405話「四首領共同戦線! 最強の地球軍勢揃い!!」
地球へ火星が近づいている理由は知らないが、プレートスライドで徐々に迫って来るのには危機感を覚える。
ともあれ、超大型浮遊艦ヒカリバナの基地でオレたちは一泊した。
そんでみんなで打ち合わせしてるぞ。
「オレのワクチンはもう全員に行き渡ってるから、心配はいらねぇぞ」
四首領のヤミザキ、ヘイン、エレサ、ダウートも勢ぞろい。
その直属の部下も揃っているぞ。かなーり層が厚い。
総統ヤミザキには王子たち十一護衛隊が、皇帝ヘインには七皇刃が、英雄ダウートには八武衆が、教皇エレサには初の新キャラとして六聖騎軍がついてるぞ。
「ん? 十一護衛隊……?」
オレは聞き慣れない部隊名に首を傾げた。
ヤマミへ振り返ると首を振ってくる。知らない、と。
すると第一王子コクアが馴れ馴れしく手を振ってやってきたぞ。
「新しく付けた部隊名ですよ。王子で構成されているとはいえ隊長のダクライさんがいるので、このような名前に落ち着きました」
「ってか二代総統ダグナさんはいないのか……??」
隊長ダクライ、コクア、ライク、カゲロ、ウユニーギ五戦隊、マミエと並んでて、ブラクロも入るんだろうがスミレに引っ付いている。
当のスミレは「そっち行けよおおおお……」と疲れた顔で嘆いている。
しかしブラクロはジト目で離れてくれない。
「ああ、ダグナ総統様は日本で夕夏家を纏めているんで不在です」
「誰か指揮取れるトップいないと困るもんな。会社とか運営してるのあるだろうし」
「ですよ」
「ダクライは衰えているみたいだけど大丈夫なの?」
「それでも僕たちより強いんですよ……。」
ヤマミの疑問にコクアは後頭部をかきながら困った顔をした。
するとダクライもやってきて不敵に笑んでみせる。
「なになにまだ若いものには負けはせんぞ。ナッセ殿にもヤマミ殿にもな」
四首領と比べればだいぶ見劣りすると思うけど、それでもオレたちが束になっても勝てねぇくらい強いんだよな。
少なくとも威力値七〇万以上は余裕か。
アクト、よく勝てたな。
「無駄口はそれくらいにしろァ……!」
ダウートが如意金箍棒を立てて、床を衝いた。ズン!
威圧感を漲らせる大男……。
「火星ァ……攻める手前、教えてやる! この俺も太陽系惑星ァ回ってきたが火星だけには降りなかったァ……!」
「ダウートさんでさえも……!?」
「ナノマギア・オリジンがウイルスのように蔓延している惑星に侵入ァ……自殺行為だからなァ」
「火闘神マルスの……!?」
「あァ……!」
ダウートは仏頂面ながらも頷く。
オレはさっきまで地底境域界、ネアンデル人、ナノマギア・オリジンの存在とこれまで起きた事を説明してきた。
だがダウートだけはナノマギア・オリジンの事を知っていた。
「だが、お前のおかげだ! ワクチンを進化させて、ようやく火星へ踏み入れる事ができるからなァ……!」
宇宙帝Zからもらったワクチンとオレのナノマギア・オリジンが上手い具合に混ざって進化したので、安全性はより高まった。
知らず知らず侵入してゾンビになったら世話ねーもんな。
「っていうか、ワタシのワクチンだけでは不可能みたいに言わねーで欲しいですっ!」
宇宙帝Zことファルスタ姫は納得がいかず喚いているようだぞ。
「フン! 火星姫か……。その様子だと反乱軍は全滅したと見える。帰る場所がないと思え」
「うっ……!」
「火闘神マルスは人間牧場を各地に設置していた。生きた人間は確保したかったんだろう。奴らも自分が亡霊だと自覚していたようだからなァ……」
「人間牧場と侮辱しないでくれーですっ!」
「宇闘神スペースみたいな、手足となって他の惑星へスパイを送り出す為に生きた人間が必要だった。ゾンビでは受信できなければ死骸も同然だからなァ……。だが反乱軍となれば話は別だ。残らずゾンビに変えられているだろうよ」
宇宙帝Zは愕然と膝を落とす。ガクッ!
