88話「地区予選 ~準決勝戦だぞ!⑥」
ナッセの三大奥義が豪快に炸裂し、カレンを大地に沈めた!
その結末に興奮して歓声の大音響で湧き上がったぞ!
「「「うおわあああああああああああッッ!!!!」」」
それとは対照的にレキセーンモサ学院の生徒たちはこの事実に驚いてザワザワしていた。
「まさか……! 我が校のエースがたった一人に敗れた……!?」
「しかも堂々と戦って!!」
「今まで複数で挑んだり状態異常攻撃や特殊能力でハメてきたりが多かったのに!?」
「俺たちゃ夢でも見てんのか!? マジで??」
応援していたのだが、まさかの事態に戸惑っている。
それだけ『血脈の覚醒者』でありエースでもあるカレンの実力をよーく知っていた。同じ学院の生徒として彼女の力を知らない人はいない。
単騎で太刀打ちできる創作士はいないとさえ信じきっていた。
だが敗れた…………!
「まさか負けてしまうんじゃ……??」
「いや! カレンと戦ったヤツはもう戦えねぇ!」
「それにこっちはまだ巌穴兄妹がいる!! まだこれからだ!」
とある生徒がニッと笑う。
そして同じく隣の生徒が「ああ! アイツらは種族値たけーんだからな!」と安堵していく。更に別の生徒が「オオガもか?」と聞いていたが、聞いていた生徒たちは微妙な顔をする。
「めちゃくちゃ強いのは分かるんだがな~!」
「異常なシスコンだろ?」
「堅物っぽい癖に実はシスコンの上にロリコンだし!」
「あのカレンにも物怖じせずセクハラして、叩き潰されてるんだよな!」
「アイツ、人目をはばからず妹の写真にチュッチュッとしてたしな! あれきめぇ!」
うんうん、と頷きまくる生徒。あんまり心証は良くないみたいだ。
オレはというとカレンとの死闘でボロボロなので瓦礫の影で隠れて一息。ふう……!
近くでエレナとカレンの棺桶が並べられている。
「……後はチササとオオガの巌穴兄弟だが、大丈夫だろう。フクダリウスとモリッカなら充分勝てる相手だ」
フクダリウスとオオガ、モリッカとチササの激戦を見やる。
後ろへ飛んでいたチササは二の足で着地し、滑りながら地面に跡を付けて踏ん張った。
「えっ? まさかカレンさ落ちただかー??」
まさかのエースであるカレンが敗れた事を知り、チササは動揺。
その隙を突いて、モリッカは杖を後ろ向きに引いて光子を収束させていた。大地を揺るがしていき、チササは慌てて向き直るが、既に充填済み! 驚きに見開くしかない!
「し、しまっ……」
「まじかる大爆裂────────ッ!!」
引いていた杖を思いっきり前へ突き出すと扇状に凄まじい奔流が放たれた!!
それは大地をも裂きながら莫大な奔流が広がっていって、ちっぽけなチササをも呑み込んでいく!!
「我が愛しのチササァ────────────────ッ!!」
オオガが振り向いた瞬間、フクダリウスは戦斧を振り回して「フクダリウス・ハリケーン!!」と竜巻の奔流を放った!!
その凄まじい激流に大柄なオオガも吹き飛ばされて、そのまま大爆裂の奔流へ押し込まれた!
二人とも「うわあああああああ……!!!」と白光の彼方へ呑み込まれていく!
ズドオオオォォォォォン!!!
大地を揺るがし大規模な大爆発が明々と噴き上げられて、戦場をも真っ赤に染めた!! 凄まじい超高熱の烈風が吹き荒れ、破片が飛び交う!
こんな強烈な大技が炸裂する所を目の当たりにすれば、誰もが勝敗がついたと興奮して歓声を上げずにいられない!!
「「「わあああああああああああああああッ!!!」」」
未だ明々と爆風がキノコ状に噴き上げている背景を尻目にフクダリウスとモリッカは互いにパンと手を叩き合う。
オレもそれに安堵して力が抜ける。
「これで準決勝戦は終わっ……」
ズァオッ!!! なんと爆風が四方八方に吹き散らされて、眩い中から二人の人影が!
ズンと大きな足が地面を踏みしめた!
「なに────────これ────────!!?」
その光景に絶句するモリッカとフクダリウスとオレ!!
オオガは緑色に染まっていて五メートルの筋肉質の体躯、手と足に水かきが、口がクチバシ、頭上には皿が!!
そして背中から頑強な甲羅がメキメキと膨らんできた!!
双眸がキラリーンと輝き、オオガは戦意を昂ぶらせた!
「ヌオオオオオオオオオオ!!!」
大気を震わすほどの咆哮で、地面を飛沫が荒れ狂う!!
これはまるで…………ッ!!
「……『河童』ッ!!?」
すると観戦席にいた同じレキセーンモサ校の生徒は頼もしいと笑みを浮かべる。
「シスコンロリコンできめぇが、あのバケモンぶりにゃ誰も勝てねーよ!」
「ああ! なんたって『魔獣の種』によって人外になったからな!」
「『河童』は水の魔獣。クマをも数十倍上回る膂力と胆力は一騎当千!!」
「そして妹は────……」
チササはこれまでのようなチビではなく、身長が二メートルを越えるほどの大女に変貌を遂げていた!
ポンチョは大爆裂魔法で消え去ってしまい、顕になっているのが露出度の高い水着みたいなもので、大きな胸と細い腰と膨れた尻を余す事なく魅力を伝えていた! ボン、キュ、ボーン!
背中からは漆黒の翼が一対! 子供っぽかった顔立ちはスラリとした美人顔に!
手を振るうだけで、凄まじい風圧がブオオッと吹き荒れた!
フクダリウスもモリッカも腕で顔をかばい、踏ん張る。ビリビリと威圧が響く。
「『天狗』だ!! しかも女天狗!! 久々に色っぽいの見れたぜぇ!!」
「うおおおおおお!! やっちゃってくださーい!! 姉御さん!!」
「魔獣としての力を思い知らせてやっちゃってください!!」
口々にレキセーンモサ校の生徒たちはヒューヒューとはしゃぐ!
オレは満身創痍の体に回復魔法をかけ続けたまま、突然の二人の変身に絶句していた。
あのマイシを彷彿させるほどのバケモノが二人も出てきたのだ。
威力値としては二〇万を超えるだろう……。
「くそ……! ダメージ酷くて満足に戦えねぇ……ッ!」
ここはフクダリウスとモリッカにこの試合の命運をかけるしかねぇっ!




