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機械少女と獣のロンド  作者: Noyory
3章 〜明滅/クランプ〜
12/24

3-4 flicker krump

 






―1―







 上座市最大の映画館“フィルムスプリングス”の周辺はざわついていた。


 24時間いくつもの映画を上映する建物からは不満げな顔や困惑する顔、そして恐怖に怯えた顔の者が続々と出てきていた。

 時刻は23時半を回っている。この客達は0時からのレイトショーを待っていた不運な者達だろう。


 マコトはその波に逆らうように建物に入る。


 心象回路のおかげで人波は勝手に避けていく。退避を呼び掛ける警備の者の横を通り抜ける時も咎められることすらない。完全に相手の認識から、マコトだけが外れていた。


『意外と便利な能力だな…そこの階段を上れ』

 インカムからタチバナの指示。この能力のおかげで狗井やカマキリとはかなり距離を取ることができている。無関係多数を気にせず動けることは、相手の追撃を躱すのにかなり優位だった。


「この騒ぎはナオ…タチバナの仕業?」

『このビルの管理者についさっき“爆破予告”を出したところだ。“SOS”の署名入りなら半信半疑でも動かざるを得ないと踏んでな。どうやら効果抜群だったようだ』

「なるほどね。場所がないなら…」

『そう、作ればいい。俺もお前も今さら多少の違法行為など気にもならんだろう?』

 マコトは肩を竦めながら階段を上がった。

 2階にはすでに誰もいない。慌てて出てきた為か、いくつも並ぶ上映室(ホール)のドアはほとんどが開きっぱなしだった。


『そろそろ奴らも来る。狗井の視界では、奴は今この建物に入ったところだ。そこで警備の男を殺し、真っ直ぐお前の所に向かっている』

 それは過剰な対処だろう。マコトの見立てでは、あの男なら混乱状態に紛れてそっと忍び込むこともできたはずだ。

「頭おかしくなったのかな、アイツ」

『当たらずとも遠からずだな。奴の視界はまるでその心象の顕れだ。お前だけが拡大解釈され、それ以外のものは紙屑同然に薄っぺらに見える。警備の男も紙をちぎるようにぞんざいに殺した。今の狗井にとっては、世界にお前と奴の2人しか存在していないのと同じだ。他のものが見えていない』

「不愉快だな…」

 タチバナはマコトの視界と同時に狗井の視界にも侵入している。無差別に視覚可情報を捕捉する“赤色錯視”(レッド・インサイト)“心象回路”(サイコ・サーキット)同様扱いが難しい能力だが、タチバナは経験から一度接続(リンク)した“視覚”(サイト)に入り込む技術を獲得していた。


「そんなにまで他人に執着する意味が分かんない」

 マコトは適当に選んだ上映室に入る。中は薄暗く、スクリーンには何も映されていない。

『そんなことないだろ。自分の妹の事を考えてみろ』

「…マヤのこと?」

 緩やかに下る階段を降り、マコトはスクリーンの前に立つ。ここで狗井を待つつもりだった。

『その気持ちがお前の持つ人への執着ってやつだ。今の狗井にとってお前は、お前の中のマヤと同じだ。奴の場合は“とっかえひっかえ”ってやつだが、それはそうせざるを得ないからだ。相手の息の根を止めるまで収まらない、獣じみた衝動が奴の身体を突き動かしている。それが狗井の本質だ』

「…ふうん。やっぱ変な奴」

『まあそう分析できるってだけの戯言だ。お前には理解できないだろう……そろそろ奴らが来るな。狗井は気が狂いそうになりながらも誰かと通話中か。おそらくカマキリとかいう奴だろう。奴の不意打ちにはくれぐれも気をつけろよ』

「了解」


 返事とほぼ同時に狗井が上映室の入口に現れた。逆光で表情は見えない。ただ獣のような荒い息遣いだけが聞こえた。餌を前にした飢えた獣のものと似ている。


 狗井は端末を耳に当てたままゆっくりと降りてくる。まだ表情は見えない。声が届くくらいにマコトと距離が近づくと、狗井は前置きなく口を開いた。


「お前の名前は、“背原真琴”(ハイバラ・マコト)か?」


 唐突に本名(フルネーム)を言い当てられる。その声音は思ったよりも落ち着いている。だがその声の響きには、ほんの少し面白がるような弾みが感じられた。


「…そうだけど、なんで知ってる?」

 何故急に名前がばれたのか。マコトはその疑問を狗井とタチバナ、2人同時に質問していた。

 タチバナの即答。

『おそらく幹部の1人、“チャット”とかいう奴の仕事だ。なら今の電話はそいつか?…確かに情報技術…ネットの扱いに長けている者ならお前の顔だけで個人を特定する事は可能だが…しかしやたらと早い』


