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49話「ナッセの悪役令嬢TS転生編②」

 朝起きたら、なんか立派な屋敷の中にいてスゲー豪勢なベッドにいたぞ。

 そんでもってメイドが数人いてオドオドしているようだったぞ。更に朝一番に顔を洗ったら、鏡に金髪美少女が映っていて驚いてしまったぞ────っ!!


「何事でございますか??」

「エリゼ様! 何が起きたのですか?」


 わらわらとメイドが入り込んできた。


「お……オレ……女になっちまったぞ…………?」


 自分を指差して戸惑う。

 メイドは首を傾げて怪訝に眉を潜めてくる。


「……なんか聞いていいか?」

「はい? なんでございましょう?」


「さっきからオレの事、エリゼってたんだよな?」


 メイド達は怪訝な顔をしたが、揃って丁寧に頭を下げて「ゴーマンキチ家の第一長女エリゼ様、他にありません」と答えてくれた。

 まさかとは思ったが、エリゼって悪役令嬢のキャラじゃねぇか!

 ヤマミのやってた乙女ゲームの世界に入り込むなんて思ってもみなかったぞ。せめて男ならイケメンの誰かだろ? なんで女の、それも悪役令嬢に!?


 脳裏に浮かぶはバッサリ斬首される赤い背景黒いシルエットのシーン。


「オレ……、ロシュア王子ってヤツに捕まって斬首されるんだよな?」

「婚約者様が?? そのような事は!」

「その口答えはいけませぬ! いかに傲慢(ごうまん)であれ丁重な礼儀は欠かさずにあるべきでございます!」


 あー、こいつら知らねーんだ……。オレがどうなるかなんて。

 ってかゲームの世界なんだよな?


「おほほほ。悪かったございますわ。変な夢を見ちまって取り乱したわ」


 とってつけてみたが、メイドは怪訝(けげん)なままだ。

 つか乙女ゲームも知らんし、貴族の礼儀とか知らねーし!



「お姉さま!! はしたないですの!」


 なんと可愛らしいロリっ子が現れてきたぞ。オレと似た感じでロールを巻いている。お高く止まってて胸を張っている。

 年としては小学生五年生ぐらいか?

 ……ってか妹いたんだな。


「おめぇ誰だ?」

「はぁ?? お姉さま、頭打って本当におかしくなったんですの?」

「……かもしれねぇ。教えてくれ」


 やはりロリも怪訝な顔をしてくる。


「ゴーマンキチ家次女リフィア様ですの!」

「うん。リフィアさんよろしくな」


 頭をポンポンする。なんかムキーと怒ってきてオレの手にガブリ!


「ギエ────ッ!!」




 煌びやかなシャンデリアがいくつかぶら下げられている立派な居間。

 貴族様の父と母が深刻そうな顔でオレを見てくる。妹のリフィアは涙目でほおを膨らましている。メイドたちも怪訝そうな目でなんか痛いぞ。


「確かに昨日、頭を打ったと言ってたから早めに寝たらしいが……」

「そんな! 信じられない!! まさか人格が変わるなんて!!」


 おろおろしていく母が泣きそうな顔で父の胸に抱きついていく。


 とは言え、彼らが言っているように人格が変わってる風で記憶は失われていない。

 正確には後から蘇ったらしいが、なんか酷い事して楽しんでいた記憶で自分でも正直吐き気がする。小動物をいたぶったり、仲間の女友達で弱い平民を虐げたり、メイドに怒鳴って命令したり当たり散らしたりしていた。

 しかも自分でやったみたいな感覚で胸糞だぞ。


「みんな済まねぇ!! さんざん酷い事しちまった! 許してくれとは言わないが、二度とイジメなんてやらねぇ!!」


 合掌して頭を下げる。


「いやいやいやいや!!! 待て待て待て!」


 先に父が手をパタパタ振って「そんな男みたいな人格改変など無い無い無い!!!」と首を横に振ってくる。

 数時間くらい色々説教食らったが、正直オレには馬の耳に念仏だぞ。

 夜になって、薄暗い自分の部屋でオレは立派なベッドで大の字になっている。


 どうやったら元に戻れんだ? 分からねぇ!


 右手を挙げて、手の甲を見る。なんと『刻印(エンチャント)』が青白く浮かんできた。

 思うままに発動すると星光の剣(スターライトセイバー)が生成されて、それを握った。今度は太陽の剣(サンライトセイバー)に切り替える。


 これこそがオレの能力……。

 あらかじめプログラムを組み込んだ魔法陣を、自分の体に付加させる『刻印(エンチャント)』だ。

 実際はプログラムさえ理解していれば誰でもできるが、オレに組み込んだヤツは他の人が使えば長く持たない。普通に戦っているとすぐ力尽きてしまう。

 オレのように膨大なMP(マジックプール)があるからこその芸当だぞ。


 ……っと説明はさておき、能力そのままでこっちに来たらしいな。

 オレは上半身を起こす。


「よっし! イケる!! ここに来ても、そのまま普通に戦えるぞ!!」


 上機嫌でバッタリベッドへ倒れて眠りこけていく。 




 翌朝、なんか貴族の交流会という事で妹のリフィアと一緒に馬車に揺られてゴトンガタン。

 妹は変わってしまったオレを軽蔑した感じで、顔を背けて景色を眺めている。


「なぁ、機嫌直せよ。悪かったって」

「姉さまなんかじゃないですの! 口をきかないですの!」


 なんかモヤモヤするなぁ……。

 まぁ、突然姉さまが男みたいに変わったら他人にしか見えないよな。

 すると馬車が急に止まって惰性の振動で「うわぁあ!」と声を漏らす。そして事情を察した。


「止まれ!! その女と金を置いてもらおうか!」

「ふざけるなッ……!!」


 外を見ると、わらわらと盗賊が群がっていた。

 いやらしい笑みで「へっへっへ!」と下卑た顔をしている。執事は汗を流しながらレイピアで構える。

 妹は「あ、あわわ……」と震えて青ざめている。


 ドシュッ!


