410話「謎の『運命導師』現る!? 大奇跡の発現!?」
オレたちが三大奥義を三つ同時に繰り出した途端、全てが停止してしまい戸惑うしかなかった。
てっきりバグったかと焦ちまったぞ。
妖精王であるオレとヤマミはテレパシーで疎通できていたが、第三者の声が聞こえてきたようだ。
《……良かったナ! 何万年も飛んでたからナ》
オレとヤマミは頭に響く声に戸惑うも、敵意も悪意もない。
どこか安堵したような声にも聞こえる。
《一体どういう事だぞ!? これから火星とドンパチやってんだから、邪魔しないでくれ!》
《そうよ! いつか火闘神マルス勢力を倒さないと!》
《……残念ながら、このまま戦っても勝ち目は絶対にないですナ》
《いやいや、今から撤退してるトコだぞ!?》
《万が一成功したとしても、現状では火闘神マルス勢力は完璧すぎて攻略不可能なんだナ……》
《えっ……マジかぞ……!?》
その声に絶句させられる最中、ボワッと光が現れるなり人型を象っていく。
そして、その手に古風な円盤……方位磁針が握られていた。磁針がグルグル回転してるぞ。
《《それは……ッ!?》》
間違いなくオレとヤミザキの持つ『運命の鍵』と似ている気配がする!
《これは『希望の羅針盤』ですナ……。そう、ワタクシは『運命導師』だナ。我らが束ねた願いにより時空の世界へ飛び、未来から希望の勇者を手繰り寄せていたのですナ》
まさかのスペリオルクラス!? 『鍵祈手』みてぇなのがいるんか!?
《いいから説明してくれる?》
《ああ、済みませんナ……。感激してましたのでス……》
《ってか、おめぇ一体何者なんだ??》
光に包まれている人型から形状が浮かび上がってくる。シュウウ……!
赤と黄色入り混じれのロングヘアー。赤と黄のオッドアイ。褐色肌。額にナ〇ック星人のような二つの触覚。可愛らしいネコ口。サイズ違いのダブダブなロングコート。
見た目こそ小柄な美少女といった感じだぞ。
《初めましてナ! 火星の人……カナ? ワタクシは火星人で『運命導師』のショトケイキですナ》
明るく元気良い仕草で片目ウィンク。ぱっちり。
《思ったより明るい人だなぞ……》
《そうね》
《ああ、そうでしたナ。希望の勇者が見つかったんで、元の世界へ戻りますナ》
《え?》
動き出したが、巻き戻しされるように光線が縮んでいって砲口へ引っ込んでいく。
そしてオレとヤミザキとダウートが三大奥義を繰り出す瞬間まで巻戻りが止まり、今度は周囲の風景に変化が起きていく。
浮遊艦を含むオレたちだけが止まったまま、巻き戻しが始まったようだ。
《時間が??》
《……戻っていく??》
《火闘神マルス勢力を打倒し得る条件を満たした希望の勇者さまを未来まで検索していたからナ》
《過去の人間……!? つーかどれくらい前の!?》
《四万年前……のようですナ》
《そっ、そんな大昔からっ!!?》
《それほどの未来じゃないと、条件を満たした希望の勇者さまは見つかりませんでしたナ》
爆発が逆送りで戻った光弾がアーティファクト主砲へ吸い込まれていって、地表へ沈んでいく。
そしてオレたちが迎撃してきたタコ戦闘機が次々復活して、後ろ向きのまま遠くへ離れていって、地表に落ちていたイナゴみたいなナノマギアが急上昇して同じくして遠くへ離れていった。
《なっ……!? こ、これは……ッ?? 待ッ》
火闘神マルスの影の両目が驚愕に見開いた気がしたが、逆戻りで消えていく。
なんかアイツもこの現象に驚いてた??
《マイシ聞こえる……??》
《ちっ! 動けねぇから様子みてたし……! 一体どうなるんだし!?》
あ、やっぱマイシの意識はあったのね。たぶんみんなも??
ただ動けねぇだけで……。
するとショトケイキは首を傾げてニッコリ微笑む。
《では、これからワタクシがいる約四万年前の時代に戻りますナ》
《《《えええッッ!!?》》》
ダウートが時を加速させていたのと似た現象で、火星の太陽が尾を引くほどに空を駆けていた。
火星なので青い夕日になり地平線に沈むと真っ暗な夜に染まる。
反対方向から青く朝日が昇り、長い尾を引きながら空を走っていく。
……いや、この場合朝日と夕日は逆なんだっけ?
