96話「地区予選 ~決勝戦だぞ!⑥」
────コハクの戦い!
四方を黒い壁で囲み、ドットで構成された基地ステージが立体として具現化された密閉空間。何故かゆっくり地面が動いている。コハクは戸惑いつつも動く地面を軽い駆け足で進んでいる。
シューティングゲームで言うところの自動スクロールなのだろう。
主に前方の黒い壁からビュンビュンとドットの敵キャラが群れをなして襲いかかってくる。
「精霊具・九十九紅蓮ッ!!」
右手に具現化された槍から無数に複製したソレを撃ち出して、眼前の敵キャラを次々と撃墜!
ボカンボカンとドットの爆発が連鎖される。そして後に100、200と数字が出て秒で消える。
横から回り込んで襲いかかってくる敵キャラに槍で振るって斬り裂く。ドットの爆発でドカーン!
「危ないぴこっ!」
四方八方とドットではあるが丸い弾がコハクへ襲いかかる。
複製した槍が踊って迎撃しようとするが、すり抜けた!? コハク慌てて飛び退く!
「当たると一発でミスぴこ!」
「何ッ!」
更にビュンビュン飛び交う後続の無数の弾を、コハクは当たるまいと軽やかに身を翻してやり過ごす。
通り過ぎた丸い弾は四方の黒い壁へ消えていった。
「な……なんなんですか? これはっ!?」
「敵キャラと違って、弾は自機以外に当たり判定が存在せず、すり抜ける仕様ぴこ。当たると残機減るから注意ぴこ」
「……残機?」
「上方の自分の姿をしたドットの数ぴこ」
後方で追従しているドットの白い戦闘機こと例吐露ピコヒコが説明してくれる。
言われる通りに上を見ると、コハクとピコヒコをそれぞれ小さくドットにしたキャラが三つ。その側で1Pと2Pそれぞれに複数桁の数字が並んでいる。
敵キャラを破壊すると、その数字が増えていくみたいだ。
「そ、そういえば! 敵を破壊するたびに変な数字が出ますね……」
「得点として、上方のスコアに加算するぴこ。あ、それ取った方がいいぴこ!」
なんかドットのカプセルが流れてくる。つい手で触れると忽然と消える。
するとコハクはグンと速度を増した感覚を覚える。
「スピードアップのアイテムぴこ」
「はぁ……?」
「特定の敵キャラを破壊すると、パワーアップアイテムが出るぴこ」
向こうのピコヒコもショットで敵を撃ち落として、その度にカプセルを取っていってパワーアップしていくのが見える。
通常のショットの他にミサイルを左右に打てるようになって、更に追従する光の塊がピコヒコと同じ攻撃をする。それで弾幕が増して敵キャラを次々と破壊しつくしていく。
コハクは「何がしたいか分かりませんが……、隙ありですっ!」と槍を撃ち、ピコヒコを貫いていった。いや、すり抜けた?
「2プレイなので、お互い当たり判定はないぴこ」
「なんなんですかっ!? それっ!?」
ワケが分からず、走りながら驚愕するしかない。
これじゃ試合にもならないではないか? お互い攻撃がすり抜けるなら、決着のつけようがない。
「危ないぴこっ!!」
コハクに弾が付着し、ドットの爆発でボカーン!! ぎえー!