 ふと見ると、狗井が肩を震わせていた。


 笑っている。何かが可笑しくて堪らない様子だった。


「そうか……じゃあ、もちろん背原真綾(ハイバラ・マアヤ)も知っているよな?何と言っても、最愛の妹だものな」



 マコトの目が大きく開かれた。

「……なんで……」


 タチバナも沈黙した。インカムを通してその驚きが伝わる。


 狗井の端末から空気にそぐわない軽い電子音が鳴る。その画面を確認し、狗井が口笛を吹いた。


『…どういうことだ…!?』


 タチバナの狼狽と怒りの声。

 その端末に表示された何かを、タチバナは同調した狗井の視界で見たのだ。


「…何が、見えたの?」

 正直その答えは分かっている。だがそれを聞きたくはない。それでも聞かずにはいられなかった。


「焦らなくてもちゃんと見せてやる」


 その問いに、狗井は端末をこちらに向けた。


 マコトの心臓が凍りつく。


 そこに写る背原真綾の顔が目に灼きついた。


「そっくりだなお前ら。まるで双子だ。-今声を聞かせよう」


 闇から抜け出てきて、狗井の顔が見えた。

 その顔には獲物を捕らえた安堵が浮かんでいた。愉悦と興奮と、期待に彩られ、嗤っていた。


 狗井が端末を放る。スピーカーに切り替えられた端末は少しの間沈黙していた。


 そしてやがて、小さな声でたった一言。



『…ごめんなさい……』



 掠れた声。


 弱弱しく、か細い声。


 だがその声は背原真琴が決して聞き違えることの無い、紛れもない妹の声だった。






―2―







 最初に辿りついた公園、そこに倒れていた男の持っていたメモ、その住所に至るまでの道程。


 それで“損失”(ロス)した時間は30分ほどか。

 しかしそれ以前に、そのもっと前から自分は大きく“喪失”(ロス)していたのだ。そんな事はとっくに承知していたはず。

 それでも儀依はわずかな希望に縋りつき、背原真綾の足取りを追うと決めたはずだった。


 だがその損失の結果を現実に見ると、そんななけなしの決意も簡単に“消失”(ロスト)した。


 儀依航(ヨシイ・ワタル)は爆発があったとしか思えない樽馬の部屋を一目見てその場にくずおれていた。体中の力が抜けて、上に上がる気力すら湧かない。近づくことすら恐ろしかった。


 その場所の光景を見るのが怖い。


 もしそこに彼女の変わり果てた姿がありでもしたら、儀依はきっと一生自分を許すことができないだろう。


 罪悪感。後悔。


 力の抜けた両手を見る。


 この手のどちらかでも、彼女の腕を掴んでいれば。

 その機会は幾度もあったのに、その度に幽霊のように彼女はすり抜けて行ってしまった。


 手遅れ。すべて手遅れ。


 繰り返し浮かぶのは、後悔の念だけだった。




 対して早鷹はそんな儀依を置いて足早に2階へ向かった。そしてその屋根の無くなった部屋の中に無造作に入る。

 倒れている小太りの禿男。すぐそばにダガーが2本落ちているが刺傷は見当たらない。出血も無さそうだ。その代わりに何かが焦げたような異臭がする。早鷹はダガーを拾い、その柄に仕込まれた放電の仕掛けを確認した。


 決定的な物的証拠。


 背原真綾=切り裂き魔。


 そしておそらく、この男がバルーン、樽馬秀雄だろう。だが肝心の背原真綾が見当たらない。


 予想外だったのが、部屋の端に重なるように横たわる少女達だった。皆派手なドレスを着せられ、年齢に似合わない化粧が施されている。その顔は埃を被った汚れのせいで、早鷹には捨てられた人形のように見えた。

「これがこいつの嗜好ってわけか…胸糞悪い」

 少女達は気を失い、擦り傷などは見られるものの全員息はしていた。しかしその中に背原真綾はいない。

「バルーンがここで伸びてるってことは…切り裂き魔(リッパー)は仕事をやり終えたってことか?」

 呟くような独り言を言いながら早鷹は電話を掛ける。相手はワンコールもせずに出た。

「芦名か、悪いが…」

 少女達とバルーンの収容を頼もうと思ったが、それは怒涛のように怒鳴る芦名の声で遮られた。忘れていたが、早鷹は家を出てから芦名からの着信をすべて無視していたのだ。その履歴が10を超える前に、早鷹は端末をサイレントにしていた。