 なんと執事が斬られ、血飛沫を吹き上げながら地面に伏せていく。ドサッ!

 これシナリオにあったっけか? バトルのないゲームなのに?


「おお! これは上玉だぜー!」

「慰めにしてエッチ奴隷にしようぜ!! ひぇっへっへっへ!」


 こちらのカーテンを開けて、下卑た顔を覗かせてきた。妹は「ヒイッ」と怯える。

 オレは「待ってくれ!!」と手を差し出すが、盗賊の手が手首を掴んでくる。思わず逆の手でバキッと殴り飛ばしてしまう。

 ブオ────────ンと盗賊は顔が歪むくらい音速で吹っ飛んでいって、空の彼方へキラーン!


 つい本気で殴っちまった。


 ……どうやらゲーム世界だと思ったらいけないみてーだなぞ。

 しかし盗賊か。おあつらえ向きに腕試しの機会来てくれたぜ!


「て、てめぇ……!! 痛い目みたいようだな!!」

「おい! 殴られたヤツ、とんでもなく飛んでなかった?」

「な────に! マグレさ! マグレ!」「そ……そうか?」

「でもよぅ、アレをマグレって言うのか?」


 オレはトン、と軽く馬車から飛び降りる。


「いつでもいいぞ? かかってこい!」


「くっ! 女のクセにっ!!」

「その場でマワしてやる!!」

「後悔しやがれ──っ!!」


 手前の数人の男が掴みかかろうとするのを、オレはキッと見据える。

 懐から杖を取り出し、流れるように光の剣を生成して横薙ぎ一閃。数人の男が後方へ弾かれていく。


「なっ!? ひ、光の剣を!?」

「出してきやがった!?」


 よし! 加減は10000分の1(そんな気分)でこれくれぇか!

 本気だしゃ素振りの衝撃波だけで薙ぎ倒せっけど、敢えて剣を使いたいからな。



「……退け! さもなくば痛い目見んのはそっちだぞ!」


 体は悪役令嬢のままだが、いつもののようにキッと鋭い眼光を煌めかす。


「ほざけっ!!」

「こちとら大勢だ! たかが女一人、ひねり潰してくれるわっ!」

「うおおおおおおおおおおおおおっ!!!」


 ようやく周囲の盗賊が殺気立って曲刀を手に襲いかかってくる。

 それに対し、踊るように光の剣を幾重に振るい、弧を描く無数の軌跡が煌びやかに交錯していく。

 竜巻に巻き込んだがごとく数十人のガタい男が一斉にグルグル回りながら四方八方と飛んでいく。

 ボスらしき男は「うああ……っ!」と戦慄する。妹は呆気に取られる。


「怯むな! たった一人だぞっ!」

「包囲して潰せ!」

「うりゃあああああ!!」


 焦りを滲ませた盗賊が飛びかかってくるが、オレは冷静に構える。


「いつの世も悪党の所作は変わらんねぇな……。さて終わらせっぞ」


 たった一人のか弱い令嬢が、軽やかに舞って剣を振るい、煌びやかな星屑を散らしていく。

 それだけで数十人の男が手玉に取られて、木の葉のように宙を舞っていく様は、妹にとっては衝撃的な光景だった。


「す……すごいですの……!」


 煙幕が流れ、一瞬にして数十人の男は横たわっていた。


「て、てめぇっ……! さては影武者か!! 本物のエリゼはどこだっ!?」

「……一応、オレがそのエリゼなんだけどな」

「ふざけるなよ!! こうなったら!!」


 なんか劇薬を飲んで、メリメリ巨人のように筋肉を膨らましていく。またここでも劇薬とか、なにかと縁があるな。喜べぇねけど……。

 だって劇薬に頼ってイキってたヤツ、どいつもこいつもロクでもねぇの多いもん。


「うがああああああああ!!!!」


 超高速で襲いかかってくる血眼の大男をキッと睨み据え!


「スターライトォー・スパァークッ!!」


 渾身の力(?)で振るった光の軌跡が轟音と共に巨躯の男の脇に強打。その瞬間、爆裂を込める。大男は「ぐがあああ!!」と、引き裂かれた衣服の破片が四方に散らばりながら高々と宙を舞って、そのまま空の彼方(かなた)へキラーン2号!

 妹はそんな姉の様子に口を開けてポカ────────ン! アゴが外れそう!


「ふうっ!」


 よし! うっかり殺さないように倒せたぞ! たぶん!

彼方(かなた)へ逝ったから生死確認できねーからセーフ的な)


 しかし、やっぱ今まで通りだな。女性になってもさほど変わらねぇ……。

 自身のレベル、ステータス、武器の精度、技のキレ。いつもの通りだ。

 違うのは女であり、背が高い事くらいか。

 それに、今のままでも妖精王にも変身できる感覚はある。


 執事はギリ生きていたようで回復魔法(ナース系)をかけた。



「ま、まさか……強い上に、見た事のない回復魔法を……! さすがですな!」


 ようやく回復した執事はペコペコと頭を下げる。

 しばらく時間をかけて王国の騎士たちが騎馬でやってきて盗賊たちを引っ捕えていく。


 この件で貴族交流会へ行けなくなったがスッキリしたぞ。

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