408話「火星そのものが敵!? 圧倒的絶望!」
ヤマミは鋭く見極めて予測する頭脳明晰なタイプ。
かつて生徒会長かとイメージに抱くほどだった。
「ヤツは『ナノマギア・アブゾリュート』と言ってたわ。恐らく四万年で進化させてきた。さっきの細かいやつには効き目が薄かったでしょう?」
「あ、ああ……」
言われてみれば効きが薄かったなぞ。
「そういや火闘神マルスって、封印されていなくて火星へ行ってたから……?」
「そう! だから『ナノマギア・オリジン』とは別だと思う事ね! 痛い目にあうから!」
「……でも、ヤバイってのはそこじゃねぇんだろ?」
ヤマミは頷く。
半透明のキーボードをポチポチ叩く。すると複数のモニターが映る。
「あっ!」
こちらより数十キロ遠くでアーティファクト主砲がズズズッと生成されていく。
囲むかのように数え切れない程の主砲が並んできたぞ。
それらはボカンボカン轟音を鳴らしながら発砲してきて、光弾が大気を切り裂きながら浮遊艦へ目指す。
ドガガガドッドガガガッドガッドガガッドガガガガッドガガッ!!!
水護神ゴリアテも水のバリアで防ぐものの、破かれてバリアに被弾していく。
オレはエネルギー残量ゲージを見やる。徐々に減ってきてる。
しかも絶え間なく連射してきて、敵の大軍を巻き込む形で集中砲火だ。
「ぐおっ!」
グランドルフに被弾し、体半分が消し飛ぶが超再生する。
そして次の光弾を身に受けて大爆発。しかし無敵化の能力で無傷。だがグランドルフのみ。
フクダリウスやマジンガは必死にドカンボカンと迎撃している。
マイシですら苦い顔で炸裂剣を繰り出して相殺するのが精一杯だ。
弾数が尽きねぇ……! いつまで続くんだ!?
「そう、火星がナノマギア・アブゾリュートの塊なら……?」
「無尽蔵って事か!?」
「場所が悪いわ! 相手の土俵だから完全に不利よ!」
バリアに被弾していってゴリゴリ残量が削られていく。
なんて事だ……。敵地で戦うには分が悪すぎる…………。勝てねぇ…………。
「火星そのものを吹き飛ばさない限り、アドバンテージはずっとあっちか!」
「一旦退かないとッ!!」
ヤマミも切羽詰った顔で焦ってる。
今でも延々と爆撃を浴びていて防戦一方だ。オレは操縦して浮遊艦を上昇させるが、バリアが上空の何かに衝突した。
バチッ!!!
「なっ!?」
「あれ見てッ!! バリアが!?」
なんと火星を覆うように巨大な半透明バリアがあるではないか!
だからこちらのバリアと衝突して、抜けられなかった!
誰もが愕然とした顔で絶望色に覆われていく……。
《逃すと思うか……? 降伏してワクチンを手放せば、下僕にして助けてやろう》
スウッと巨大な影が浮かび上がって、笑うような両目で見下ろしてくる。
「俺が出る!! ヤミザキァ……協力しろァ!」
「うむ、承知した!」
なんと四首領二人が出陣するらしいが、なんとかなるのか!?
ヘインは依然余裕ぶってて「ワシは要らんのか?」と笑う。
ダウートは振り向かずに「要らんなァ……」と言い捨てた。
なおも絶え間のない光弾の弾幕が覆いかぶさってくるが、時空停止の輪がドォーンと広がっていってピタリと事象そのものが停止してしまう。
これもダウートが繰り出す三大奥義が一つ『超越到達の領域』だぞ。
「ヤミザキァ……行けッ!!」
ヤミザキは両手で上下に重ねるようにして、その間に黒い渦を生み出す。
おぞましく高速回転する邪悪な闇の螺旋。
「うむ! 私も行かせてもらう! 降魔穿嵐旋ッ!!!」
漆黒の竜巻球が爆ぜるように一気に膨れ上がり、光弾の弾幕を一気に消し飛ばし、岩盤もろとも大地と山脈を粉々に吹き飛ばし、戦場ごと蹂躙。
なんと数キロ先のアーティファクト主砲まで粉々に吹き飛んだぞ。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!!
