86話「地区予選 ~準決勝戦だぞ!④」
「ぬうううおおおおおッ!!!」
フクダリウスの戦斧を振るう右手首を掴み、憤怒とオオガは更に腹を持ち上げて高く跳躍しながら弧を描くように真っ逆さまと地面へ叩きつけ、轟音を立てて土砂を噴き上げる。
更に再度の跳躍、回転して地面に叩きつける。更の更に三度の跳躍、回転しながら重量感たっぷり地面に叩きつけた。
ドズウウウウゥゥゥンッ!!
あまりにも強烈すぎて大地が三回も陥没し続けて、大きなクレーターに抉れた。
「ぐわあああああああ!! がはっ!」
「これが、ワシが繰り出す全力の三連イーグル山嵐だッ!!!」
さしものフクダリウスも絶叫し吐血。
しかもオオガは馬乗りになって「ラッシュ乱嵐ッ!!!」と機関銃以上の超高速連続パンチでフクダリウスを穿ち続けた。
その衝撃波で土砂が巻き上がり、更に陥没を続けていく。ズズズン!
「ナッセを血祭りにする邪魔をした報いを受けるがいいわッ!!」
「ぐわあああああああああああ!!!!!」
乱打の弾幕にフクダリウスは絶叫するしかなかった。それでもオオガの猛攻は止まない。
「ぐわあ~ッ!!!」
モリッカも満身創痍。衣服が破け滲む鮮血。それでも歓喜に満ちた顔。
それに対しするチササも同じくボロボロの満身創痍だが、嬉しそうだ。
「バースト破竹だぞーっ!!」
超高速で突いてくる槍がモリッカの腹を穿ち、なんと連続で爆発がババババンと炸裂し続けた。そのまま押し切って壁に激突してもなお連続爆発はバババババンと炸裂し続けていた。
まさに破竹の勢いで爆発は止まないぞ。ババババーン!!
ズルリと血を噴きながら沈んでいくコマエモン。その真上で金属のチリが渦巻いていた。
側でソウタロウはしたり顔で見下ろす。
「悪く思うな……。これも勝負の宿命よ……」
横たわるコマエモンは血まみれで動かない。やがてドンと爆発して棺桶化。
ソウタロウが「さて……次は……」と振り向いてきた。こっちと目が合う。遺跡の上から覗いてたのを見つかってしまいドキッとした。
たまたま通りかかったトコにソウタロウがいたのはタイミング悪ッ!
「今度はそちらをサクサク削って差し上げましょう!」
「ギャ────ッ!! 来た────ッ!!」
金属のチリが群がってくるのは恐怖を覚える。咄嗟に遺跡を盾に身を隠す。するとザザザザザッと遺跡を粉微塵に削り散らしてきてビビる。一瞬でパラパラだ。
無数の小さな刃が群がって削ってくるのはマジで怖い!
ブワーッとこちらを逃すまいと覆いかぶさってくる。
「ひいっ!」
足腰が引けたまま、ドウッとフォースを噴き上げて足元に花畑を広げ、花吹雪が舞う。
そしてオレは銀髪をロングに伸ばしてたゆたわせる。
「おわーッ! 来るなーッ!! 攻撃無効化ッ!!」
掌を向けると、襲いかかってくる金属のチリは和やかな光飛礫にサラーッて散ってしまう。キラキラ煌めいて消えゆく……。
ソウタロウは「なっ!?」と驚愕する。
「こ……これが噂に聞いた魔法少女かッ!!」
瞬時にソウタロウの真上へ高速移動し「フォールッ!!」とガツンと頭上を打つ!
「ぶフっ!」
打たれたソウタロウのカブトが平らにひしゃげる。
そのままズガアァァァァンッと凄まじい衝撃波を広げ、ソウタロウは深々と大きなクレーターを形成しながら埋められた!
