85話「地区予選 ~準決勝戦だぞ!③」
「ぬうううっ!! ワシのチササと交わったなァァァアッ!!!」
「ここは通さぬと言った!! ぬうおおおおッ!!」
「どけぇぇぇぇえええええ!!!!」
キレて怒鳴り散らすオオガを、フクダリウスが阻んで交戦!
交わったって? 男と交わっても仕方ねぇぞ…………。
なんで弟に過保護なんだろ??
「へっへ~! 次はあなたです~!!」
「臨むところだべ!」
気付いたらフリーになったモリッカとチササが交戦し始めている。
不意をつくように無数のナイフが飛んできて、太陽の槍を星光の剣に切り変えて全て弾ききっていく!
マフラーを靡かせながら、周囲のナイフはパラパラと落ちていく。
戦意漲る視線で気配がする方向へ睨み据える。ギン!
なんとジンイチが両手にナイフを扇のように並べ広げて、横走りしているぞ。
「キョキョキョ! 強者戦慄襲撃────ッ!!!」
四方八方へ何百本もナイフをシュババッと飛ばし、それぞれが弧を描きながらオレへと包囲するように弾幕で覆ってきたぞ!! 追尾弾か!
数百ものナイフが一斉に襲いかかってくるのを、星光の剣に加え、左手、両肘から光の刃を生やして螺旋状の剣閃を幾重に描きながらことごとく弾ききっていく!
「おおおおおッ!!」
全てのナイフを斬り散らし、威圧を乗せて吠えた!
ジンイチはビリビリと威圧に気圧されたのか「グッ!」と遺跡の影へ逃げ込む。
逃さんと、すぐさま追いかける。
クラスが暗殺者なのか、ジンイチはアクロバティックに狭い遺跡の隙間を飛び跳ねて逃げ切ろうとするが、オレは空中を含め縦横無尽にジグザグ飛び回れるので逃がしはしないぞ!!
「く!! 弱者ごときが、このソォロモォーン777柱の一角である俺様に追い付くとはッ!!」
「待てー!! 軟弱モノー!」
こちらの挑発にジンイチは癪に障ったのか、ザッと足を止めてきた。
遺跡に囲まれてて影に覆われた広間。
オレとジンイチの間に煙幕が通り過ぎる……。
「これで一対一だぞ!」
「……馬鹿が! 誘われたってのにも気付かねぇ弱者が! 仲間のいないキサマなど弱者弱者弱者弱者の極みよォォォォッ!!」
むしろキョキョキョと謎の大笑いをしてきたぞ……。強者のキョ?
巌穴チササはアクロバティックに槍をビュンビュン振り回して縦横無尽に駆け抜けながらモリッカと激戦。
「おめぇにも負けねーぞッ!!」
「へっへっへ! 更に白熱して楽しめそうですねー!」
「キツツキ破竹だぞーッ!!」
チササは超速の連続突きを見舞う。それをモリッカは身を翻しながらヒュンヒュン避けていく。
見極めたのかモリッカが白刃取りで槍の切っ先をガシッと捕まえ、逆にジャイアントスイングでビュンビュン振り回してから放り投げた。
投げられたチササは遺跡へ突っ込んでいってズズーンと崩していく。
「だだだだだだっ!!」
すかさずモリッカは両手を交互に突き出して連続気弾を連射。
「なんのー! サイクロン破竹だぁぁぁあ!!」
再起したチササは竜巻のように槍を振り回しての回転で、旋風が激しさを増して吹き荒れていく。
その旋風によって気弾はことごとく弾かれて周囲に爆発がばら撒かれた。
そのまま猛回転しながらモリッカへ突撃!!
「うっわ────!」
モリッカがかわすと、通り過ぎたチササの竜巻が遺跡を巻き込んで粉々に破壊しつくしていく。
まさに技名通り破竹の勢いだ。
小柄の癖して、なんて豪快だ。人の事言えないけどぞ。
エレナはハンマーを振り回すカレンとガンガンぶつかりあっている!
激突する度に大地を揺るがす!
パワー負けするエレナはアクロバティックに動き回りながら互角に立ち回っていく!
「ムカつくわね! 金属化がナニ! うろちょろしてんじゃねーァッ!」
「キバ女に言われたかないッ!!」
「このカレン様のハンマーァ喰らぇえッ!!」
自分よりも大きなハンマーを軽々と振り回して周囲の遺跡を破壊しつくしながら、エレナへと襲いかかる!
それは雷魔法をハンマーに付加して推進力を持たせているようだ。
「エレナちゃんヒールキック!!」
「ぶっとばしハンマーァッ!!」
エレナのカカト落としと、ハンマーが強烈激突!!