『今さら何だって言うんですか!私と話すことなんて…』

「悪かった、謝る。だがその前に話を聞け。今俺の目の前にザイオンの売人の1人が倒れてる」

『なんで停職してまで働くんです!?あなたは……え、今なんて言いました?』

「スローターズの1人、バルーンこと樽馬秀雄だ。監禁されていた女の子達が5人も一緒にいる。誰か人を寄越してくれ」

風船(バルーン)が樽、ですか?その中に女の子?えーと、あの、ちょっと待ってください…』

 早鷹は溜息を呑み込んで指示を伝える。

「とりあえず住所を言うから救急車と制服連中を送ってくれ。いや、少し待て…」

 早鷹は樽馬の腹にメモが差し込んであるのに気付いた。片手で器用にそれを開くと、そこには汚い字で“ケイジに集合”と書き殴ってあった。そしてその下に付け足しのように小さく記された“リッパーは捕獲”と言う文字。


 早鷹の舌打ち。

「…芦名、“ケイジ”って名前の場所や施設に心当たりあるか?」

『ケイジ…“檻”ですか?ちょっと思い当たりませんが…それもスローターズ絡みですね?探しますか?』

「頼む。実はかなり急を要する」

『分かりました』

 そう言うと芦名はすぐに通話を切った。さすがに2年の付き合いで、芦名はこちらの様子から緊急の度合いを察したようだ。


 早鷹は放置していた儀依を見るため部屋の外に出た。下を覗くとまだしゃがみこんだまま放心していた。


 その姿に苛立ちが募る。


「いつまでそうしてる気だ。上がってきて手伝え」

「…背原は…」か細くて情けない声。

「いない。奴らに捕まったらしい」

「……え?」

「ここに彼女はいない。でもまだ生きてる。さっきよりも危険が具体的になったが、それでも諦めるには早過ぎるだろうが。わかったら…」


 その時突然、背後で何かが爆発した音。


 早鷹が振り向くと、気絶していた樽馬が立ち上がっていた。


 それも遥かに巨大に身を膨らませて。



「お前も切り裂き魔(リッパー)の仲間かぁぁぁ!」


 その顔は怒りと怯えに歪んだ醜悪に満ちていた。樽馬、いや“風船男”(バルーン)はその手を伸ばし、早鷹の襟首を掴んだ。


 その腕が無数の胞状に膨れ上がる。


「なんだこりゃ…」

 その異様な光景に気を取られ、早鷹は咄嗟の判断が遅れた。


「よくも俺にこんなマネぉを!」

 あらぬ方向を見ながら叫ぶバルーン。


 限界まで膨張した腕が爆ぜる。


 轟音が轟く。ほぼ零距離での空気の爆発で早鷹は2階から空中に放り出された。儀依の跪く場所を遥かに飛び越え、早鷹は後方の植え込みに落下した。


「……刑事、さん?」

 呆然としたまま見送った儀依は、この異常事態にも虚ろなままだった。早鷹の落下を目で追ったあと、その飛んできた場所…2階のバルーンの部屋へと視線を向けた。


 そこに浮かんでいたのは、冗談のような人間風船の姿。


「お、俺は痛いのは嫌なんだ…大ッ嫌いなんだだから、だからこの姿を手に入れたってのに…」

 バルーンはうわ言のように呟きながら周囲を見回す。 


「リィッパアァァァァ!!切り裂き魔ァ!何処だどこだドコだぁ!!絶対に許さないぞ!」

 怯えながら叫んでいた。その様は虚勢を張って駄々を捏ねる子供と同じだった。

 ただそれは超常の力を持った子供だ。そんな自制力しか持ち得ない人間が、計り知れない力を持っていることが脅威だった。

「もっとお仕置きしてやる!二度とこんなマネができないように、徹底的にヤク漬けにしてやる!!」


「切り裂き魔…背原…」


 儀依は目の前の怪異ではなく、“切り裂き魔”(リッパー)という単語にだけ反応し立ち上がった。

「お前が背原を…」

 体に力が戻ってくる。暗く深いところから湧いてくる暴力的な力が溢れる。


 こいつらのせいだ。


 今日自覚したばかりの煮えたぎる殺意が、確かに自分のものだと感覚された。

「背原をどこに連れてったんだよ……!」


 その叫びで怯気(きょうき)に駆られた狂気のバルーンが儀依に気付いた。そして明らかな自分への敵意に敏感に反応し、更に怒りを増して怒鳴る。

「お前も敵かぁ!?き、今日はなんて日だ…どいつもこいつも俺を虐めようとしてぇ……!」


 悲鳴に近いバルーンの叫びに呼応するようにその体が膨張する。そしてサングラス越しに儀依を狙い、間髪入れずに“加速機構”(アクセラレータ)によって自らを射出した。


「お前らみんな、吹っ飛ばしてやるゥ!」


 叫びながらの頭からの突撃。まるっきりロケットのように自らを加速させ儀依に突っ込む。


 バルーンの体は避ける気すらなかった儀依のやや右側に“着弾”した。その瞬間儀依が見たのは、着弾で細切れに破裂するバルーンの“外見”と、それをそのまま平均的なサイズにした“中身”だった。