とにかく左右の地平線を起点にビュンビュン弧を描きながら太陽は徐々に速くなっていった。
《見て!》
《ああっ!! 爆発が!?》
なんと火星で爆発が繰り返されて、いや破壊されていた火星の国とかが戻っていくんだ。
もう用済みと火闘神マルスが破壊しつくした出来事が巻き戻されている。
徐々に巻き戻る速さが増していき、尾を引いていた太陽がジョジョに輝く線に変わっていく。
《なんか、徐々に緑が復活していく!?》
《海まで!?》
数百年も巻き戻っているらしく、超高速で火星の地表に薄らと緑が戻ってきてはブレるように生い茂っているぞ。
そしてなくなってたはずの青い水がブワーッて広がっていったぞ。
次第に生気を帯びるように地球と変わらない地表に……。
《火闘神マルスのナノマギア・アブゾリュートが星のエネルギーを吸ってたんだっけか?》
《それが戻っているって事ね……》
《フン》
巻き戻り続けて千年前、五千年前、一万年前ととほうもない過去へ…………。
実は火星も地球とほぼ変わらない環境だったという事を目の辺りにしたのは、これが初めてだったぞ。
ドォ──────ンッ!!!!!
四万年ほどの時の巻き戻しが収まり、浮遊艦は青い空で浮いている。
そしてオレたちは通常通りに動けるようになったぞ。ザワザワ戸惑いがみんなに走ってる。
まるで地球へ戻ったのかと錯覚したぞ。
「あ、いけないですナ!! 早く隠してナー!!」
「あっ!!」
いきなりでっかい不審物が浮いてたら怪しまれちまう!
オレは操縦して、近くの山脈へ浮遊艦を下ろしていく。平らな所があったのでズズンと煙幕を巻き上げながら無事着陸完了。
そしてオレたちは火星の地へ踏み入れた。
「こ、ここが……四万年前の火星っ!?」
オレたちはキョロキョロ見渡して、地球と変わらない風景に驚いていくぞ。
青い空に小さな太陽が輝いている。そして見た事もない草木が周囲で生い茂っている。四枚の翼の鳥が群れをなして空を飛んでいる。
そしてショトケイキがトトトと駆け寄ってきた。
真剣な顔でガシッとオレの手を握ってきたぞ。
「お願いですナ! 希望の勇者さま! 火星へ侵略してきた火闘神マルス勢力を倒してくれナー!!」
話を聞くと、一か月前に地球からやってきたらしい火闘神マルスの勢力が侵略してきて、あちこちの国を支配してきているのだという。
つまり四万年前のヤツらがここを支配しようって時期か。
オレとヤマミは顔を見合わせた。
「つまり……」
「そう、ナノマギア・アブゾリュートに進化される前のっ!!」
「な、なんとかなるかも知んねぇぞ!!」
あのままだと火星と戦っているようなもんで詰んでいる感覚があった。
だが、この頃ならまだ火闘神マルスたちは『ナノマギア・オリジン』のままのはず……。
この内ならワクチンで駆除も可能!
「あのー名前は何ですナ?」
「ん? オレはナッセだぞ? で、こっちがヤm」
しかしショトケイキはギュッとオレの腕を引き寄せて、ほおにキスしてきた!
ポッとほおを赤らめてクネクネ体をくねらす。
「希望の勇者ナッセさま、ワタクシのツガイになるんですナ」
「「「「ええええええええええっっ!!?」」」」
オレたちは大きく口を開けてビックラこいたぞ!!
カイガンが相変わらず「ガフォオオッ」と吐血しながら吹っ飛ぶ。それはさておき!
「ちょっ待て待て待てっ!!」
「そんなの許さないから────っ!!!」
オレは慌てて離れ、取り乱したヤマミが左右に腕を広げて阻む。
するとショトケイキはブルブル震えだす。なんかカチッと噛んだ音を鳴らす。
「ぐはーッ!!!」
なんかわざとらしく吐血して、バタリと倒れちまったぞ……。え? なに?




