45話「劇場版インドラの野望②」
劇場版ナッセの奇想天外な大冒険!
『インドラの野望 ~選ばれし四人の勇者~』
神秘と文化とカレーの聖地インドで繰り広げられる限界突破の究極バトル!
全ての謎を、真実を、生き様を……その目に焼き付けろッ!!
燦然と輝く明日をその手で掴み取るために四人の勇者たちは立ち向かう!!!
猛獣の勇者・鬼狼クロウ!
稲妻の勇者・神雷ゴロゴ!
後光の勇者・城路クニロー!
彼らの活躍を刮目せよッ! ドン!
高低差激しく森林生い茂る。ここは山奥────。
デコボコで荒れた獣道をドスドス歩く男がいた。やや薄紫の肌で、象の大きな耳を生やす優しく微笑んだ顔をした半裸の男。両手は仏様のように印を組んだままだ。
一見、にこやかで穏やかな雰囲気ではあるが、実は……!
「ほっほっほ! 私はインドラ狂信派の幹部クラスである四神の内一人『エレーシャ』という者です!」
なーんかインドで人知れずの場所に建っているテロ組織総本部で、教祖様が威張りながら無茶な欲求をしてきたのだ。
それはもちろん同じ四神であるハヌマーン、クリシュナ、シヴァにも下された。
「なんか生け贄要員をさらってこい! インドラ様を生け贄召喚するのだ!」
とかで、シヴァとハヌマーンはさっさと行ってしまった。
クリシュナはなんかした後、自分の部屋へ引きこもってしまった。
「全く教祖様は人使いが荒いですねぇ……。まぁインドラ様を召喚した後は用済みですが……」
ムカつく上司こと教祖様よりも、まずは因縁の相手であるオカマサとドラゴリラに借りを返さないとなっ!!
エレーシャは私怨に満ちた怒りの眼差しをギラッと見せた。
とある野生児っぽい少年が森林へ飛びかかる。
少年は握った拳のでっぱりの拳頭から四本の鋭く尖った爪が生えた。
「ガルオオオオ!! ビーストクローッ!!」
ズババババッと振り回すと、杉の木が次々と薙ぎ倒されていった。ズズーン!
「さすがやなぁ! 鬼狼クロウはん!」
「人造人間の失敗作で捨て置いたが、ここに来て役に立ったようだね」
なんと半裸のドラゴリラとオカマサがいた。
後ろにはトラックが停まっており丸太を乗せていた。どうやら伐採して材木を売るという生計を立てていたようだ。
「ウガウガガー! マスター! マスター!」
クロウは褒められた事が嬉しくてドラゴリラとオカマサの周りをはしゃぎながら回っていた。
気分を良くしたドラゴリラは「ほれ犬のチュールや」と放り投げて、それをクロウは空中でキャッチ。クロウは嬉しそうにチュールを頬張っている。
「今や人造人間はナッセどもに滅ぼされたが、この一匹だけ残っていて良かったよ。これで伐採作業員としてダダで働かせば俺たちは楽ができる。そして浮いた時間で努力してプロの漫画家になってやるぜっ!!」
「せやな! この犬はバカだしこき使われたって分からへんもんなぁ」
ヒャハハハハ、とゲスい事を言いながら笑う二人であった。
「……久しぶりだね。マスター」
ギクッとオカマサとドラゴリラは振り向くと、とある人物を思い出して冷や汗をかく。
そう、まだあったのだ! 人造人間が!
「あ、兄貴やねんっ!?」
「……元ね」
というかドラゴリラの兄貴だった……。
かつては真面目な好青年だった。
《そういう非人道的な実験はいけません! 今からでも自首しましょう!》
ドラゴリラがオカマサと共謀して人造人間の製造に着手しているのを、兄貴は見過ごせず止めようとした。
しかしその頃の二人は極悪人だったので、正義感あふれる兄貴が煩わしいと思ったのだろう。
《情熱的な努力を邪魔するのかい? そうはさせないさ》
オカマサは親友の兄貴の首を躊躇いもなく斬り落とした。
しかもドラゴリラはそれに葛藤する事なく、むしろ喜々と悪ふざけで象の頭をくっつけて新しく人造人間に変えてしまったのだ。もちろん象の頭に兄貴の脳みそを入れて……。
最後の仕上げとして記憶を改変する前に、目を覚ました兄貴は自分の身に起きた惨状に慟哭して脱走した。あれ以来音沙汰なしだった。
「あの時は悪かった。悪気はなかったんだよ。俺もストイックに努力するあまり周りが見えてなかったよ。すまない」
「生き返ったからええやん」(鼻クソほじりながら)
エレーシャはにこやかに笑う。にこっ!
「もういいですよ。過ぎた事ですから……」
そんな優しい兄貴にドラゴリラは「相変わらず愚……優しいやな~!」と嬉しそうに笑う。
オカマサは「やったなっ! また奴れ……仕事仲間が増えたぜっ!!」とドラゴリラの肩に腕を回す。
するとエレーシャは背後に超高速で移動して、オカマサとドラゴリラの背中に肘打ちを喰らわした。
驚きつつも身軽にクルクル身を翻して身構えるオカマサとドラゴリラ。
「ど、どうしたんだい??」
「せや!?」
ズン、とエレーシャは殺気立って怒りの形相を見せていた。血眼でギリギリ歯軋りだ。握った拳を眼前に振り上げる。
「絶対に許さんぞ虫ケラども!! じわじわとなぶり殺しにしてくれる!!」
凄まじいオーラを噴き上げて大地を揺るがしていく。ゴゴゴゴ!
