76話「メンバー選定⑨ ~ナッセ vs フクダリウス」
再びの因縁か! あのフクダリウスと対戦する事になった!!
ズシンズシン、地を揺らしながら巨躯が歩み寄ってくる五メートル強に及ぶ大柄筋肉質の大男。
メイプルリーフを模した赤い仮面。放射状に逆立つ黒髪。上半身裸で肩幅の広い筋肉質。そして腰にはシャツで縛ったであろう腰巻。筋肉で膨れた脚ではち切れんばかりのズボン。
右手には異常なまでに大きな斧。
────相変わらずでけぇ!!
武劉フクダリウス。
A級創作士。今期生では一番を誇る強靭な肉体を持ち、驚異的なSPを持つ非常に優秀な創作士。だが特記すべきはクラスが『狂戦士』でありながらも冷静な理性を共有できる特性を持つ。
全力で暴れ回るならば力尽きるまで二時間も要する。これに抗する創作士はほとんどいないとさえ言われている。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!
それを見て、オカマサは「ムリだ! ナッセでは勝てん!」と呟く。
彼もドラゴリラと共にフクダリウスと戦った事がある。歯が立たず敗れた。その後でナッセも戦ったが、後に手加減していたとフクダリウスは語っていた。
今回は手加減する気はなさそう。その空気が読み取れる。
「……単騎でフクダリウスに勝てる創作士はいない!」
「せやな!」
仮想世界はなんの因果か、初めて戦った時と似たような場所。
高架橋が横切る住宅地の道路。
「ぬおおおおおお────ッ!!!!」
フクダリウスは咆哮を上げ、隆々とした太い腕で大仰に戦斧を振り回す。その度に疾風が巻き起こる。
嵐のように振るわれた戦斧は荒々しい烈風を巻き起こし、破片が飛び交う。
「くっ!!」
破片混じりに吹き荒れる旋風。ビリビリ響く威圧に戦慄さえ感じさせる。
「……初めて戦った時は手加減してたんだな」
「ああ。どれだけ長く持つか根性比べしてたからな。しかし今回は本気でねじ伏せてやろうッ!」
大地を震わせるほどにフクダリウスの巨躯が更に膨れ、戦鬼のような凄まじい形相をオレに向けていた。ギッ!
当時は逃げ腰になっていた。
リョーコがかばって傷ついたからこそ戦意の火がついた。だが今回はオレ一人で戦う。
後ろに何もいない状態で戦わざるを得ない。覚悟は決めている。
そして妖精王に変身せず、ヒト同士として戦い、打ち勝つ。
オレの手の甲の刻印が青白く煌き、大きな『星』印とそれを囲む円に三つの小さな星。
覚悟を胸に秘め、ギンと鋭い視線を見せる。
「おおおおおッ!!!!」
裂帛の気合いを発っし、その足元から衝撃波が吹き荒れた。
そして太陽の剣を形成して、それをフクダリウスへ突きつける。
「だが! 今日こそお前を超えてやるッ!!」
「グフフッ! できるものならなッ!!」
なんと黒い影で覆われた巨人のような迫力が眼前に迫って来る! 振り下ろされる戦斧が真っ直ぐ地面に突き刺さる!
その衝撃で道路に亀裂が走り、木っ端微塵と破片が広々と四散していく!!
轟音を立てて地響きと烈風が遠くにまで広がっていく!
だが、オレは瞬時にフクダリウスの背後へ回り込んだぞ!
「サンライト・スパァークッ!!」
居合い斬りのような最強最速の白刃が煌くが、フクダリウスは俊敏に振り向いて戦斧の石突きで受け止めた! 間一髪防がれた!!
フクダリウスはすかさず横蹴りでオレを突き飛ばす。ドガッ!!
遠くまで吹っ飛ばされるが宙返りして地面に足をつけて、ズザザザッと滑りながら勢いを殺していく。
「グッ……! そうカンタンにいかねーか……。やっぱ強ぇーよ」
額から血が流れているのが分かる。痛ぇ!