オレも誰もがも唖然とするほどの破壊力だぞ。
ヤミザキの放つ三大奥義『無限なる回転』はオレたちのツープラトンとはレベルが違う。
味方としては、この上になく頼もしいぞ。
「ふう、何とかなったぞ……」
「見て!」
ヤマミは「険しい顔でモニターを指差す。上空のバリアにも破損があったが、更に上にも何十枚もの層があって、突破するには絶望的だ。
しかも修復されて塞がれていく。
「……火星と戦っているようなものと変わりねぇか!」
「うん!」
もはや火星から逃げるのは不可能……。かといってこのままじゃ全滅だ。
《これが地球の四首領の力か!! 面白い!! つまらん遊びにはならなさそうだ……》
「あ、遊び!?」
《おや? そちらは死に物狂いだったか? こちらは片手間の遊びでしかないというのにな。その気になれば一撃できさまらを粉砕もできるのだからな。それではつまらん》
目を細める巨大な影。嘲ってる傲慢な態度が気に食わねぇ。
しかし、オレも思わず「ぐぅ……」と唸るしかない。
「やって見せろァ……!」
《ダウートだったか? そうは言うなよ。じっくり遊びたい気分なんだ。どうせワンサイドゲームなのだから粋がる必要はないぞ》
「あァ……!?」
《フッ》
ダウートは歯軋りし、周囲の大気が軋むほどに凄まじい威圧が膨れ上がっていった。
火星をも震わせるほどだが、火闘神マルスは平然と見下ろしている様子。
まるでネコにじゃらしをブンブン振ってるような感覚でしかないのか、あいつら……。
《四万年も退屈だったぞ……。最初こそ侵略してくる連中はいたが完封してしまった。おかげで火星には触れまいと、太陽系列の惑星連合はダンマリになってたからな》
「くっ!」
《のこのこやってきた馬鹿なきさまらのおかげで愉しく遊べるんだ。感謝の意を示して一撃で粉砕する無慈悲な事はしないでおこう》
ふははははははははははははははははははははははははっ!!!!!
火闘神マルスの高笑いが響き、腸が煮えくり返りそうだ。
「くそ……!! ヤツの掌の上かよ……! ヤマミ!!」
しかし苦虫を噛み潰す顔でヤマミは苦慮している。
彼女もなにか方法がないかと考えあぐねているようだ。歯軋りして眉間にシワを寄せる。
ズズズズズズズズズズ……!!!
追い打ちをかけるかのように、重々しく響き渡ってくる威圧がにじり寄ってくる。
オレたちは背筋に凍るような悪寒が走っていく。ぞあッ!!
なんと、こちら超巨大浮遊艦ヒカリバナをすら覆い尽くさんとするほどの、空に広がる五つの影。
ドス黒いフォースがジュクジュク蠢いてて寒気すら覚える。
「あ、あれは……ッ!?」
「五領主ですッ!! でも、ここまで……そんなに強くは…………!!?」
空を覆い尽くすほどの五つの影を象る漆黒のフォース。ゾワゾワ……!!
《ははははは……!! ようこそいらっしゃった!》
《我らこそが五領主である……!》
《火闘神マルスさまに従う最高権力者!!》
ヘインは「いかんッ!! 想像以上じゃ!!」と焦りを滲ませて叫ぶ。
唇を噛んで冷や汗いっぱい滲むエレサ。
浮遊艦の外にいるヤミザキ、ダウートもたしろいでしまってる。少し片足が後すざるほどに……。
《“火女王”アントエー》
《“火暴王”ベアービィ》
《“火毒王”コブラッシ》
《“火獣王”ディアディ》
《“火空王”イーグルイ》
それぞれ五つの形が仰々しい化け物のシルエットへと肥大化していく。
ドス黒くて全貌が分からないが、アントエーは女王アリ、ベアービィはクマ、コブラッシはコブラ、ディアディはシカ、イーグルイはタカだと見受けられる。
《現状、我々の威力値はもはや五〇〇万をも越える……!!》
四首領ヤミザキ、ダウート、エレサ、ヘインは見開いて絶句する。
オレもヤマミも言葉を失う。
いや、誰もが愕然して「最初っから詰んでいた」と絶望に押し潰されそうになっていた。
あの四首領ですら一〇〇万クラスなのに、敵はその何倍もあるのか……。
それを嘲笑う五領主は追い打ちの言葉を放つ。
《ついでにいい事を教えてやろう! 火闘神マルスの威力値はもはや一〇〇〇万にも達しているのだからな!!》
頭が真っ白になっていくしかない。
インフレがひどいw