上方のコハクの三つあるドットが二つになった。そしてピカピカ点滅しながらコハクがリリースされた。
「今の何なんですか??」
「敵の弾に触れてミスしたから、自機をひとつ失ったぴこ」
「残り二つですか?」
「ええ。あと二回ミスするとゲームオーバーぴこ。防御力に関係なく敵キャラや弾に触れるとミスぴこ。それはそういうルールぴこ」
コハクは疲れた顔で「ぼ、僕にゲームしろって事ですか……?」とため息。
その後も敵キャラを一緒に倒しながら説明をしてくれた。
このルールはお互いに適用されていて平等。お互いを倒す事はできず、更に言えば攻撃も重ならない。つまり相殺する事による妨害もできないのだ。
本当に一緒に協力して敵キャラを撃ち落としてステージを進むしかない。
「ゲームなんて、僕はあんまりやってませんよっ!!」
「本当なら君も戦闘機に変えたいところだけど、不得手だと思うのでそのままの姿でプレイできるようにルール変えているぴこ。いつもの戦い方でやれるぴこ」
「……そ、それはどうも」
コハクは引きつった。
つまり対戦相手であるピコヒコは、こちらを倒すどころか一緒にゲームをやろうって事なのだ。
「それから全24ステージ構成のゲームで、全てクリアした時の得点の総数で勝敗が決まるぴこ」
「ええっ!?」
前から、なんか大きな飛行機がゆっくりやってきて、凄まじい弾幕をばら撒いてくる。
コハクは慌てて弾を避け続けていく。
何発か槍を当てても、赤く高速点滅するだけで、平然と動きながら攻撃してくる。
「き、効かない!?」
「ステージのボスぴこ。効いているけど、何十発か当てないと破壊できないぴこ」
「はぁ……」
ピコヒコも弾をかわしながら攻撃を続けて、ようやくボカーンと撃破した!
暗転して2ステージと英文字が浮かんだ後に、今度は森生い茂るステージに突入した。
ボスを倒したから次のステージへ進んだのだとコハクは察した。
それに向こうのスコアはコハクの数倍も稼いでいる。
このままでは不利だ。自機が全部なくなれば負け! 得点で上回らないと負け!
やるしかない、とコハクは奮起!
「九十九紅蓮・二十閃槍“爆嵐”ッ!!」
二十本の複製された槍を撃って、敵キャラをボカンボカン殲滅!
すると地上物として戦車キャラが出てきて弾を撃ってくる。コハクは弾を回避しつつ槍を振るって撃破していく。
更に槍を複製して猛威を振るって、敵キャラを次々と倒して流れてくるパワーアップアイテムに触れていく。
パワーアップには種類があって、スピードアップ、左右へのミサイル、通常弾を3方向(最大7方向)に撃てる、通常弾数発分のレーザーを撃てる、拡大していくリングレーザーを撃てる、自機と同じ行動をする分身(最大20個まで)、画面上の敵を全滅するボム一発分、何発か無効にできるバリア(累積可能)、と豊富だ。
三種あるショット系は併用できないので、取るたびに入れ替わる仕様。
複製した槍を撃つと全部自動的に三方向へ飛び去って軌道上の敵を撃破。
思った以上の弾幕で、苛烈な敵キャラの猛攻を迎撃できるので妙に気分爽快だ。
「……これは中々便利ですね」
更に分身するアイテムでコハク自身が三人になって、同じ攻撃を繰り出して怒涛の弾幕で敵キャラを撃墜していく。
「なかなかやるぴこね。負けないぴこよ!」
2ステージはデカい戦車で放射状に弾をばらまく強敵だったが、コハクは「九十九紅蓮・一閃槍“天翔穿”!!」とレーザーみたいな三方向の槍ショットが炸裂だ! 撃破! ボガガーン!!
ボスだけあって得点は多く、ピコヒコに追い付いてきた。
3ステージは海上面で、コハクは槍に乗って飛行。
サーファーのように水面から飛沫を上げながら縦横無尽に移動し、槍を連射して次々と敵キャラを撃墜しまくる!