「ぬおおおおおお!!!」
狂気を開放し、獰猛な暴れをオレ一人へぶちかまそうと襲い掛かってくる!!
正眼に太陽の剣を構え────────!!
「流星進撃────、十連星ッ!!!」
巨大な隆々とした肉体に無数の鋭い剣閃が突き刺さる!
しかしフクダリウスは「ぬおお!!」と歯を食いしばって耐える! しかし押し切ってやる!!
「二十連星ッ!!!」
更に苛烈な連撃を叩き込む!! 連撃音が鳴り響く!! しかしフクダリウスは「ぬ、ぐ、がが!!」と必死に耐える!!
「三十連星ッッ!!!」
昂ぶる戦意と共に繰り出す流星の弾幕がフクダリウスの巨躯を打ちのめす!!!
踏ん張る足もズザザザと後ろへ滑り、引きずるような痕が道路に引かれる!
それでもオレは止まらねーぞッ!!!
「四十連星ッッ!!!」
渾身の一撃必殺の一太刀を何十も流星のようにフクダリウスを完膚なきまで打ちのめし、高架橋の巨大な柱へ吹き飛ばし、ズガンと破砕の衝撃波を噴き上げる!!
あの頑強な高架橋がガラガラと瓦解していく様に、モニターを見ていたクラスメイトは見開いていく!
ヤマミも驚きに見開いていた。
あの当時も居合わせていて、成り行きを見守っていた。
あの小さな少年が気張って巨人に立ち向かう闘いに、心を打たれるものがあった。だから『洞窟』の探検に誘ったのだ。
初心を思い返すものがある。あの頃のドキドキを思い出させる。
「ナッセ頑張って!」
はぁはぁ……、汗を垂らして油断なく剣を構える。
もわもわ立ち込める煙幕から、フクダリウスが悠然と抜け出てきた。無傷とは言えず、あちこちで傷んで血が滲んでいる。
「技がなかった頃より随分成長したな……! 堪えたわい!」
「今のは準備運動ってトコかな。まだまだこれからだッ」
「フフッ! それは頼もしい限りだ……!」
お互い気合漲り修羅となって、食い破らんと剣と斧を荒々しく振るって幾重にも交錯を繰り返し続ける!!
ギキィン、キンキン、キィン、キキン、ガキィン、キキィン!!
剛力振るうフクダリウスの猛攻を、柔軟に捌ききっていく!
念力、剣技、根性、ありとあらゆる力を総動員して、力強く粘って互角に持ち込む!
「ぬがあああ!! フクダリウスハリケーンッ!!」
「流星進撃!!! 五十連星────ッ!!!!」
出し惜しみなく最強の技を繰り出し、天変地異が如くの震撼!! 一気に周囲の道路や建造物が粉々に吹き飛ぶ!!!
しかし押し負けたオレは竜巻に呑まれて振り回された挙句、吹っ飛んでビルをガンガンブチ破って「ぐうう……ッ」と転がっていった!
パワーは断然、あっちの方が圧倒的! 結果は分かってた!!
それでもなお、血塗れながらオレは全力疾走して、最強の技を抜き放つ!
「サンライト・スパァークッ!!」
神速に達した白刃一閃が、フクダリウスのオーラ纏う戦斧と交差!!
ギィン!! 激しい衝突音を響かせ、剣閃の軌跡がX字に煌く!! しかし破片を散らして砕けたのは太陽の剣!!
「ぐうッ!」
「ぬぅおおおッ!!!」
フクダリウスはオーラ篭る戦斧を振り下ろす!! 負けじと再びの太陽の剣を振り上げて「ライズー!!」と激突!! 再び粉々に砕かれる!!
それでも不屈と、飛び上がっているオレは三度────太陽の剣を振り下ろす!!
「フォ────ルッ!!」
フクダリウスも「ぬがあああ!!!」と戦斧を振り上げた!!
またもや三度砕け散る!! 粉々と破片が飛び散る最中、すかさず四度目の太陽の剣が突き抜けてフクダリウスの腹に突き刺すが、筋肉までは貫けない!!
だが!! オレは諦めねぇぞ────ッ!!!