 儀依はその手を真っ直ぐに伸ばしていた。バルーンにではなく虚空へ向けて。そうするべきだと感覚で理解った。


 自分が今まで掴み損ねたもの。


 その全てを掴めるだけの“手”が必要だった。




 同時に凄まじい空気の膨張と爆発音。


 公営住宅の一画が、砂塵と土煙に覆われた。







―3―







『2人は一緒にいない方がいい』


 葵創祐(アオイ・ソウスケ)の言葉。


 またあの時の別れの言葉。もう、いい加減やめて欲しい。背原真綾(ハイバラ・マアヤ)はこれが単なる回想だと分かったうえでそう思った。それくらい何度も何度も再生された記憶だった。


『マヤちゃんと真琴が…その、2人がお互いに、兄妹以上の感情を抱いてるのは知ってる。それは別にいいと…うん、俺は思う。好きって気持ちには決まりなんてない、自由なものだっていうのが俺の持論だ。自分で言うのもなんだけど、俺はそういう方面に割と寛容な方だと思う……こんな時に何言ってんだ、俺…』


 創祐さんが気付いているのは何となく察していた。だからある程度の許容はしてくれているのも知っていた。


『でも、俺が言うのもなんだけど…2人の間にあるのはそういうんじゃない、と思う。上手く言葉にできないのが悔しいけどさ…今浮かんだ言葉で言うなら…それは“依存”かな…悪い方の意味での』


 “依存”。その言葉を聞いて、違うとは思えなかった。


 むしろその表現は控えめだ。


 自分にとって兄は“半身”だった。

 同時にこうありたいと願う“理想”だった。鏡のように相似した外見が、逆にお互いの違いを明確に気づかせる。その上で真綾が1人の人間として尊敬し、敬愛する最も近しい“他人”だった。


『だからさ…変な言い方だけど、これはいい機会なんだ。俺は2人の“保護者”だから、2人を見守る義務がある。その俺の考えでは、このまま会ったり、一緒にいると…きっと2人共駄目になる。そう思う』


 そんなことない!


 その思いは言葉にならなかった。ずっと自分達を知っている創祐にはそれが間違いないと言えるだけの根拠がある。


 自分達の“過ち”を知っている。その数々を。だから否定する言葉が形を為さず、虚しく消えていく。


 その時自分はただ震えていた。味方だと思っていた葵創祐が、真綾の望まない決断をしようとしている。それがただ怖かった。


 そして葵創祐は、きっとずっと前から考えていたその危惧を、その思いを、今初めて口にしたのだ。


『お別れ……今の俺達の事情が、必然的にそうさせる。自分でも卑怯なタイミングだって思う…実際俺は卑怯なんだろうな。だから恨むなら、好きなだけ俺を恨んでいいよ。マヤちゃんにはその権利がある。だから最後のお願いだ』


