404話「火星へ侵攻準備!! 学院に休学申請すっぞ」
二〇一〇年六月十七日……。
オレたちは久しぶりに地上へ戻れたぞ!
広々とした夜空は久しぶりだ! 妙に火星がデカく見えるが……。
「うわぁ!! これが地上なのか!?」
「真っ暗な天井にゃあ!?」
「見てよ! キラキラな国と空ですっごいよー!!」
「にゃああああん!!」
マシュとニーアンが目をキラキラさせてはっちゃけてる。
初めて見る地上だからなぁ。
今は夜だけど朝になったら、ビックリしそう。
「色々行ってみたい!!」
……との事なのでシュージンが保護者がわりとしてついていく事にした。
共通化してるのでオレの現代知識も地理も伝わってるので心配はいらないか。
それから集合する場所と出発時間の連絡も来た。
「一旦、大阪へ帰りましょう」
「あ、ああ……。学院長く休んでしまったぞ……」
「火星へ攻め込むから、その説明!」
東京でみんな解散し、オレたちはホテルで一泊した。
その翌日に新幹線で大阪へ帰っていって、懐かしいアニマンガー学院へ着いた。
授業中に申し訳ないが、校長室で先生たちを集めて説明した。
まさかの事態に絶句してたようだが、緊急事態なので続けて休学申請を出した。
「……さすがは世界大戦の功労者よな。今度は火星の独裁体制を切り崩そうとしているとはね。ずいぶん大物になってきたのう」
「地球の危機でもあるんで、放ったまま異世界へ行くなんて寝覚めが悪いですから」
感激しているヨネ校長に悪いけど、火星の危機が地球に及ばないとも限らない。
なんせさっきまで地底境域界でゴタゴタ起きてたからな。これが地上に漏れ出てたらヤバかった案件がいくつもあった。
「しかし『ナノマギア・オリジン』は厄介だのう……。感染するとゾンビになって、支配する者も亡霊になってしまうという欠陥システムだとは」
険しい顔を見せるヨネ校長の言葉に、オレは相槌を打つ。
「幸い、地底境域界で全部解決したから地上に危険は及ばないでしょうけど、今度は火星の『ナノマギア・オリジン』を駆除しないといけないわ」
「大変だのう……。休学も仕方ないか」
「わりぃ……出席日数減るから、成績にケチが付くかもしれんけど」
しかしヨネ校長は首を振る。
「なーに言っとる!? 世界大戦でぶっちぎりの成績付けとるからな。出席日数なぞ免除じゃ。免除。今回も火星の独裁を解決したら成績はカンストを何回分超えるか想像だにできんわい」
「えぇ……」
「そうそう世界の危機なんて来ないからね。特例でそういう処置になってるんじゃない」
「それにの、お主ならきっとやり遂げてくれると希望が持てるんじゃ」
目を輝かせるようにヨネ校長は晴れ晴れの笑顔を見せた。
なんだか自分が孫〇空みたいな気分だ。オッス、オラはナッセだぞ!
「そういうワケじゃから、安心して行くがいい!」
「済まん。そしてありがとう」
「ご好意ありがたく受け取ります」
オレとヤマミは頭を下げて、この場を後にした。
スッキリしているヨネ校長とは裏腹に、同席していた先生の方々は戸惑ったままだ。
「……思ったんですが、彼らはここで勉学する必要あるんでしょうかね?」
「創作士としても、もう立派な一人前ですし」
「っていうか、強さでも世界クラスだもんね」
「もはや形骸化しているとしか……」
しかしヨネ校長は微笑む。
「なーに言っとるんじゃ! 卒業までの青春を経験せばのう! なにも勉学だけとは限らん」
背もたれに身を預けて満足そうだ。
そう、本当なら飛び級で卒業もできる。恐らくナッセもヤマミも知っている。
けれどそれをせず、みんな一緒の学生生活をしているのだ。
授業中のみんなを置き去りにするかのように、オレとヤマミは学院を去っていった。
「さて……これから向かうは」
「うん。ヤミザキのところね」
山奥に隠すように佇む『超大型浮遊艦ヒカリバナ』へ向かっていた。
この頃はもう夕日……。
長ーい階段を登っていくと、広々とした基地にでっかいヒトデ型の浮遊艦が点々の灯りを断続的に点滅させているのが見えた。
地平線付近の橙色グラデーションが薄くなって、夜に染まっていくので雰囲気が物々しい。
「うひゃあ……改めて思うとでっけぇ!!」
「そうね。世界大戦では敵だったけど……」
「今度はこっちの味方になるんだもんな。頼もしいぞ」
かつてはアメリカで敵対していた、あの超大型浮遊艦……。
あの威圧感はヤバかったし、乗ってるのが四首領ヤミザキなのだから身震いしてたくらいだ。