「サンライトォ──・ス──パ──ノヴァ────ッッ!!」
何度でも立ち向かってやるという執念で繰り出した渾身の刀剣波が、太陽が如く眩い光球に膨らみ、ゼロ距離で甚大な大爆発を巻き起こす!!
ドゴガアアアァァァァアンッ!!
眩い爆発の余韻に呑まれ、さすがのフクダリウスも血眼で「がはっ!!」と大量に吐血し、グラリと巨躯が大きく傾き、重々しく仰向けに倒れた! ズズン!
ついにナッセがあのフクダリウスからダウンを奪ったのだと、誰もが驚愕する!
「フッ! 本当に……、強くなったな!」
立ち上がるフクダリウスは血を垂らしながら笑い、痛むみぞおちを腕で覆う。
オレも満身創痍でハァハァ荒い息が絶えない……。
だが眼光はより鋭くなっているぞ! カッ!
「ああ! これからも強くなる!! 異世界へ旅立って広い世界を見ていく為にッ!!」
真っ直ぐに目指す夢!
限りない可能性へ向かう為に、この世界を飛び立って異世界へと羽ばたく!
────そしてドキドキワクワクしていきたい!!
「ならば、その前にワシ如きを乗り越えて見せよッ!!」カッ!
「ああ!! 超えてみせるッ!!!」カッ!
修羅の形相で、超高速で振り下ろされてくる巨大な戦斧に、オレは熱血に滾り真っ向から駆け出す!!
「フォールッ!!」
渾身のひと振りで戦斧を地面に打ち払う!! ズン、重々しく振動が響き渡る!
そのまま「ライズゥーッ!!」と懐に飛び込んで、渾身の剣閃をみぞおちに突き刺す!! フクダリウスはたまらず「ぐわッ!!」と吐血!!
「かかったなッ!! 小柄な身で虎の穴へ飛び込もうとはッ!!」
大地を割る勢いで膝蹴りを放ってきて、みぞおちに重いのをもらう! 腹ん中吐き出す勢いで吐血! 意識が途絶えそうになる激痛!!
続けてフクダリウスが重い戦斧の石突きで顔を殴ってきて、視界が揺れる!
朦朧とする意識の最中、ヤマミが脳裏に映る! 共に異世界へ歩もうと誓った愛しい人!!
ありとあらゆる苦難を共にした記憶が走馬灯のように脳裏を駆け抜ける!!
そして運命の鍵!! ヒカリ!!
「負けるかあああぁぁぁぁあッ!!!」カッ!
弾けるような激情でフクダリウスへ太陽の剣を振るい、全身全霊の神速の一閃を見舞う!!
対するフクダリウスも戦斧で粉砕せんと剛力で振るう!!
全てを震撼させるほどの激突!! ドッッ!!!
「届けぇぇぇッ!!! サンライトォォ・スパァ────クッッ!!」
威力、想い、信念、束ねた力を一撃に込め、一念岩をも通す勢いで頑強な戦斧を木っ端微塵に砕き、ついにフクダリウスのぶ厚い胸を深々と穿つ!! 噴き上がられる血飛沫!!
驚愕に満ちていくフクダリウスは「がはああッ!」と盛大に吐血!
ついに鋼鉄よりも硬い肉体が貫かれた!!
そして血飛沫と破片を散らしながら巨人は高々と宙へ舞った!!!
その衝撃的結果に、誰もが驚いた!!! 驚くしかない!!!
ズズゥ……ンッ!
「……ついに超えたな! ワシの完敗だ!」
仰向けで倒れたままフクダリウスは優しく微笑み、爆散して棺桶化。
その最期を見届け、ハァハァ荒い息をしながら感無量と勝利の歓喜に打ち震えていく。そしてガッツポーズと血塗れの拳を高々と突き上げた。
「オレはやったぞ──────────────ッ!!!」
ヤマミはパッと明るい笑顔を見せた。感激して目が潤んでくる。
リョーコもエレナも涙目で大歓喜。
────────対フクダリウス戦! ナッセの勝利!!