 そしてずっと下げていた頭を上げ、創祐は真綾の目を見ながらはっきりと最後の言葉を宣告したのだ。



『もう真琴とは、二度と会うな。頼む』



 奇しくもそれは真綾と真琴、2人の両親が生前に下した決断と、全く同じ答えだった。







 …頬が痛い。頭が痛い。



 最初に感じた痛みはそうだったが、意識が覚醒するにつれてだんだんと全身の痛みが感覚されだした。


 目を開けると正面の壁に掛け時計があった。

 23時を少し過ぎたところに長針があった。 


「お、目ぇ醒めた?…ありゃ、泣くほど痛かったか?」

 聞いたことの無い男の下品な笑い声。

 その言葉で自分の方が濡れていることに気付く。反射的に頬を拭こうとしたが、両手が上に上がったまま降りてこなかった。

 上を見ると両手が拘束されている。黒いビニールテープのようなもので何重にも巻かれ、天井からフックで固定されていた。


 意識の覚醒。バルーンとの戦闘を思い出す。

 すぐに蘇った恐怖と嫌悪感で慌てて周囲を見る。


「…ここ…どこ?」

 見たことのない景色だった。雰囲気でいうならどこかの地下倉庫といった感じが一番馴染む。真綾はそこで、両手を拘束されて見知らぬ男と2人きりだった。


「ここは秘密の地下牢獄さ。俺達“屠殺集団”(スローターズ)の間じゃ単に“檻”(ケイジ)って呼ばれてる」


 スローターズ。真綾の警戒がテープの軋む音で表現された。じゃあこの男もバルーンの仲間の1人か。


「あ、そうだ、お初にお目にかかるな。俺はスローターズの1人、ここじゃ“チャット”なんて呼ばれてる」

 自己紹介にも関わらず、チャットはずっと後ろを向いたまま何かの器具を点検している。

 棒状の、そう長くない何か。それがチャットの前の簡易作業台にずらりと並べられていた。

 男は「よし、OK」と呟くと真綾に向き直った。その顔にはどこか特徴的な、歯がむき出しの半円形の笑みが浮かんでいる。


「えっとね、これから尋問するんだけどさ、素直に答えてくれるなら悪いようにはしないよ。まずは、名前は?」

 真綾はその段階でこいつと会話をする気はなかった。もちろん質問に答える気もない。頭にあるのはどうやってこの拘束を抜け出すか、ただそれだけだった。

 腕に力を込めるものの、その縛めは解ける気配をまったく感じさせなかった。本格的な拘束具だ。それは分かるが真綾にそれから解放される知識などなかった。


「ギァ…ッ!」

 低い電気の音と共に、体に電流が流れる衝撃が走る。

「無視は駄目だぜお嬢さん。その場合はペナルティだ」

 眩む視界の前に、先程チャットが点検していた棒がちらつく。棒の尖端に火花が散る。どうやら防犯などに使われる“電気棒”(スタンロッド)のようだ。

「今まであんたが散々使ってたヤツだろ?そいつがその身に降りかかる前に話しちまいな。名前は?」


 相手は手馴れていた。中途半端な自分と違い、こういうことの本職(プロ)であるのが分かった。しかしそうだとしても、その質問に真綾は答える気はなかった。


 質問があるのはこっちだ。


「キ…」「キ?」

 チャットが耳を寄せてくる。

切宮一狼(キリミヤ・イチロウ)の居場所…ァグッ!」

 言葉の途中で電流による衝撃。さっきよりも長い。

「そっちからの質問もNGね」

 体がバネ仕掛けのように跳ね回った。

「な・ま・え・は?」

 電流が止むとすぐに同じ質問が飛んでくる。

 息が乱れる。汗が吹き出す。とても何か喋れる状態ではなく、真綾は体の震えを抑えるのに必死だった。

「ギャ…ァ!」

 そこにまたロッドが押し付けられる。

「質問の後、10秒待って答えがなくてもペナルティ。オッケー?その繰り返しだ、あんたが答えるまでな。名前は?」




 その後は無為な時間が流れた。


 チャットの質問。

 真綾の沈黙。


 (ペナルティ)、衝撃、叫び、そして失神。


 覚醒するとまたその繰り返しだった。目を開ける度に正面の時計が見える。最初に見た時からまだ10分も経っていない。

 あの時計は、きっとそれを自分に知らしめ、絶望させるのが目的なのだろう。この部屋のすべてが自分に諦めを促す仕掛けなのだ。


 その間に真綾が悟ったのはそれだけだった。

 項垂れた顔を上げる力も入らない。喉もとうに涸れていた。足が震えてまともに立てていないので、手首に食い込んだ拘束が痛かった。


「は…強情だなあ」

 頭を掻きながら、チャットはその手のロッドを自分の首筋に当て、そして何の気なしに放電した。


 上目遣いでその姿を見ていた真綾はその目を疑った。それに気付いたチャットがにやけた顔を寄せてくる。

「驚いたろ?散々痛い目食らってる電気を俺も“食ってる”ことに。まあ俺のは“充電”だけどな」

「あ…な、た…は……一体…?」

「おっと、質問はNG……だけどまあいいや、オマケね。なんかもう飽きてきたし…俺もあのバルーンとおんなじだよ、“顕現能力者”(インカーネイター)って奴」


 …また、“インカーネイター”。


『この街にはゴロゴロいるらしい』

 再びあの日の創祐の言葉が浮かんだ。しかし追憶に入る前にチャットに顎を引ッ張られ、まるでキスでもするように顔を引き寄せられた。その間近に迫ったチャットのにやけた唇が、囁くようにそっと告げた。


「その呼称、あんたも全く知らないって訳じゃないんだろ?うわ言で呟いてたもんなあ、“背原真綾”ちゃん?」

「…え…?」


 チャットの口が意地の悪い半円形を形作る。


「…知っ…て…?」


「実は気絶している間に調査(リサーチ)は済んでるんだよね。あんたの周辺も色々把握してるよ」

「…馬、鹿…にして……!」


 弱々しく唇を噛む。そうしないと涙がこぼれそうだった。しかしこいつの前でそんなところを見せたくない。それは真綾の意地だったが、そんなプライドが酷くちっぽけに思えた。