真っ逆さまでガニ股の両足をピクピク痙攣させると、グッタリ。
ドン、とソウタロウは棺桶化。
「わ、わりぃ……怖くて変身しちまった!」
苦笑いして後頭部をかいた。
妖精王を解いて「ふう」と一息。
すると、なにか飛んできてドガガァァァンと遺跡を薙ぎ倒して破片が飛び土砂が巻き上げられる。
「今度はなんなんだッ?」
モワモワ煙幕が晴れると、なんとエレナが瓦礫の上でグッタリ。慌てて駆け寄って抱えて回復魔法をかけるが間に合わないようだ……。
腕の中でエレナは震えながら「ごめん……」と呟き、ドンと爆破して棺桶化。
「エレナ…………!」
ゆっくり棺桶を地面に寝かす。
撫でながら「頑張ったな」と労う。聞こえてるか分かんねーけど……。
「へっ! 今度はてめぇの番だなーァ!」
振り向きながら見上げると、遺跡の上でハンマーを立てて仁王立ちしているカレンがいた。不敵な笑みを浮かべている。
しかも二メートル強の筋肉質な大女に変貌しているではないか。
あちこち手傷を負っちゃいるが、平然としているので万全っぽいな。
ヒュウウウ、と風が吹いてお互いの髪の毛が揺れる。
妖精王になりゃ勝ち目あっけど……。けど!
「(人間として)勝負だッ!! カレンッ!」
「潔いのは嫌いじゃねーェ! まァ遠慮なくブッ潰すけどなーァ!」
煌びやかな太陽の剣を形成して身構えるオレに対し、カレンは目を細めていく。しかしカッと見開き獰猛な殺意を漲らせて、爆発的にエーテルを噴出した!!
大地を揺るがし、遺跡がグラグラ揺れて、崩れていく!
「ぎがあああああああああーァ!!!」
更に吠えてエーテルが怒涛と吹き荒れ続けている!
カレンの足元の遺跡が崩れると共に降下……、足が地面に触れた瞬間大地が爆発!!
瞬時に間合いを縮められ、眼前に巨躯のカレンが狂気孕む笑顔が! 同時に稲光迸るハンマーを振り下ろしてきた!!
スガアアアアアアアアン!!!
破片や飛沫を吹き飛ばしながら深く深く陥没していく大地!
周囲の遺跡がもろとも砕け散って、広範囲に岩盤が捲れ上がって衝撃波を周囲に吹き荒れさせた!!
しかし! オレは上空へ飛び上がっていて、屈んでいるカレンの背後を取った形だ!
「フォールッ!!」
「そんな軟弱なモン効かねーァ!!!」
振り向きざまに巨大なハンマーを回してきて、太陽の剣は粉々に砕かれた!
そのまま余波だけで吹っ飛ばされ、後方の崩れかけの遺跡の柱に身を打ち付けて「ぐあ!」と呻く。
ダメージを受ければ受けるほど強さを増していく『血脈の覚醒者』なので、今や手がつけられないほどカレンは強くなりすぎている。
しかも大きな体格とムキムキな筋肉に膨らんでいて、もはや屈強な大女だ。
「へ……やっべぇな!」
最初の頃のフクダリウスやマイシとの戦いを彷彿させる力の差だなぞ。
瞬時に間合いを縮めたカレンが旋風を引き連れながら「くたばれーァァァ!!」と、ハンマーを振り下ろしてきた!!
しかし本気のフクダリウスに勝った身として負けられない、と戦意をカッと漲らせた!
巨大なハンマーと太陽の剣が交差!!
ガッキィィィン!!
オレの踏ん張る足が大地を抉り、後方から飛沫を噴き上げた!
更に巨大化させた太陽の剣がしっかりと受け止めていた!!
カレンは「なに!?」と驚愕!
そのまま弧を描く軌跡でハンマーを弾く! 弾かれたカレンは受身を取って、二の足で踏ん張って地面を削るように後方へ滑っていく!
