409話「九死に一生を得ろ!! 活路を切り開く光!」
火星の空を覆うほどの五つの漆黒染まる影が、こちら小さい浮遊艦を見下ろしている。
彼らは五領主で、威力値は五〇〇万をも越えると告げてきた。
しかも、続いて火闘神マルスの威力値は一〇〇〇万だと宣言されてしまう。
「な……なんだと…………!!?」
「そんなんハッタリなんでしょー!?」
「ウソつきーッ!! そんなのありえなーいッ!!」
愕然するフクダリウス。必死に叫ぶリョーコとエレナ。気持ちは分かる。
でも顔が青いぞ……。
そばにいるヤマミだって震えながら自失してる。
宇宙帝Zに至っては諦め切ったような顔で呆然したままだ。
《ハッタリだと思われるのも心外だが……。我らは何万年も前から火星で力を蓄えてきたのだからな……》
巨大な五領主のそれぞれの恐ろしい両目が険しく見据えてくる。
見上げるヤミザキとダウートは歯軋りして冷や汗を滲ませていた。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!
まるで光の届かない深海で押し潰されるかのような圧迫感。
「ヤマミッ!!」
「はっ!」
必死にオレは叫ぶ。茫然自失していたヤマミは竦んで我に返った。
「想像以上に敵はどうしようもねぇらしいな……。策あるか……?」
「あ……! ううん……」
ヤマミは上擦った声を出し、首を振る。
そりゃ出てこねぇよな。
つーか、四万年も経ってたら信じられねぇくらい強くなるよな。しくった。
「ちくしょう……! オレのせいだ…………!!」
「ナッセ……」
火星へ行って、残りのナノマギア・オリジンを全て無くす為に四首領を引っ張ってきた。
地底境域界でだって、最終的に四首領クラスのアーティファクトをも撃破できるほどに至った。
そうナノマギア・ワクチンなら、どんな敵だって倒せると思っていた。
それなのに………………!
「ナッセッ!! まさか諦める気ッ!!?」
なんとエレサが威圧を膨らまして六枚の大きな翼を背中から生やしていく。
途端に室内が震憾していく。
烈風がところせましと吹き荒れる。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ…………!!!
オレたちはビリビリ威圧が響いてきて「!!!」と仰け反る。
「最後まで足掻きなさいッ!! 夢を叶えるんでしょうッ!?」
「ゆ、夢……!!」
オレはドクンと異世界が脳裏に映る。
「そうだ……! ここで生き残らないと……異世界へも行けねぇんだ……!!」
エレサはヒカリバナの外へ飛び出して、キシキシキシ軋ませながら六枚の巨大な翼を蠢かす。
襲いかかってくる数万機ほどのタコ戦闘機に向かって、羽ばたいて無数の光弾をばら撒いた。
その光弾は加速して、屈折するレーザーのように飛び交って数万機ほどのタコ戦闘機を殲滅させていく。容赦のないレーザーの嵐が四方八方に軌跡を描いて爆撃を連鎖させていった。
ズアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!
火星の地平線にまで無数の爆発球が覆うほどに、壮絶な破壊で蹂躙していった。
「みんな!! 諦める事なかれ!! 諦めたが最期ッ!! その瞬間に未来への道は閉ざされるよッ!!」
「「「「!!!!!!!」」」」
オレたちは再び燃え上がる気力を蘇らした。
ヘインも「分が悪すぎる戦いだが、面白うなってきたわ!!」と飛び出て、ミニシュパ軍勢を展開して天地を震わせるほどの絨毯爆撃を繰り出した。
更に巨大なミニシュパが六体ほど聳えて、巨大な主砲をドカンドカン放つ。
ズドゥオオオオオオッ!!!!
大陸さえ砕くほどの破壊が火星を抉っていく。
ヤミザキもダウートも「行くぞォ!!!」と戦意を昂ぶらせて、一斉攻撃を繰り出す。
漆黒の偶像化が巨大な剣を振るい、万覇羅弐での如意金箍棒が猛威を振るう。
火星そのものにケンカを売るかのように、徹底的に最強の破壊力で蹂躙しまくっていったぞ。
「「「オオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!!!」」」
なんと四首領全員が全力で絶望へ立ち向かっているのだ。
オレはフルフルと込み上げる活気で笑んでしまう。
「そのまま火星を破壊しつくしそうだ!!」
「ええ! 最後まで徹底的に闘うしかない!!」
ヤマミも鋭い眼光を取り戻した。
《哀れな羽虫どもが……》
空を覆う五領主は目を細めて哀れんでくる。
向こうのオリンポス山(火星最大の山)から、巨大な火の鳥が羽ばたいてくるのが見える。
それは五領主の影すら覆うほどに広がっていって絶望的な威圧でのしかかってきた。
ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!
《では、これが耐えられるかな?》
火闘神マルスの声らしきが響いてくる。
超巨大な火の鳥が灼熱滾る火炎球を撃ってきた。火星の砂漠地帯がジュワーッと融解するほどの超高温だ。
エレサは苦い顔をしながら、六枚の巨大な翼を肥大化させて球状に包んで阻む。
ドアアアアアアアアアアンッ!!!!