 そしてそう思わせることこそがチャットの狙いだ。それは頭で分かっているが、今まで耐えてきた徒労感とその虚しさが、否が応にも真綾に重くのしかかった。

「ヘッへ。なかなか堪えたろ?こうやって少しずつマヤちゃんの頑固に抵抗しようとする意思、そいつをボキッと折るための悪ふざけだ。俺が本当に知りたいことを聞いた時、スムーズに喋ってもらえないと困るんでね」

 チャットが屈み込んで真綾の目を覗き込む。しばらくじっとそうしていた。


 真綾は顔を逸らし呼吸を整える。

 落ち着け。自分の精神を揺さぶるのがこいつの狙いだ。思い通りになどさせるな。冷静になれ。


 チャットは何もしない。にやにやしながら自分が息を抑える姿を、ただ眺めて待つチャットの視線が不愉快だった。そして不可解だ。

「…なんで、見てるの?」視線を合わさぬようにして、こちらを覗き見るチャットに問う。

「いやー…この情報(ネタ)を聞いたらあんたの顔がどうなるのかなあって思って。ちょっと楽しみでさ」

 また顔が近づく。

「マヤちゃんの情報は俺の顔検索ソフトで探し出したんだけどさ、便利だよねこの街。QPDAの登録義務のお陰で、一般人でも探そうと思えば簡単に探せるから。言ってみりゃ市民皆“顔バレ”状態なわけだからプライバシーなんてあったもんじゃねえ」


 …そこからばれたのか。


 “市民資格等登録”(QPDA)には本人の顔写真が必須とされている。それは本来市管理者しか閲覧できないはずだが、そのセキュリティは『わざとらしいくらい絶妙に脆弱』だと、真綾は橘から聞いたことがあった。

 つまり漏洩が有り得る事を前提で、それらしい保護措置が施されているに過ぎない代物らしい。チャットは僅かな時間で、そこから自分の事を調べあげたのだ。

 チャットはいかにして自分の素性にたどり着いたかを嬉々として語った。


「個人情報ってのはひとつ漏れると芋づる式に次々と引っ張れる。つまりマヤちゃんの顔から、生年とか経歴とか、所属してる学校、そんで家族構成…例えば兄妹の事とかまで、ね」


 その言い方に真綾は心中がざわつくのを感じた。何かを含ませたような言い回しが、久しく忘れていた感情の琴線に嫌な感触を帯びて触れてきた。


「背原真琴くんだっけ?お兄さんの名前」

 チャットと自分の顔の間に端末が割り込んでくる。その端末に表示された画像に、真綾の思考が止まった。



 一ヶ月。たったの約一ヶ月。

 決して長くはない時間なのに、そこに映る兄の姿が真綾には酷く懐かしく思えた。


「…お…兄ちゃ…」

「うわなにその切ない顔。まあいいけど…そのお兄ちゃんがさあ…今まさに“屠殺集団”(ウチ)に狙われてる…って言ったらどうする?」


 真綾の目がこれ以上ないくらいに見開かれた。


「これはほんのついさっき送られてきた画像。ウチのリーダーで“連続殺人鬼”(シリアルキラー)の狗井って奴からね。その狗井に画像を見せたら真琴くんに一目惚れしちゃったらしくてさあ。今現在彼に猛アタック中らしいよ?」

 それは事実とは違うチャットの捏造した筋書きだった。時間的に見てもそこには無理が生じるが、真綾にそんなことは分かるはずがなかった。事実そこに兄の姿はあるのだ。


「…やめさせて…!兄には何も関係ないじゃない…!」

 真綾は目の前のチャットの顔に掠れた声で叫んだ。噛み付かんばかりの勢いで動かない体でもがいた。真綾は痛みも忘れ、髪を振り乱してチャットに詰め寄る。


 腹部から全身に衝撃。抗いようのない反射に、真綾の体が意思とは無関係に仰け反った。


「やっぱそうなんだ。マヤちゃんの“記録”(ログ)を見てもしやと思っちゃいたけど…そんなに兄さんが大事なんだ」

「あぐぁ…やめ、させ…!」

 電流の弾ける音が鳴り続ける。腹部に当てられたロッドから延々と送られてくる電圧で視界に火花が散った。


「それは家族として?兄妹として?……それとも1人の人間、パートナーとして?…クッ…ハハ、アハハハ!!」


 チャットの哄笑。明滅する視界。


「ハハ、聞くまでもないか。そのせいで家族がバラバラになっちゃっても構わないくらい、愛してんだもんなあ……ってなわけでリーダー、裏は取れたぜ」


『礼を言うチャット。これであいつを捕まえられる』


 聞いたことのない声が目の前の端末から洩れた。精悍さの中に、どこか狂った響きの混ざった男の声だった。

「紹介するね。この声の主が我らがリーダー、“連続殺人鬼”(シリアルキラー)の狗井だ。実は尋問の様子は全部狗井に送ってたんだよね。ちょうど今から真琴くんに会うとこだ。一番良いところに間に合って良かったな、マヤちゃん」