「ひ、ひぃ……!」
「ビビるな!! 一緒に燃えようぜっ!! 正義の殺人連撃ッ!!!」
「せや! オカマサとなら勝てるんや!! 殺人連撃ッ!!」
オカマサとドラゴリラは手を合わせて『連動』して、即座に高速連撃を繰り出した。
目にも留まらぬそれはエレーシャへ連打、連打、連打、連打打打打ッ!
しかし平然と仁王立ちするエレーシャ。
焦りながらもオカマサとドラゴリラは「逆境に強いのが俺らの強みぃぃぃぃい!!」と熱く吠えながら飛びかかる。
オカマサはおもむろにズボンを下ろし(自主規制)から水圧のレーザーを噴出させ、そしてゴリラ化したドラゴリラが龍を具現化させた造形付加の「ドラゴンクランプル」で股間を狙う。
しかしエレーシャは張り手による風圧でオカマサの攻撃を顔面に跳ね返す。そして太い足でドラゴリラの龍を纏う手を踏み潰す。
「ぐあああああ~~~~!!」
のたうち回る二人に、エレーシャは威圧感たっぷりに見下ろす。ズン!
「そろそろ地獄へ誘ってあげましょうかね……」
「ま、待ってくれ……」「ひぃい……」
エレーシャは気が狂ったようにオカマサとドラゴリラを何十分もかけてボコボコに打ちのめしていく。血塗れになったまま二人は「ごめんなさいごめんなさ~い許して許してぇ~!」と何度も涙目で命乞いをし続けていた。
果てに痛々しく血塗れで横たわる二人に、エレーシャはツバをペッと吐いた。
「本来ならブチ殺したい所ですが、命乞いは聞き届けてあげましょう。それに懲りたら二度としない事ですね」
キョトンとしていたクロウは首を傾げる。
エレーシャは哀れんだ目で見やる。彼もオカマサとドラゴリラに騙されて奴隷にされていたのだろう。
「おにーさん??」
「……ああ。お兄さんだよ」
優しい笑顔のエレーシャはクロウの頭を撫でる。なでなで。
それが気持ち良いのかクロウは嬉しそうに「くぅ~ん」と鳴いてくる。見た目は人間の少年なのに、自分は犬だと思い込んでる感じだった。
思わずエレーシャはガシッとクロウを抱擁した。
「お、いにさん……??」
なんだか初めてなような気がして涙腺が緩んでクロウは嗚咽していく。
幼すぎて記憶もおぼろげな内に誘拐されて、そのまま人身売買でオカマサたちに売られた。これまでずっと人らしい扱いを受けなかった。誰かと抱き合う事もなかった。
嫌悪され、実験台の失敗として捨てられたり、奴隷として何も分からず働かされたりして、愛情というものを知らされなかった。
「これから私が家族ですよ……。一緒に暮らしましょう」
初めての温もりに、クロウは泣きながら抱きついた。
インドのとあるインドラ狂信派総本部にて、教祖はブチブチ怒りを滲ませる。
握り締めたエレーシャの辞表を床に叩きつけた。バン!
「なーにが養子をとって日本で平和に暮らしますだとぉー!?」
猛獣の勇者・鬼狼クロウ、インドラ狂信派を辞退した四神エレーシャと一緒に日本で暮らす事になったので再起不能!!
勇者と四神の紹介!
『鬼狼クロウ』(蛮族)
猛獣の勇者と呼ばれるはずの男。褐色肌でボサボサ黒髪。拳から爪を生やして戦える。
誘拐されて人身売買でオカマサとドラゴリラに買われて人造人間の実験台にされたが失敗作として森に捨てられた。しかしオカマサとドラゴリラが再び探し当ててダダで労働を強いていた。
エレーシャに家族愛を与えられ、日本で幸せに暮らす事になる。
ビーストクロー!!(両手の拳から爪を生やして引っかき攻撃)
サンダークロー!!(体内の電撃を発して爪で引っかき攻撃)
ドラゴンクロー!!(両手を組んで爪を生やすと龍が具現化されて、それで突進する奥義)
威力値:43700
『エレーシャ』(格闘僧)
元はドラゴリラの兄貴で真人間だった。
残虐なオカマサに首を斬り落とされ、無情なドラゴリラの非人道的な改造により人造人間となった。洗脳される前に気づいて逃亡。
象の頭だが脳みそは移植されているので人間だった頃の記憶や性格がそのまま。
人間だった頃はあまり怒らず優しくて正義感があったらしいが、改造後はキレると恐ろしい形相で相手を徹底的に打ちのめす。
元凶となる二人を恨んではいるがボコボコにするだけで許した。優しい。
願いを叶えましょう(叶えてくれるが、それは叶えた者に災いをもたらす)
慈悲を与えましょう(相手に逃亡か降伏をすすめる)
地獄へ誘いましょう(完膚なきまで相手をボコボコにする)
絶対に許さんぞ!!(キレる事で数倍ものオーラを噴き上げる)
威力値:123000




