはないですよね」


 そうですね。

 そこで「いや、違う!」ってなると、揉めることもあるんでしょうが。


「『新曲楽しみですね!』に、キレる人とか……どうしようもないですよ」


 いやいやいや……そーれは……。

 新曲楽しみじゃないんですかね? その方。


「前作で見切りをつけた、って話をSNSでしてたらしくて」


 えええ……知らんがなって話ですよ……。

 ……Qさんへのいじめは、そういう噛み合わなさの積み重ねで、起きてしまった感じですか?


「そうかもしれません。……あとは、『友達をとった』と責められたこともありました」


 あー。中学生とかだと、たまにあるやつですね。

 親しかった友達が、Qさんと親しくなってしまって、疎遠になっちゃった……そんな感じですかね?

 そういうのって、寂しさからくるものなんでしょうけど。


「そういう理由がいくつも重なって、いじめになったのかもしれません。……僕が空気読めないってことかもしれませんけど」


 いや、空気読めてないのは、どちらかというと相手じゃないですか?


「SNSのタイムラインをずっと追えるわけでもないので、見落としがあるのは仕方ないけれど、一定の配慮はした方がいいかなって、僕は反省しました」


 うーん。「なんで配慮してくれないんだ!」と言われたら、配慮ってこっちがするもので、相手に強制するものじゃないでしょって話になりませんか?

 ……大体、それを理由にいじめをするような人、信じられます?

 関わらないっていうなら、まだわかりますけど。


「信じるのは、ちょっと無理ですね」


 いじめもそうですけど、権利を侵害するような相手へのNOは必要じゃないですか。前回のPさんもでしたけど。

 どうしても譲れない線を踏んだら、どれだけ親しかった人でも、割と疎遠になりますよね。

 説明して伝わるならいいけれど、何度説明しても伝わらないなら、もう倫理観が根本的に違うことになります。

「あ、もういいや……」ってなってしまう。


「僕の場合は、心が離れる……という感じですね。全く関わりがなくなるとかは、ないですが」


 ……Qさん、優しすぎるんじゃないですか?

 以前この番組にゲスト出演していただいた怨霊の方で、家族に被害が出たことで怨霊化された方がいたんですよ。

 そういうふうに、譲れない線は持っていた方がいいと思いますけどね。

 ……お、また天井から足音が聞こえてきました。ゲラゲラ笑っている声も聞こえてきます……ドタバタうるさいなぁ。プロレスごっこでもしてるんですかね?


「うーん……。人間は誰でも過ちを犯しますから。……謝るならいいんじゃないですか? いじめ加害者の中には、謝ってくれた人たちもいます。そういう人には、僕、恨みは持ってないです」


 なるほど。

 ……お話をうかがっていると、そんなQさんが生き霊を出すほど恨んでいる……という相手のほうが、よっぽどなんじゃないかと、私なんかは考えてしまいますねー。


「根掘り葉掘り……これが気に入らない、あれが気に入らないと言われてしまったので。……さっきから、僕がいじめられた記憶が再生されてるじゃないですか? 納得できなくて進めない部分が、心のどこかにあるのかもなって……」


 ありうる話ですね。

 生き霊が出るほどですから……許せない相手もいるんでしょう。


「でもまあ、時間が解決してくれることもありますから」


 あははは! 意外とのんき!

 Qさんの生き霊が、いつか落ち着く日が来たらいいですね。


「そうですね」


 Qさん、本日はお話を聞かせてくださって、ありがとうございました。


 さて、それでは本日の『怨霊の背景を探る!』のコーナー、まとめ!

 ……「いじめた奴、謝れ!」……これですかねー。

 とはいえ、ですよ? 嫌味を言われて堪忍袋の緒が切れて、反撃したら、「いじめだー!」なんて騒ぐ人たちも、世の中にはいます。

 そうなると、もう関係修復は難しいですよね。

 そっと離れることも、ときには必要でしょう。

 あまりにも権利侵害がひどければ、また揉めてしまうでしょうし。

 ……人間関係って、難しいですねぇ。


 この『怨霊の背景を探る!』のコーナーでは、今後も怨霊の方々の恨みつらみについて、お話をうかがっていきます。次回をお楽しみに!

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