 スタンロッドの充電が切れる。漸く電圧から解放された真綾が糸の切れた人形のように膝を折った。しかしチャットの言葉が真綾の意識の喪失を阻んだ。


「…お願い…兄は、駄目…」

「そのお願いは聞いてやれないなあ。尋問ってのは相手が嫌がることをやって、進んで喋りたくなるよう促すもんなんだから」

 だがその肝心の質問をしていないではないか。真綾の顔が悔しさと焦りで歪む。チャットの本当の尋問はまだ始まってすらいない。今までのはただの悪ふざけで、自分を甚振って弱らせるだけのものなのだ。

「何でも、喋るから…巻き込まないで」

 それでも真綾はそう言わざるを得なかった。何を喋ればいいかも分からない。それは単に兄をこの件から遠ざけたいが為の、ただの懇願だった。


『残念だが少し遅かったな。もう着いてしまった』

 だが狗井の言葉で、その願いも虚しく消えた。

「ありゃりゃ」

 チャットの軽い応答。


『お前の名前は背原真琴か?』


『…そうだけど、なんで知ってる?』


 兄の声。とてつもない罪悪感が真綾にのしかかる。


『そうか……なら背原真綾も知ってるな。大事な大事な妹だものな』


『……なんで……』

 真琴の声と自分の心の声が被る。


 なんで?

 

 こんなことになったのは自分のせいなのに。

 これは自分ひとりの責任で、誰にもそれを負わせることがあってはならないものなのに。


 なのに、よりによって。


「こういうのなんて言うか知ってる?“因果応報”だよ。他人にやった事が自分に戻って来るってやつだ。この電流も言ってみりゃそうさ、今まで散々他人に食らわせ続けた、その“報い”だよ」


 チャットの勝手な言い分が心を抉る。今の真綾の心には、そんなチャットの戯言すら箴言のように聞こえた。


『今声を聞かせよう』

 端末の向こうの狗井の声に体が震えた。

「お?お呼びだぜマヤちゃん。最愛の兄貴に声を聞かせてやんなよ。何でもいいぜ、助けてでも愛してるでも、ハハッ!」


 そんな言葉はとても怖くて言えなかった。だんだんと怯えが全身に広がり、声を出すことすら恐ろしくなってくる。

 それは悪い事をしたと自覚した時の子供が味わう恐怖と同じ類の恐怖だった。痛みや疲労ではない、萎縮による震えが真綾を襲っていた。


 この馬鹿げた復讐を始めた、最初の頃の自分が思い出された。たった1人傷付ける度に泣きそうになり、震えが止まらなかった少し前の自分。ただどうしてもその理不尽が許せない気持ちだけで、街の暗部を荒らし、駆け巡っていた自分。


 今の真綾にはその気持ちすらなかった。その思いを抱いたことが間違いだったとしか思えなかった。自分の浅はかな思いを貫くことで、結果自分の一番大事なものを危険に晒してしまったという後悔しかなかった。


 その様子を見た、チャットの溜息と箴言。


「…全く、子供(ガキ)ってのはいっつもそうだ。取り返しがつかなくなってから、初めて自分がどんなに悪い事をしたか知ることになる」


 その言葉が突き刺さる。


 端末の向こうにいるはずの、真琴の顔が浮かんだ。


 きっと真琴も感じたはずだ。その声を聞いただけで自分が感じた痛みを。半身をもぎ取られたような激痛を。


 …それを与えたのは自分だ。



「…ごめんなさい…」



 真綾にはそれ以外言える言葉がなかった。


 情けなさに涙が零れる。


 所詮自分が子供に過ぎないことを、真綾は今さらながらに嫌というほど思い知った。







―4―






 砂塵が収まった公共住宅の敷地には、バルーン以外の人間は誰ひとりいなかった。


 薄暗い明かりの中で興奮したバルーンがその息と身体を弾ませ、慌ただしく周囲を見回していた。

「リッパー…リッパーはどこなんだよ…!」


 バルーンにとって儀依と早鷹はその辺に転がる石ころと変わらなかった。それが自分に飛んできたから払っただけ。自分と切り裂き魔との間に挟まった小さな障害物を、苛立ちと共に力任せに排除しただけだ。