しかしパワーで勝る彼女は押し切ろうと「ぬがーっ!」と獰猛に吠えてハンマーを押していく。しかし一転してエレナは巴投げのようにグルンと相手と上下の位置を入れ替え、高く振り上げられた両膝を思いっきり振り下ろす!
「エレナちゃんハイアングルニーキックゥ!!」
大地を大きく窪ませるほどの威力を腹にまともに食らい、彼女は「がぎああ!!」と吐血!
しかし驚異的なタフネスで起き上がり、更に体格も筋肉も増強し、爆発的にパワーを増したエーテルを噴き上げてガムシャラにハンマーを振り回して暴れ始めた!
それは天災がごとく周囲の遺跡を木っ端微塵に吹き飛ばしていく!!
もう理性なんかない! ただただ暴虐に破壊し尽くすのみ!
「たたきつぶすハンマーァッ!!!」
しかしエレナも地を蹴って、ハンマーによる天災へ「エレナちゃん進撃ッ!! 七十連脚ッ!!」と飛び込み、火山噴火のような衝撃波が大規模に噴き上げられた。ドッ!!
おっそろしい対決だぞ……。
派手な戦いで隠れて(忘れて)いたが、コマエモンは西洋の鎧を纏うソードマスター山岡ソウタロウさんと地味に斬り合っていた。
絶対防御の鎧にコマエモンは電撃迸る抜刀術で対抗。
「フホホ! やりますねぇ! では本気を出そうじゃないか!」
ソウタロウは剣を鞘に収めると、周囲に全身鎧を召喚する。それをパーツごとに分解して空中操作。
手甲が、甲冑が、肩当てが、兜が、脛当てが、盾が飛び交ってコマエモンは「ぬっ!」と苦い顔をする。
金属パーツ操作は地味そうだが、小回りが利きそうで厄介だ。
コマエモンは抜刀し、シュババッと剣閃の嵐で襲い来るパーツを細切れに斬り刻む。
「……それは悪手よ」
なんと更に細かくなった破片が弾丸のように襲いかかってくる。
コマエモンは「なっ!」と汗をかき、全身から血飛沫を噴き上げた。ブシューッ!
ソウタロウは自分の周囲に細かい金属のパーツを渦巻かせて、したり顔だ。
「くっ! ならば!! 雷電流居合術、飛閃乱舞!!」
「あ、それやっちゃう?」
コマエモンは連続で電撃の剣閃を飛ばすが、金属の破片が軌道上を塞いで威力を殺していく。更に細かくなった破片がイナゴの群れのように覆い被さってくる
避けると、巻き込まれた遺跡はザザザザッと微細な破片によって粉々に削られていた。
地味だが恐るべき削減力だ。生身が喰らえばひとたまりもない。
「削るっての好きなんだよねぇ……。サクサクって振動しながら削っていくの」
「同感しかねるな……」
「残念だ。ではサクサク削って差し上げましょう」
グワッと金属の嵐が覆い被さってくる。一番ヤベーヤツぅ!
「キョキョキョキョーッ! 強者である俺様を相手に、よそ見とは随分余裕だな!? 弱者よ!」
ソォロモォーン777柱とか名乗る安堂ジンイチを前に、オレは星光の剣で構える。
「強者として弱者の見苦しい最期の言葉を聞いてやろう! お前は仲間を大事だと思うか?」
「ん? そうだけど?」
「それは何故だ?」
実際、四首領や大魔王はオレだけじゃ勝てんかったしな。
フクダリウス、マイシ、ジダ公、数々のライバルと戦い強くなれた。そして師匠やヤマミがオレを支えてくれたから何度でも立ち直れた。だから……!
「あいつらがいなけりゃ、オレはここまで強くなれなかったからな!」
星光の剣を突き出して、誇らしく言い放った。
「これだ。これ。そういう仲間の馴れ合いが大っ嫌いなんだよ……」
「じゃあ、なんでチームに入ってんだよ? 個人戦すりゃいいだろ」
「フッ! 仲間意識や友情や絆などと嘯く弱者を叩き潰せるのが理由だ。特にお前のような仲間に甘える弱者をな! キョキョーッ!」
「そっか……」
……ってかオオガから何も聞いてないのかな?
でも、あの様子じゃ聞いてても信じてなさそう。
「強者こそが全て! さぁ孤独に引きずり出された弱者よ! 非力さを思い知ってひれ伏せッ!!」
滲むような独善的思想と強さでもってヒャッハーと襲いかかった。
だがオレはマッハで通り過ぎながら強烈な一閃を見舞った。遅れて渦を巻く粉塵。ジンイチは宙を舞いながら白目ひん剥いて「グエー」と爆散して棺桶化。
「うんそうだね! 勝負は非情なものぞ!」ドン!
……コイツだけ弱かったな。人員不足なんだろうか?