親同然に育てられてきた者も、親友だった人も……、ワクチンを作ってるとバレて自分を逃す為に命を懸けた。
命からがら火星から脱走できたものの、残った人がどうなってるかは想像したくない。
「火闘神マルスは容赦のない独裁者と聞く。情けをかけてもらえるなんて期待すんなァ……」
「そんな言い方しなくていいんじゃねぇか?」
「一番よく分かってるのは火星姫ファルスタだァ……」
気の毒だと思ってオレが咎めると、ダウートは憮然と言ってのけた。
確かに火星にいたファルスタ姫なら事情は一番分かってる。
どれだけ独裁体制が完璧か、そして人間牧場を設置して思い通りに育成してきたか、そして反乱する人をどう扱うか、彼女が一番よく知ってる。
だからこそである。立ち上がってくる。そしてオレへキッと顔を向けた。
「頼むです!! 力を貸してくれですっ!!」
「そのつもりだったが……」
「あんな火星はもうたくさんですっ!! 家畜同然に飼われ、恐怖に怯えて暮らすような国なんてなくなって欲しいですっ!! そして火闘神マルスという“亡霊”を終わらせたいですーっ!!!」
涙ぐむファルスタ姫の手を取る。
オレにとってはポッと出のやかましいキャラにしか見えないかもしれない。
だけど、彼女にも家族や仲間がいる。
例え独裁体制の敷かれた火星でも故郷には変わらないのだ。それに対して憂うのは当たり前だろう。
それに火星姫ファルスタを逃そうと反乱軍は命を懸けたはずだ。
彼らとの事情は知らないが、困っている人は放っておけない。
「分かった!! あんたたちネアンデル人の誇りの為に火星を制圧するぞ!!」
「ナッセ……」
「オレたちで“亡霊”の歴史を永遠に終わらせよう!」
ファルスタ姫は儚げな顔で涙を流していく。両頬を伝ってポタリと顎から滴り落ちる。
泣きじゃくって肩を震わせた。
まだ年頃の少女なのだ。気丈に振舞っていても強がってるだけで……。
「…………うん! お願い!」
「ああ、任せろ!」
そんなナッセに四首領はしんみりと耽る。
今は小さい英雄だけど、これからもっともっと成長して大きな存在になっていくだろうと……。
「フッ! アクトァ……いい親友持ったなァ!」
ダウートも快く笑む。
その翌日に、オレたちは超大型浮遊艦ヒカリバナへ搭乗していった。
一方で火星の王宮にて、高台の王座に佇む一人の影が険しい目をしていた。
その下で五つの影が佇む。ズズズ……!
《これより一ヶ月後に我らが火星は地球と融合を果たす》
《《《なんとっ!》》》
《プレートスライドで地球への距離を縮め、火星に充満させたナノマギア・アブソリュートによって融合を行う。衝突による爆発はなく、静かに噛み合うように一体化していくのだ……》
火闘神マルスはそう告げた。
《その時こそ、地球の勢力は我が軍門に下る……! 四首領! 英雄のナッセ! いずれも太陽系連合を支配するに重要なパーツとなろう!》
五つの影……、五領主は感嘆を漏らす。
地球と火星の惑星融合、それは前代未聞の試み。それが行われれば巨大な勢力を擁する惑星国家となる。
そしてナノマギア・アブソリュートの魔の手が太陽系に及ぶ。
《我らはスーパーアース大惑星国家を形成し、そしてそれを起点に太陽系連合を支配し、永遠の楽園を宇宙中に広げていくのだッ!!》
火闘神マルスは握った拳を突きつけて、壮大な野望を吠えた。