「デカくする事もできるのかーァ……」
「ああ、単純にデカくしたビッグ太陽の剣だぞ!」
そう、これは選定メンバーのリーグ戦でヤマミの『偶像化』とやり合えた形態。
より多くのエネルギーを練り込んで生成された巨大な剣。銀河の剣と比べればやや小さいが、巨大な敵と戦う為の秘密兵器だ。
「へ!」
カレンは戦意漲る不敵な笑みを見せ、ギザギザの歯が剥き出しに凶悪なツラだ!
「ブッ潰し甲斐あるなーァ!!」
「来いぞッ!!」
大地を爆発させて瞬足で襲いかかるカレンに対して、オレは気張った!
巨大なハンマーと太陽の剣が踊って踊りまくって幾重も軌跡を描いて幾度もなく激突を繰り返して、大地を震撼させ続けていった!
ドガッドガガッドガガッドガガッガッドガガン!!
カレンは無尽蔵の体力かと思うほどに我武者羅にハンマーを振り回し続けて暴れているのに対し、オレは徹底的に集中力を研ぎ澄まして、捌く捌く捌く捌く!!
いくら何度も太陽の剣が砕けようとも即座に生成して、執拗に粘り続ける!
「おおおおおおおッ!!」
「ぎがあああああッ!!」
互い譲らぬ激しき攻防で大地を大きく揺るがし続けていった!
ゴゴォーン! ズゴーン!! ズズズズズ……!!
「……カレンとマトモにやり合うヤツなんて初めてだぞ!! 一体何者だ!?」
「うっひゃ~! アイツすっげぇんだなー!」
同メンバーのオオガもチササも驚嘆している。
ダメージを受け続けてパワーアップし続けてきたカレンは筋肉質の大女に変貌してて、二〇万近くの威力値を誇る。普通ならマトモにやれば瞬殺されるのが多い。これまでそうだった。
だから勝つにはからめ手でやるしかないはずが…………。
オレは地を蹴ってカレンへ正眼に構えた剣を振るう!
「受けてみろ────ッ!! 流星進撃!! 四十連星──────ッ!!」
「どんと来やがれ────ァッ!!」
カレンは筋肉隆々の手足を広げて歯を食いしばって、真っ向から受けて立つ構えだ!
流星群のように鋭く突き刺さる剣閃の嵐がカレンの全身を幾度も穿つ!!
「ぐぎ、がああ、がああああああッッ!!!」
その激痛に見開くカレン! 血飛沫が舞う!
後方へずさるも耐え切り、逆にニッと笑ってきた!
「いってぇなーァ!! それこそ最高のプレゼントだーァ!!!」
更に莫大なエーテルを噴き出して天高くまで及ぶ!!
しかも体格は三メートル近くに、そして筋肉もはち切れんばかりに膨らむ!
威力値二〇万を越えるほどの天変地異級の大震撼が遺跡中に響き渡っていく!! さすがにオオガもチササも青ざめるほどだ!
「まだまだだッ!!! 最強のこの技を喰らえ────ッ!!」
「なっ!!?」
畳み掛けるように、渾身の力を込めて太陽の剣を振るう!!
その最強最速の白刃が、筋肉質の大女カレンの脇にめり込んでいく!
「サンライトォ────・スパァ────クッ!!」
爆裂されたカレンは血飛沫と衣服の破片を散らして上空へ吹っ飛ぶ!!
たまらず「ぎがはッ!!」と白目で見開いて吐血!! 血飛沫を散らしながら錐揉み回転で空中を高々と舞う!
あのフクダリウスの鋼鉄よりも硬い筋肉をも貫いた大技が炸裂だ!!
思わず「決まったぁぁぁあ!!」とオレは叫んだ!!
その血湧き肉躍る戦いに観戦席から歓声が大音響だァァァ!!
「「「ドワアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!」」」




