間話4 シェリル・ディド
剣を抜きオロチの娘を切ろうとするジェフ
「やめろジェフ。この子には罪はない」
「生きていることが罪だ、その子を渡せ」
ジェフがキラ様に近づく。
「断る」
キラ様は片手でオロチの子を担ぎ横にいるシヴァに目線を送ると
「シヴァ」
「はい、我を求める主人の為、我は最強の剣となりましょう」
シヴァさんが人型から氷の突剣に変わりキラ様の右手に収まる。
「貴様!人間だろうが!多くの人間がこの者たちに殺されたのだぞ!」
「だからなんだ!この子が殺したわけでもないだろうが」
ジェフの言葉もわかります。
オロチやヒミコによって多くの人が殺されました。
私の両親、姉達に弟が……
私も憎い。
でも私の心が憎しみに縛られると1人の美しく美しく気高いダークハイエルフの顔が浮かんでくる。
「(シェリル)」
優しく、そして力強い声。
私が尊敬し崇拝するネイ・イチジョウ様の声が。
そう、ネイ様に会わなければ私もジェフと同じことをしていたかもしれない。
ジェフを止められるのは私しかいない。
私はキラ様とジェフの間に割り込んだ。
「ジェフやめなさい!」
「いいえ、姫の頼みでもやめれません」
私は驚きました。
ジェフが反抗するなんて。
彼と出会って30年、一緒に住んで25年になりますがここまで聞き分けがないのは初めてです。
でも彼にオロチの娘を切らせるわけにはいきません。
「兄さんやめて!」
「サラ、お前も俺と同じ気持ちだろう」
「確かに龍族は憎いけど、でもその子は関係ないでしょう」
「クッ、ならんばワタシだけでも」
私とサラの説得も虚しく、
ジェフは私を避けつつキラ様が担いでいる少女に切りかかろうとしました。
キラ様は剣を構えジェフの剣をさばきます。
キラ様は私とサラを気にしてかジェフに攻撃をしません。
キラ様はどうしようか考えているようです。
キラ様に任せてわいけない。
主である私がジェフの相手をしないといけない。
私はジェフがキラ様に切りかかる瞬間、
「ジェフ、少し頭を冷やしてきなさい!……強制転移術」
「なっ、シェリ……」
ジェフは私の名を呼ぶ瞬間どこかに転移させました。
この強制転移術は術名のとおり強制的に相手をどこかに転移させる魔術です。
どこに飛ばされるかは飛ばされた本人の思い出深い場所だと聞いています。
なので学園都市か滅びた私たちの祖国のどちらかに飛ばされたと思います。
今のジェフはいつもの冷静な彼ではありませんでした。
少し時間が経てば少しは考えてくれると思います。
「申し訳ございませんキラ様。あの子の行動の責任は私のせいです」
「いや、そのことはまたあとで話そう」
キラ様は結局オロチの子を引き取るようです。
我が主のネイ様をあれほど立派な人物にした方です。
今は嫌われているかもしれないオロチの娘は数年後にはネイ様と同じように世界の人々から好かれる人物になるかもしれません。
そしたらジェフもオロチの子を好きになってくれるかも。
まだわかりませんがそれでも良い未来に向かっていくと私は思っています。