それが、火星へ攻め込む為に搭乗するんだからワクワクだぞ。
「あー来た来たー!!」
「待ってたッ!」
一足先に着いていたリョーコとエレナ。
集合場所をここに指定していたとはいえ、早いなと思う。
フクダリウスもみんなも揃っているぞ。
「……学校へ休学申請はしたんか?」
「電話でな」
フクダリウスがそう答えてきて、唖然したぞ。
同様にマイシ、エレナ、コハク、ミキオ、サラク、カグヒメル、エガラ、ナガレなどの生徒たちも休学許可をもらっていた。
そうか。電話で申請して、ここへ直行してたのか……。考えてなかったぞ。
わざわざ大阪まで行って申請して、ここへ遠回りしてたのがアホらしくなってきた。
「なんだかなぁ……」
「いいじゃないの。久々に学院を見れたわけだし」
「そ、そうだな」
一年生のミキオ、サラク、そしてエガラもいる。
「一年生がここに来ていいんか??」
「おー! パイセン! まぁサボれるからな」
「俺は違うからね! ナッセ先輩が世界救うイベント見てみたいんだから」
サラクはサボリ目的か……。
最初は突っかかっていたミキオも、今やオレに憧れの目をチラッと向けていた。
嫉妬してかサラクは皮肉ったように笑みながら、ミキオをグイと引き寄せた。
「浮気したら許さねーからな」
「し、しんないよ!?」
ワタワタするミキオに、サラクは軽めのチョークスリーパーをかけている。
小動物系エガラはおどおどしている。
「怖いけど私は、この出来事をメモりたいんです!」
「ああ、覚悟はいるぞ」
「はい!」
エガラの純真な瞳には覚悟が窺えた。
「……必ず勝つ保証もないし、火星ではアウェーとなるわ。四首領いても全滅するかもしれない。それでも?」
「そ……それは百も承知です……。でも、怖くて引っ込んでいたら後悔しそうなので」
プルプル小動物のように震えるも、気丈に返してくる。
ヤマミはハァとため息をつく。どうなっても知らないわよと細目で見やる。
「まぁ、オレが守るからさ」
「安請け合いしないで」
ヤマミにペシンと頭上をチョップされる。相変わらず厳しいなぁ。
あるいは浮気防止?
集まってきた同級生と一年生で盛り上がっていると、空はいつの間にか星々煌く夜空に染まっていた。
晩飯はみんなでバーベキューだぞ。
肉汁伝う肉を齧り、その美味しさに感激する。
「メンテナンスは前々からしてたらしいから、今日で終わりみたい」
「そうか! 明日には発てそうだな!」
「ええ」
超大型浮遊艦ヒカリバナには不備は見つからない。万全な状態で火星へいつでも行ける状態だ。
「ウム、我々も覚悟はできているからな」
「フン……」
「モエキもジャオウと一緒なら地獄でもなんでも行けますわよ」
マジンガたちも集合してたぞ。ジャオウとモエキのカップルは相変わらず。
そんなカップルにカイガンは羨ましくて堪らないようだ。
「うおおおおん!! 童貞のまま終わりたくねぇよおお!!」
「貴様は帰れ! 足手まといだ」
「ジャオウてめーリア充になったからって調子に乗んなよー! いつか美女とリア充になって見返してやるー!!」
「見返せるつもりでいるのか……? 驚いたぞ」
「ジャオオオオオ!!! てめーシバいたろかあああっ!!」
ジャオウとカイガン、相変わらず犬猿の仲だなぁ。
それからヤンデレ満々のチカがナッツを束縛しているようだが見ないフリした。
「あっ! 助けてくれぞおおおお!!!」
「うふふ逃がさないからね!」
そっぽを向いたオレにナッツは助けを求めるが、チカは妖しい笑みのままギュッと腕を縛るかのようにくっついている。
激重な愛情でナッツも参ってるけど、飛び火しないで欲しい。
チカだって結構な美人になってるからな。
「あ! そういえばマシュとニーアンは来るのー!?」
リョーコが聞いてくる。すると通信がかかってきた。
《こちらシュージン。マシュとニーアンは地底境域界へ帰る事になったよ。マシュの母がカンカンみたいでね。迎えに来たのがシャーブルで強制的に連行していったよ。マシュ本人は嫌がってたけどね。せっかく青空に感動してたところだし》
「それはまぁ……」
《というわけで、僕だけそこへ向かう事にするよ。明日に着くかもね》
「オッケー!」
夜空を見上げると、一層大きく見える火星が不気味に見えた。
準備万端。ワクチンも健在。もはや万全。……なのに不安がするのはなぜだろう?