尋常じゃない大爆発が広がって、巨大浮遊艦ヒカリバナが大きく震えた。
思わず目をつむって「ぐっ!」と呻く。ヤマミも「きゃああ!!!」とオレに寄りかかる。
バリアの残量がグーンと減少していく。
未だ振動が続き、搭乗している人たちは倒れこんだり壁にぶつかったりしていく。
ズズズズズズズ……!!
浮遊艦は傾き、煙幕がもうもうとする。
片目を瞑っていたヤミザキ、ダウートは「ぬう……!」と満身創痍で唸る。ゼェゼェ……!
「ぐ……がぁ…………!!」
直撃を被ったエレサが翼を破損しながら、煙幕を流しながら浮遊艦の上に着地して膝を下ろす。
血塗れで立ち上がる気力さえなさそうだ。
ボタボタタタッ……おびただしい鮮血が滴り落ちていく。
ナノマギア・ワクチンで反発させる事でダメージを激減させているはずなのに……。いや、むしろそうしないと消し飛んでたかもしれねぇ!
《ほう! 軽めに放ったとはいえ耐えるか……! 良かったぞ! まだまだ愉しませてくれ! ふははははははははっ!!!!》
巨大な火の鳥が高笑いしてる。
アイツが火闘神マルスの正体なのか……? 信じられねぇほど強すぎる……!
どうやったって、覆せねぇ……ッ!!
「くっ……!」
オレは断腸の思いで唇を噛み締める。
「ヤマミッ!! 時空間魔法で逃げられるか!?」
「ダメよ! つい前に試してたけど、火星のバリアで時空間が遮断されていて越えられない!」
「……なら、手は一つしかねぇ!」
「どんな……?」
切羽詰まったヤマミは固唾を呑む。
「ダウートさん、ヤミザキさん、このままじゃ全滅する! 地球へ退いて戦線を立て直す! こちらで三大奥義を絡めた主砲を撃って上空から脱出をはかる!! 合わせて三大奥義で頼むッ!!」
「あァ……分かったァ!」
「うむ、やるしかあるまい……」
同じく切羽詰まったダウートもヤミザキも頷くほど、事は深刻だ。
「では行くぞ!! 主砲生成を頼む!」
「分かったわ!」
ヤマミはキーボードを叩いて生成する位置を設定して、生成ボタンを押す。
浮遊艦の上で主砲の砲身がパキパキ生成されて、キュインキュインと光子が収束していく。
同時にオレとヤマミが両手を掲げて集中し、周囲の雫がポツポツと浮かび上がって、それらが光子と一緒に収束されていった。
これで威力を底上げして攻撃力は爆発的に跳ね上がる。
「上空のバリアに風穴を空けてやるぞッ!!!」
《ほう? この期に及んで逃げられるつもりらしい……》
巨大な火の鳥と五領主は嘲るように両目を笑みに歪ませた。くっくっく!
「見てろッ!!」
オレはカッと眼光を煌めかして、主砲のトリガーとなるレバーを握ったままスイッチを押す。
同時にダウートが時空停止の輪を広げ、ヤミザキが漆黒の竜巻球を主砲に被せた。
「行っけえええッ!!! ギャラクシィ・シャインスーパーノヴァッ!!!」
「ぬおおおッ!! 九極星・降魔穿嵐旋ッ!!!」
なんと主砲から放たれた極太光線に漆黒の螺旋が包んで、火星の上空を昇っていく。
そう、三大奥義が三つ同時に放たれたのだ。その威力たるや想像を絶するはず。
これなら上空の幾重に連ねたバリアも────……!
ピシリ……ッ!
時を停止したままで放った為か、こちらの動きまで硬直してしまう。
しかも光線もピタリと止まっていた。
それでもオレたちの思考だけが焦燥を帯びながら、脳内を駆け巡る。
……何が起きた!? こちらまで止まっちゃったぞ!?
つーか、これも火闘神マルスの仕業かぞっ!? くそ!
《ヤマミッ!?》
《え、ええ……? そっちは無事!?》
《ああ。テレパシーみてぇなもんで疎通できて良かったが、これどうなるんだ??》
《知らない!》
口さえ動かないので、テレパシーで話すしかねぇ。
オレたち妖精王は時空の次元を超えられるらしいから、他と違って思考ができて疎通できるらしいけどよ?
《ば、バグっちまったか!?》
ずっとこのまんまじゃ、オレたちどうしようもねぇ! 動けっ! 動けよっ!!
《やっと来てくれましたナ…………》
《ヤマm……》
《ナッセの声でもない……。あんた一体誰なのっ!?》
ハッとした。
《ついに希望の勇者さまが!》
その声ヤマミのじゃねぇ……!
別の何者かが呼びかけてきている??
そいつがこのタイミングで止めた!? 一体何の理由で? そしてその目的はっ!?