早くも順応してきて余裕さえ感じさせるプレイだ。
「さすが天才だなぞ……」
そんな様子がモニターで映っていて、観戦客は試合なのか、ゲーム大会なのか、分からなくなってきたようだぞ。明らかに戸惑いでドヨドヨしている。
しかもエンターコミック学院側の生徒たちも汗を垂らして戸惑っている。
「おいおい! いつもの対戦形式じゃなくて2プレイ形式かよ?」
「普通に戦ってもいいだろ?」
「……マトモに戦っては勝てないから切り替えた?」
「オレもやってみてぇ!」
「もういいんじゃない? 見てよ!」
別のモニターにはナッセ、ヤマミ、リョーコ、フクダリウスが揃っている。その側で四つの棺桶。
この状況でピコヒコが勝ったとしても、多勢に無勢。
しかも全員、あの空間結界を破ってきたほどの猛者だ。どう見ても勝ち目はない。
「あ……!」
「でしょ? 好きにやらせておけばー?」
唖然とする生徒と、呆れる女子生徒。もう投げやりだ。
ただただゲーム大会のようにコハクとピコヒコの試合を眺めるしかない。ちらほら帰る生徒もいる。
しかし、ナッセたちの有利な状況を快く思わない人が二人いた。
オカマサとドラゴリラ。彼らも観戦席で訝しげに試合を眺めていた。
「チッ! 面白くないね……」
「同感やね」
オカマサとドラゴリラが(転校して)予選敗退しても、アニマンガー学院だけは順調に勝ち進んでいって、今や決勝戦。戦況からして、もはや地区予選優勝は決まったようなもの。
彼らはどんどん先へ進んでいって、全国大会へ進出するのだ。
それが熱血漢と自称するオカマサにとっては我慢ならないのだ。
「ぐぬうぅぅぅっ! ふんっ!」
オカマサは唸りながらブボッと放屁! 同じくドラゴリラもブボッと放屁!
あまりの臭さに、後方にいた観戦客は絶叫しながら脱兎の如く左右へ走っていった。そしてその辺一帯は誰もいなくなった……ぞ。
「俺は誰よりも情熱的に9999億倍くらい努力をしているのに、なんで糞どもは楽々と先へ進んでいるんだっ! 糞が!」
「せやで! ワイら頑張っとるのに、全然報われへんわー!」
「ああ、俺たちだけ血涙流して努力して報われず、城路君たちは血涙流す努力もせず楽してる不公平な世の中だよ」
「それは聞き捨てならねーァ……!」
なんと可愛らしい洋服のロリっぽいカレンが怒りの形相で睨み付けていた。オカマサは「あ?」と凄む。
にらみ合っていた二人はしばし沈黙…………。
チササは「お、落ち着くだ!」と焦る。
が、カレンはニヤッと邪悪に笑う。
「まーァ、楽々に見えるってこたーァ……。目はただの飾りかーァ」
「フン! マグレで勝ち続けているのを見て面白いと思えるかい?」
好戦的なカレンは「ハン! そう思いてぇのかーァ? なっさけなーァ」と鼻で笑う。オカマサは癪に障ってピクッと眉をはねた。
「お? あたしと殺るかーァ?」
「身の程知らずはほどほどにしておけよ。糞餓鬼が!」
「その言葉、そっくり返してやらーァ!」
「なんだとっ!? ならばそれを999999999999糞倍にして返してやるぜっ!」
試合そっちのけで一触即発! カレンとオカマサの間で火花散る!
今回のキャラ紹介!
『例吐露ピコヒコ(暗殺者)』
ボサボサの赤髪でメガネをかけた優男の青年。ドット系のレトロゲームが好き。格闘どころか運動すら苦手。体力は一般人なみ。
一応全属性の初歩魔法は取得している。
空間内ではゲームのプレイヤーキャラクターになりきる事が多い。
芸夢監獄(『空間結界』でドット調の世界を展開)
2プレイゲーム(対戦相手と一緒にステージを進んでスコアで勝敗をつける)
秘技108連射──ッ!(秒に108発も撃てる。高○名人も真っ青。リアルだとコントローラー必壊!)
秘技イナズマ振動連射!(音速1000で連射する事で空気振動と静電気振動によって理論上、秒間約9万連打を可能とする。コントローラーどころかゲーム機とテレビが爆発する諸刃の剣。家ごと爆発したという逸話も!)
秘技シャイニング超伝導連射!(代々継承せし家系奥義。光速レベルの究極連打で理論上、秒間約2000垓もの連打を可能とする。繰り出したが最期、核融合によって広範囲に超高熱プラズマを放出し国ごと消し飛ぶ禁断の奥義。継承のみで実際に使用した事はないという)
威力値:7900