 だからバルーンは2人がまだ生きているなどとは考えもしていなかった。少なくとも自分に歯向かう力を残しているとは思ってすらいない。


 その体躯はもはや尋常ではないサイズに膨張していた。自らの“虚栄心”を顕現するバルーンの体は、その怯えと怒りによってはちきれんばかりに膨れ上がっていた。


「散々お仕置きしてやったのに…その“恩”を仇で返すなんて、信じられない馬鹿な子だ…!」


 バルーンは怒りの根源である切り裂き魔の少女を探していた。大人である自分に対し、子供の分際で苦痛を味あわせたあの少女を放っておくわけにはいかないのだ。


“虚栄心”(バルーン)が更に膨れ上がる。気付けばその体長はそばに建つ公共住宅と変わらないまでに肥大していた。


「…ん?」


 目の前に足があった。


 自分の顔のすぐそこに男物のスニーカーが見える。地上から6、7mほど離れた空中に、人の足が見えた。


 口を開けて自分の頭上を見上げる。


 そこには先ほど自分が吹き飛ばした、どこかの学校の制服を着た少年が浮かんでいた。その手で何かを掴んでいる。バルーンには少年が、その何かにぶら下がってこんな上空に留まっているように見えた。しかしそこには何もないのだ。



 少年は、虚空を掴んでバルーンを見下ろしていた。



「化け物が…こんな高さにまで吹っ飛ばしやがって」

 儀依はその足で思い切りバルーンの顔を踏みつけた。

「ぶっ…な、何…!?」

「この感触…文字通りの風船かよ」


 その言葉通りの弾力で受け止められた足が、相手に打撃が通っていない事を儀依に知らせる。


 バルーンにも痛みはない。虚栄心の実像たるバルーンの膨らんだ体は柔らかな“殻”だった。本当は小さく弱い自分を守る為の、見せかけの外殻なのだ。


「つまり中身をやらなきゃ駄目ってことだろ…!」


 儀依がふいに落下した。掴んでいた何かを手放したように自由落下し、バルーンの中心部である腹部に向けてその拳を振りかぶった。儀依にはそれができる“確信”があった。


 バルーンの中身に到達する“武器”が、今の自分にはあることを確信していた。


 力を込めた腕が“ぼやける”。

 白く、薄く発光する霞のように半透明化した拳を、儀依は思い切り目標に叩き込む。


「……へ…?」

 身構えたバルーンの抜けた声。


 その拳はバルーンの外殻を傷つけずにすり抜けた。その様子を中身であるバルーン本体の目が捉える。

 触れられた感触もない。その腕は外側のバルーンの体を幽霊のようにすり抜けて、しかも腕自体に目でもあるかのように、本体であるバルーン目掛け、蛇のように躍りかかった。

「ヒィッ……!」


 バルーン本体の顔面を白く光る拳が捉えた。

 

 灼けるように熱い、白熱した拳がバルーンの顔に黒く焦げた烙印を刻み込む。


 苦痛が何より嫌いな男の、声にならない悲鳴。


 バルーンはそれから逃れる為に、再びこの少年を遠ざけるために自身を破裂させた。


 空気の圧縮と解放。


 さっきよりも遥かに大きい轟音と共に、公共住宅の一画がさらに破壊され、再び周囲は砂煙で見えなくなった。






―5―






 ここで真綾が出てくる意味が分からない。


 そしてその理由なんてどうでもいい。


 ただこの男が一番やってはいけないことをしたのは間違いなかった。それだけで充分すぎる。意味も理由も必要なかった。マコトはすでにこの男の名前すらその記憶から抹消(デリート)した。


「真綾はどこにいる?」

 それ以外に聞きたいことは無い。この男の存在理由も、今のマコトにとってはそれだけしかない。

「…漸く本気になっ…」


「聞いたこと以外喋るな」


 マコトの普段は伏し目がちな瞳は見開かれたままで固まっていた。その一言で場の空気が音を立てて凍る。同時に自分の心が一斉に目の前の男に照準(ライン)を定めたのが感覚された。


 まだだ。まだ“引鉄”(トリガー)は引くな。


 男はその異変に驚いたようだが、すぐにその顔に笑みを広げた。そしてわざとの如くゆっくりとした口調で安い挑発をしてきた。


「知りたかったら力ずくで来い。俺は漸くお前が同じ“舞台”(ステージ)に降りてきたようで嬉しいよ」


 無関係な言葉のひとつひとつに殺意が湧く。


 いや、殺す時間すらもったいない。


 “引きずり出す”。


 こいつの知っていることを、一秒でも早く。



 狗井の顔が狂気一色に染まった。


 

 マコトの精神もただ一個の意思に支配された。



 そしてその身は、眼前の害ある狂気を“侵略”(クラック)するためだけの、“心象回路”(サイコ・サーキット)“銃弾”(バレット)と化した。 


 


 





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